商会と専用ブラシ⑤
専用ブラシが届いてから数日後、俺は魔界のフレアさんの家を訪れ約束通り使用感などを説明していた。なお先にマグナウェルさんの元も訪れており、そちらにもお勧めはしておいた。
「……なるほど、戦友の評価は良好なのだな」
「ええ、俺はカナーリスさんに補助道具を作ってもらいましたけど、自分で自分に使う場合は魔力を返還する必要は無いので、そのままブラシに魔力を注ぐことでネピュラ曰く魔力を浸透させれるらしいです」
「ふむ……魔力の浸透か、なるほど確かにそういった美容法は存在する。そういう面で言えば、専用ブラシは最適な品と言えるかもしれん」
「そうなんですか?」
俺の場合はベルやリンに使うのに、それぞれの魔力に変換する必要があったが、自分で自分のブラッシングなどに使う分には変換の必要は無い。
ネピュラに確認してみたところ、俺の特殊な魔力ほどではないが毛艶や鱗の艶のUPに効果的であるとのことだった。
「うむ。我よりはエインガナなどの方が詳しいが、魔力を均等浸透させることによる美容法というのは存在する。我もそうだが、竜種や魔物と言った存在は血液なども含めて体の各部に魔力が多く流れている。各部にどれだけの魔力が流れているかを魔力の浸透率と呼ぶのだが、それを可能な限り均一にすることが鱗や毛を美しくするコツと言われている」
「なるほど、エインガナさんとかがそれを実践してるわけですね」
「ああ、だが言葉で語るのは容易いが、これが中々に難しいのだ。魔力というのは体内で生成されるものであり、必然的に体外……鱗や毛先と言った、体の内部から遠い場所ほど魔力の浸透率は低くなる。これは、身体強化や障壁で魔力を纏うのとは全く別のものでな。表現するのなら、血液の巡りを整えるのに近い」
ネピュラが教えてくれた専用ブラシへの追加の一工夫は、竜種や魔物にとっての美容法の一種として元々存在するみたいなのだが、フレアさんが難しいと語るぐらいだから本当にできる人は限られるのかもしれない。
「ここで重要なのは均一という部分でな。毛先や鱗にしっかりを魔力が浸透するようにしようとすると、体内や他の部分にはむしろ過剰な魔力を注いでしまう。例えるなら、遠い場所に魔力を届かせようとして強く魔力を注ぎすぎてしまうようなものだ。故に、魔力浸透率を均一にするにはかなり繊細な魔力操作が必要となるわけだ」
「……あっ、なるほど、つまり専用ブラシを使って外側から魔力を浸透させられるなら、繊細な魔力操作をしなくても魔力の浸透率を均一に調整しやすいってことですね」
「その通りだ。実際鱗の美しさなどを気にする竜種というのは多い……いや、我は正直あまり気にならないのだが、エインガナやその配下の拘りようは相当だし、我の部下でも気にする者は多い。竜種にとっての鱗もそうだが、獣人型魔族にとっての毛艶もそう……そういう意味では、その専用ブラシはかなり需要はあるやもしれんな」
「なるほど、人気が出るならコーネリアさんも喜ぶでしょうし、興味がありそうな人が居たら教えてあげてください」
「ああ、心得た。任せておけ……エインガナにも話しておこう」
美容関連が気になるのは人間も魔族も一緒ということだろう。実際そういった分野の需要は凄いものがあるし、いい感じに人気が出てくれればいいものだ。
茜さんの話では、コーネリアさん関連の方はむしろ人気でたほうがいいだろうという話なので、欲しがる人が多そうな竜王配下には広まってくれるといいなぁとは思う。
獣人型魔族にも適応されるなら、アニマとかキャラウェイも欲しがるかもしれないし話をしてみることにしよう。アメルさんとかはどうだろ? 毛用のブラシや角用のブラシが作れるなら、翼用のブラシも作れそうな気はする。有翼族は閉鎖的な種族だが、翼の手入れにはかなり拘りがあるみたいだったし、もしかすると有翼族が外との交流を増やす切っ掛けにもなるかもしれない。
アメルさんはもっと有翼族が外と関わって欲しいと言ってたし、勧めてみるのもいいかもしれない。コーネリアさんを紹介したりするのもありか? いや、有翼族はいろいろ制限が厳しいみたいなので、アメルさんにしっかり相談してからにはなるが……有りなんじゃないかな? いや、まずはコーネリアさんに話して翼用のブラシが作れるかどうかをヴィクター商会に確認してもらうのが先かな?
胃痛の悪魔「……死ぬがよい!(胃が)」
シリアス先輩「こ、こいつ、善意で被害規模を広げる天才か……そして、コーネリアが一撃が重いタイプだったと再認識した」
???「さて、ワイン飲みますかね」




