香織と映画鑑賞㉔
ちょっと明日は私用で更新をお休みしますので、次の更新は明後日になります。
状況がいいか悪いかと言えば当然よくはない。だが、俺もこれまで数々の困難を乗り越えてきた……ような気もする。この手のアタフタした状況は結構久々のような気もするが、やってやれないことは無いはずだ。
思えば、俺もなんだかんだで恋愛経験値も高くなって様々な事態に落ち着いて対応できるようになってきた。今回の状況だって、経験と照らし合わせれば冷静に……対応できるはずがない!
これが相手が恋人というのであれば、まだ精神的な余裕はあっただろう。多少こう……いや、もちろん相手が寝ている状況と考えれば、よくはないのだが……それでもある程度こう、思考が変な方向に傾いたとしても、許されるのではないかという気持ちはある。
だが、現在俺の腰に抱き着いているのは香織さんであり、恋人というわけではないが可愛くて明るくて魅力的な女性。間違っても変な行動を取ってはいけないし、場合によっては今後の付き合いに物凄い罪悪感を抱えることになる可能性すらある。
とりあえず慎重に体を動かしつつ、香織さんの上に覆いかぶさるように倒れるという事態は避けられる姿勢にはなった。
だが、ほぼ添い寝しているような態勢になるのは否めない。ここで俺は新たな決断……この後の行動をどうするかを決めなければならない。
いま俺と香織さんはベッドで向かい合う様に横向きの姿勢で寝転がり、香織さんがガッチリ俺の腰をホールドしている状態だ。香織さんの顔が俺のへそ付近にあるという点を除けば、ほぼ添い寝である。
この状況で選べる選択肢は多くない。ひとつは待ち……いまは腰をガッチリホールドされているが、寝ている香織さんがそれを維持し続けるとは思えないので、しばらく待てば拘束が緩む可能性はあるので、それを待ってから抜け出すという方法。
次にいっそもう香織さんを起こしてしまうという手もある。これは状況を一気に解決できる手段ではあるが……起きたらいきなり異性の腰に抱き着いている状況で香織さんを起こすのも気が引けるというか、そうなった場合に果たしてうまく説明ができるかという不安はあるし、単純に俺が拘束から抜け出せさえすればなんとかなるだろうと考えている部分もある。
最後に少し強引に身をよじって拘束から抜け出すという手段。それによって起こしてしまうリスクはあるが、上手くいけば香織さんを起こさない状態で、早期に現状を打破といいとこ取りが可能な方法ではある。
だが、これ方法はもしかすると三つの中で一番危険かもしれない。
現在の状況を再確認してみれば、香織さんは腰に抱き着いて顔はへその辺りである。となると、位置関係的に香織さんの胸などは大変にデンジャラスな地帯にあり、ガッシリと抱き着いていることもあって、その辺を意識してしまうのは極めて危険と言える。
いまでこそ必死に心を無にしようと努めているおかげでなんとがギリギリのところで留まれているが、ここで迂闊に体を動かすのは危険すぎる。
……となると、やはり一番いいのは待ちだろうか……もしかすると、すぐに香織さんが寝返りとかをして解放してくれる可能性もあるわけだし、とりあえず少し様子見を……。
「……んん~」
そう考えているとさっそく香織さんに動きがあった。少し腰に回されていた手の力が緩み、同時に体をよじるような動きをしていた。
たぶん無意識に抱き心地のいい個所を探しているとか、そんな感じだろう。だが、これは千載一遇のチャンスである。香織さんがさらに手の力を緩めたタイミングで、素早く体を離せば脱出でき……。
「……んっ」
しかし、そんな俺の思いをあざ笑うかのように状況は予想外の方向へ動いた。俺の背中を探るように手を動かしていた香織さんは、そのまま腰から背中……というか肩のあたりを掴み、身をよじって少し上に上がってくると……先程まで以上にギュッと俺の体に抱き着いたあとで、俺の胸元に顔を埋めるようにして停止した。
さらにそれどころか、足も絡めるように……コアラが気にしがみつくかのように抱き着いてきた。
……密着度合いがとんでもなく上がったんだけど!? もうほぼ全身密着してるような状況だし、なんならさっきまで以上にガッチリホールドされて、身動きがほぼできなくなっちゃったんだけど!?
いやいや、これはよくない。絶対によくない状況だ!? ともかく密着度が凄まじいし、香織さんが寝巻であることも相まって、柔らかさと温もりの伝わってくる感じが本当によくない。
さ、さすがにこれは四の五の言ってられない。
「……か、香織さん。起きてください、香織さん?」
「……すぅ……すぅ……」
もう香織さんを起こしてしまおうと声をかけるのだが……ちっとも起きる気配がない。そういえば、寝つきがいいって言ってたような……もっと大きな声を出すか? い、いや、そう焦ることもないのか……短期間でこれだけ大きく動いたわけだし、次の動きもすぐにあるはずだから、ここは無理に起こさないほうがいいだろう。
こういう状況で一番まずいのは焦って短絡的に動いてしまうことだ。逆にこういう状況だからこそ、心を落ち着かせてリラックスしよう。
要するに俺が邪な感情とかを抱かず心を無にしていれば大丈夫なわけだし……なんというか、久しぶりの理性との戦いであるが、それさえ乗り切れるならたぶん大丈夫だ。
シリアス先輩「おいっ、なんかしただろ!! お前、なんかしただろ!!」
マキナ「シ、シテナイヨ」
シリアス先輩「絶対した。最後なんか不自然だったじゃないか! 快人の思考を操作したりしただろ!」
マキナ「ま、待ってよ。冷静になって考えてよ、さすがに愛しい我が子の思考を操作とかしたら、シャローヴァナルとかも黙ってないし、私自身もそんなことはしたくないし、それはありえないよ」
シリアス先輩「ぐっ、そ、それは確かに……流石に、思考操作とかしたらカナーリスとかネピュラも動くか……」
マキナ「……うん。愛しい我が子の思考は操作してない。ただ単純に我が子が抱き着いてる状態だと、心が落ち着いてリラックス効果があるようにしただけだから、操作はしてない。リラックスして若干思考が楽観的寄りになったとしても、それは別に私が操作したわけじゃなくて愛しい我が子が自分で考えた上での行動だから……はぁはぁ……愛しい我が子と我が子の同衾……尊いよぉ」
シリアス先輩「だ、駄目だこの神、我が子同士のイチャラブイベントだと、あの手この手で無法サポートしやがる。は、早くなんとかしないと……」




