商会と専用ブラシ①
魔界にあるクロの居城の一室を訪れた俺を、薄い緑色のサラサラマッシュヘアの爽やか高身長の男性……トロワさんが出迎えてくれた。
「やあ、カイト。よく来たね」
「こんにちは、トロワさん。今日は急にすみません」
「気にしないで、訪ねてきてくれて嬉しいよ。大したものはない部屋だけど、中にどうぞ」
「失礼します」
穏やかに微笑むトロワさんは、なんというか凄いイケメンという雰囲気でいつ見てもカッコいい。スーツ風の服をビシッと着こなしていて、手足も長く高身長で優し気な顔立ち……オズマさんがハードボイルドでカッコいい大人の男性とすれば、トロワさんは明るく爽やかなイケメンお兄さんという感じだ。
トロワさんはハイトレントという種族で、性質的には精霊とかに近いみたいなのだが、見た目に関しては普通の人間と変わらない。ただ、前に手を木に変えたりして見せてくれたので、いまの姿はいわゆる人化の魔法に近い感じなのかもしれない。
「……それで、なにか相談があるんだっけ?」
「相談というか、ちょっと参考まで聞いてみたいことがありまして……えっと、俺の知り合いが定食屋をやっていまして、水蓮って店ですけどご存じですか?」
トロワさんが用意してくれた席に座り、今回訪ねてきた用件を伝える。というのも、以前香織さんとパンの仕入れ云々の話になって、ちょうどクロムレイクに買い物に来る用事があったので、紹介するしないはともかくとして友好都市内にそういった店があるかどうかは忘れないうちに聞いておこうと思って、トロワさんの元を訪ねてきた。
「ああ、友好都市にある異世界料理の店だね」
「さすが、よく知ってますね」
「ははは、いや、人界の主要都市にある店舗はだいたい頭に入ってるから、名前だけは知ってる程度だけどね」
サラッと人界の殆どの店を記憶しているみたいなことを言ってるが……人界どころか魔界の店もほぼ全部記憶していても不思議ではないのがトロワさんである。
あと本人は名前だけは知ってる程度とか言ってるけど、たぶん人気メニューとかも把握してる気がする。
「えっと、それでこの前に会った時に、いずれパンの定食も作ろうと考えているみたいな話になったんですよ。まだ全然確定とかじゃないんですけど、そうなった場合はパンは仕入れようって考えてるらしいんですが……トロワさんの知ってる店で良さそうなところってありますか?」
「いくつかあるよ。友好都市ヒカリはそれなりにパン屋の質はいいからね」
「そうなんですか?」
「カイトは天光礼拝は知ってるよね? 天光礼拝の時に敬虔な信者とかは、新年の時みたいに白パンを食べるんだよ。白はシャローヴァナル様を象徴する神聖な色って考えが一般的だしね。だから、中央大聖堂がある友好都市では、結構需要があるんだよ。ただ白パンは綺麗に焼くには結構技術がいるから、友好都市に店を構えているパン屋は腕のいい職人が多いね」
サラサラと分かりやすく説明してくれるトロワさんの言葉に、感心しつつ頷く。言われてみれば確かに、新年には人界では白パンを食べる風習があるし、天光礼拝とかで食べられていても不思議ではない。
そんなことを考えていると、トロワさんはメモを取り出してサラサラと書き込んでから渡してくれた。見てみると、パン屋らしき店の名前がいくつか並んでいた。
「水蓮に比較的近くて、パンの発注を受け付けているのはその辺りだね。質のいいパンを取り扱う店ばかりだから、機会があれば普通に買い物に行くのもいいかもね」
「ありがとうございます。参考にさせてもらいますね」
「うん。でもまぁ、単純なパンの質で言えば、カイトのところのニフティで扱ってるパンが圧倒的だと思うんだけど……アレはやっぱり、高級店用の品だから定食屋で取り扱うのは難しいのかな?」
「あ~そっか、そういえばカフェで出してるパンはカナーリスさんが……」
言われてみれば、確かにカナーリスさんに相談してみるのも……いや、カナーリスさんに相談すると香織さんの店様に専用でパンを作ろうとか言いだしそうな気がする。
まだ香織さんもパンのメニューに関しては、試行錯誤しつつメニューに追加しようかな~って考えてる段階だし、そういうのが本格的に決まってティルさんとかを紹介して欲しいって頼まれてからにしよう。
「そういえばニフティといえば、前にノーヴェたちがお世話になったみたいだね」
「ああいえ、俺もちょうどカフェに行くところだったので、席もカナーリスさんに一言頼んだだけなので……」
「ああ、シャロン商会の子と知り合いなんだったね。実は今度、シャロン商会を訪ねる予定なんだよ」
「え? トロワさんが? ……なにかの取引ですか?」
「一部業務提携の提案って感じかな。ほら、最近ウチの紹介は人界に手を広げてるわけだから、人界にある魔法具商会の中でも大手のシャロン商会とは、もっと関係を強化しておこうって感じだね。テトラもかなり乗り気で、大目に予算を割り振ってくれたから、それなりの規模の話になりそうだよ」
「へぇ、それはまた……なんか凄そうですね」
俺に商会同士の取引云々はよく分からないが、トロワさんが直接赴くってことは結構大きめの取引なんだろうか? シャロン商会にとってもいい話であれば、俺もコーネリアさんの友人として嬉しい限りである。
シリアス先輩「……そうか……爆発する地雷は……コーネリアのやつか……」




