香織と映画鑑賞⑯
三本目の映画を見た後で、香織は一度着替えなどを取りに戻って改めて快人の家に戻ってきた。時間的には夕食時に差し掛かっており、タイミング的には丁度いい。
「香織さん、夕食ですがこっちで食べますか? 食堂で食べますか?」
「う、う~ん、食堂ってリリアさんの屋敷の方だよね? 確か快人くんはそっちで夕食食べてるって……さ、さすがに貴族の御屋敷で使用人とかに囲まれながらの食事は、ハードル高いかなぁ」
「俺の家の食堂も使えますよ? まぁ、その場合は多分俺と香織さんのふたりになるので、部屋で食べるのと変わらないですけどね」
「そうだね。それなら、快人くんさえ問題ないなら、この部屋で食べれたほうが私としては気持ちは楽かな」
「了解です。じゃあ、こっちに運んでもらいますね」
香織は快人やリリアの屋敷の住人にもある程度知り合いはいる。葵や陽菜、リリアにイルネス、アニマにキャラウェイ、イータとシータ辺りは船上パーティーにて料理のアドバイスを行った時などに知り合ったので顔見知りと言える。
ただ、知らない相手も多い上にリリアの屋敷はガチの貴族家となると、若干尻込みしてしまうのも当然だろう。
「そういえば、葵ちゃんと陽菜ちゃんも快人くんの家に住んでるんだっけ?」
「ええ、でも今日は冒険者の講習かなにかで冒険者ギルドの支部がある交易都市の方に行ってて、向こうで一泊するらしいのでいないですけどね」
「講習で別都市の支部……ってことは、葵ちゃんと陽菜ちゃん、中位冒険者試験に合格したんだね!」
「ええ、下位として経験を積んで月一の試験に合格したらしいですね」
「あ~懐かしいなぁ、昇格時の講習って丸一日かかるから長いんだよね。いや、どれも大事なことばっかりなんだけどね」
「そういえば、香織さんも元冒険者でしたね」
葵と陽菜は冒険者として順調に活動しており、元々魔法を覚えていたこともあって中位冒険者に上がれるだけの実力は持ち合わせていた。ただ経験不足だったこともあって、ある程度の期間下位冒険者として活動して、冒険者活動に慣れてから昇格試験に申し込み、問題なく合格したために中位に上がるにあたっての講習を受けに冒険者ギルドの支部に出向いていた。
「中位になると拠点としてる都市とは別の都市の依頼とかも回ってくるようになるから、活動範囲がかなり広がるからね。下位とは勝手が違う部分も多い関係で、活動拠点とは別の都市の支部に講習を受けに行くんだよね。上位に上がる時はそれに加えて、騎士団とかとの合同任務を想定した動きとか、騎士団の指揮下に入って動く時とかの基礎とかを勉強するから、騎士団本部に出向いたりもするね」
「あ~話には聞いてましたけど、合同任務が振られるのって上位冒険者からなんですね」
「規模によっては中位冒険者に話が来ることもあるんだけど、その場合は必ず上位冒険者も居て臨時チームを組む感じになるね。そもそも合同任務って中々ないからね。私もいちおう上位冒険者だったけど、騎士団と合同任務は……スタンピードが起こった時に一回あっただけだね。まぁ、私の場合はあちこち転々としてたから、その手の依頼があまり回ってこなかったってのもあるだろうけどね」
香織の場合は世界を旅する過程で資金調達の手段として冒険者を行っていたこともあり、特定の拠点となる都市で活動していたわけではない。
比較的そういった冒険者には、日数が長くなる可能性の高い合同任務等が回されることは少なく、香織も過去経験したのはスタンピード発生による緊急依頼のみだった。
余談ではあるが、その際の活躍で香織は『水刃』というふたつ名で呼ばれるようになっており、そのまま冒険者を続けていればすぐに最上位冒険者と認識されていただろうが……そのスタンピードから少しして、香織は冒険者を引退したので最上位冒険者と呼ばれることは無かった。
「そういえば、快人くんは冒険者にはなってないんだね。いや、ワザワザ冒険者稼業でお金稼いだりする必要も無いだろうし、戦闘も得意じゃないって知ってるけど、葵ちゃんと陽菜ちゃんの付き添いとかで登録とかだけはしてるのかと思ってたよ」
「ああいや、俺は冒険者登録はできないので……」
「え? なんで?」
「……えっと、俺個人が人界三国の法律適応外にある関係とかで、いろいろ面倒なことになるみたいで、同行者として依頼について行ったことはあるんですがね。いやまぁ、そこまで冒険者になりたいわけでも無いですし、問題はないんですけどね」
「法律が適応されない? やっぱ君、世界を裏で支配するフィクサーなのでは?」
「違います」
なんとも言えない呆れたような苦笑を浮かべる香織に対して、快人も同じように苦笑を浮かべた。
シリアス先輩「さ、砂糖回じゃなかった。流れ変わったか!?」
マキナ「パンチって一回拳を引いたほうが強く殴れるから」
シリアス先輩「……」




