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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした  作者: 灯台


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2505/2543

商会と専用ブラシ⑪



 コーネリアの前には現在、複数の手紙がある。本音を言うのであれば見たくない……なにも見なかったことにして、化粧も落としてベッドに行って泥のように眠りたい。

 しかし、残念ながら避けては通れないものであり、いかに恐ろしかろうと……いかに胃が痛みという形で拒否を訴えていようと、読まないわけにはいかないのだ。

 だがその前にひとつ、口にしなければならないことがある。コーネリアは傍に控えるアンネの方を向いて、静かに告げた。


「……お腹痛いので、今日の予定は全部キャンセルで」

「畏まりました。どちらにせよ、今日は商会運営関連の勉強がメインでしたし、手紙の内容次第では旦那様や奥様と話し合いの場を設ける必要があるでしょうから……」


 幸いにも今日は外出する予定はなく、商会運営の勉強を行う予定だったためスケジュールの調整はすぐに終わり、すぐに意識は再び手紙に戻った。

 もしかしたら、かつて人の身で魔王に挑んだ初代勇者はこんな気持ちだったのかもしれないと、そんなことを考えながらコーネリアは手紙を手に取った。


「……ま、まずは、用件が確定している。セーディッチ魔法具商会のものから……」


 ただやはり精神的な猶予が欲しいのか、最初は内容が予想できるセーディッチ魔法具商会からの手紙を読むことにした。

 内容はやはりコーネリアの予想した通り、明後日に訪れることに関する事前の挨拶と……是非、交渉の場にコーネリアも同席して欲しいというものだった。

 これもまぁ、快人の影響により特別顧問4人と知り合うことになったため、予想できる範囲ではある。


「セーディッチ魔法具商会に関しては、元々私も同席する予定でしたし、内容も問題ありませんね。こちらこそよろしくお願いしますと転移便で返事をしておきましょう。さて……次は……」

「やはり、ミヤマカイト様の手紙ですかね?」

「そう、ですね。他の手紙の内容に関連すると思いますし……」


 恐る恐るという言葉が似合う動きでコーネリアは快人の手紙を手に取り、一度祈るように目を閉じてから内容を確認する。

 内容は予想通りというべきか、専用ブラシが届いたというものであり使用感などを非常に気に入ったというものではあった。

 だが、その先は大問題だった。


「……専用の道具で魔力波長を変換? 魔力浸透率の均一化に大きな効果あり? 変換せずとも自身が使う分には問題ない? ……あ、ああ、つまり、アレですか? 私やヴィクター商会のものも知りえないことではありましたが、あのブラシは竜種や獣人型魔族の方々の美容に対して、毛を整えたりという以上に大きな効果を発揮する品で……そ、それを含め……カイト様は竜王配下の方々などにお勧めを……ちょ、朝食前でよかった……吐きそう」

「……コーネリアお嬢様、これは緊急事態なのでは? 明らかに我々の想定とは違う事態になりそうです」

「え、ええ……確かに、我々はカイト様がブラシを気に入った結果、竜王様の陣営からも注文が来る可能性は考えていました。でもそれは、『ブラッシングのために高額な専用ブラシを買う方』という想定でした」


 そう、確かに茜が予想した通りにコーネリアを含めたシャロン商会の面々は、快人が専用ブラシを気に入った場合の宣伝効果によって竜王配下にも多くの需要が生まれることは想定していた。

 しかし、そうは言っても専用ブラシは特注の高級品であり、確かにいいものとはいえ市販のブラシとそこまで大きくブラッシング効果に差があるわけではない。

 拘りの強い者や金銭的な余裕がある者は買うだろうが、そこまで大規模な発注にはならない筈だった。だが、その前提は完全に覆った。


 魔力浸透率の均一化が竜種や獣人型魔族にとって美容の面で非常に大きいという話は、コーネリアも知識としては知っており、さらにそれはかなり高度な技術であるとも聞き及んでいた。

 そんな高等技術による美容が比較的簡単に行えるようになるブラシ……多少高くとも手に入れたいと思う者は多いと容易に予想が出来た。


「こ、これは、とんでもない規模の発注が来る可能性も……あ、あのブラシは特注の品ですし、ひとつ作成するのにもそれなりの時間が……さ、最低でも事前に想定していた3倍……いや、5倍ぐらいに制作工房の規模を拡大しなければ、追いつかなくなりますよ!?」

「……旦那様と奥様に、至急お集まりいただくようにお伝えしてまいります」

「お、お願いします。その間に、私は他の手紙を確認します」


 血の気が引いて行くような感覚を味わいつつも、心のどこかで冷静にマグナウェル、ニーズベルト、エインガナからの手紙はこれに関するものだろうと察することが出来た。

 ただその上で……残る、アメル、バッカス、グラトニーの手紙はいったいなんなのかと、疑問に感じていたコーネリアだったが……快人の手紙の最後に書かれていた一文を見て、顔は青を通り越して真っ白になった。


『せっかくですし、竜王配下以外でも知り合いで興味を持つ人が居れば専用ブラシを勧めておきますね』


 コーネリアは、なるほど……死刑を宣告された囚人はこのような気分なのかと、そんなことを考えながらぐったりと椅子に寄り掛かった。




シリアス先輩「初手からもう致命傷なんだけど、大丈夫? これまだ、手紙では読み取れてないけど、セーディッチ魔法具教会から魔法具の革命とかの話も来るんだよ?」

???「これが、カタストロフ胃ですか……」

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― 新着の感想 ―
さすが善意100%の主人公だなー(棒)
これで軽いジャブでまだまだ連撃が・・ 気絶の仕方をリリアさんに教えてもらおう(遠い目
もうから虐待だろ
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