香織と映画鑑賞⑩
香織が何気なく振ったペットに関する話題は、ある意味では地雷ともいえるものだった。快人はペットであるベルフリードとリンドブルムをそれはもう溺愛しておりペット関連の話題に関しては熱量が違う。
ただ、どこぞの圧殺するかのような量で喋り倒す神とは違い、相手の都合などを考慮するだけの理性はちゃんと残っている。
今回も映画鑑賞の時間が無くなったりするほど長く話したりすることは無く、快人のベルフリードの毛並みなどの拘りについての話は、時間で言うならそれほど長い話になったわけではない。
ただ熱量は凄かった……ともかく凄まじい拘りがあるというのがヒシヒシと伝わってくるというか、普通に話している筈なのにどこか威圧感のようなものを感じた。
「……私、学びを得たよ。快人くんのペットの話題は、茜さんで言うところのたこ焼きとかお好み焼きとかの話と同じで、迂闊な気持ちで振ったらダメなやつなんだって……」
「す、すみません。つい熱くなってしまって……」
「いやまぁ、気持ちはわかるんだけどね。私も料理の拘りとか話し出すと、熱が籠っちゃうと思うし……やっぱり好きなものに関しての話だと熱入っちゃうよね」
冷静になってテンションが上がり過ぎていたことを自覚した快人が謝罪をすると、香織は苦笑を浮かべながら気持ちはわかると告げる。
まぁ、さすがに快人で言うところのペット程の熱量は無い気もするが、香織も料理に関してはいろいろ拘りもあるので多少は理解できる部分もあった。
「予定より長くなっちゃいましたが、改めて俺の部屋に向かいましょうか」
「了解だよ。じゃあ、ベルちゃんもリンちゃんも遊んでくれてありがとう。またね~」
「ガゥ」
「キュ!」
ベルフリードとリンドブルムに軽く手を振ってから、香織は快人と共に家の中に入る。そして廊下を移動しつつ、継続してペットに関する話をする。
とはいえ、快人のテンションが上がり過ぎてしまう手並みなどに関する話では無く、普通の雑談である。
「リンちゃんはビックリするぐらい人懐っこかったけど、ベルちゃんは最後までクールな感じだったね」
「ベルはプライド高めなので、極一部の相手以外にはあんな感じですよ……とはいえ子供なので、俺とかアリスには滅茶苦茶甘えてきますが……」
「アリス様……うん? 幻王様にも甘えるの?」
「ええ、ベルに名前を付けたのがアリスですし、アリスの事は母親みたいに慕ってる感じですね。あと、ベルは賢い子なので、俺と遊ぶときは俺の身体能力とかを考えて加減してくれてるんですが、アリス相手だと全力でじゃれても問題ないからか、アリスが来ると嬉しそうにじゃれついてますね」
実際のところベルフリードの認識としては、快人が父親のような存在でアリスが母親のような存在と認識しており、快人とアリスに対しては子供らしく思いっきり甘える。
特にアリス相手だと加減する必要が無いので、文字通り全力……常人どころか並みの魔物でも一瞬で挽肉になるようなパワーでじゃれついている。まぁ、それでもアリスにしてみれば子猫がじゃれてきているようなものなので、問題なく対応している。
「アリスもなんだかんだで面倒見がいいですから、ちょくちょくベルと遊んであげてるみたいですしね。なので、ベルは俺の次にアリスの言うことをよく聞きますね。リンは基本誰にでも愛想がいいですが……最近だとネピュラに話しかけてることが多いですね」
「へぇ~でも分かる気がするなぁ。ネピュラちゃんって可愛いけど、なんか凄く頼りになって気が利く感じで……なんかこう、可愛い中にもカリスマオーラが溢れてる感じがするから、リンちゃんが懐くのも納得だね」
「ネピュラがリンの魔力波長を完璧に会話として理解できてるのも大きいでしょうね」
「あれ? 快人くんもできるんじゃなかったっけ?」
「いや、それが、フレアさん……えっと、竜王配下のニーズベルトさんとかの魔力波長は普通に会話として聞こえるんですが、リンの魔力波長はある程度こんな感じってのは分かるんですが、そこまでハッキリは……たぶん、リンがまだ子供で魔力波長による意思伝達が、フレアさんとか程上手くないからだと思うんですよね。なので、今後もっと成長していけばハッキリ分かってくるとは思います」
「なるほどね~サラッと四大魔竜を例に挙げてくるあたりが、最高に快人くんだよ」
リンドブルムはまだまだ幼い子供であり、魔力量などは餌の影響もあって大きいのだが、魔力波長による会話はまだ未熟で成長待ちといった段階だった。
「でもネピュラちゃんには分かるってことだね。ネピュラちゃんは凄いね。物作りが得意なんだっけ?」
「ええ、ネピュラは凄いですよ。物作りもそうですが、そもそも多芸で……」
「え? あれ? この感じ……え? これも!? ネピュラちゃんに関する話題もそうなの!?」
軽い気持ちで告げた言葉だったが、明らかに快人の声に先程ベルフリードの毛並みについて語った時に近い熱が宿っており、まさかの形で墓穴を掘った香織は、再び熱く語る快人を見て苦笑していた。
(でもまぁ、そういうとこ見ると、いくら色々常識外れでも可愛い後輩だなぁって感じがするから……これはこれで……悪くないかもね)
シリアス先輩「コミカルな面もありつつも、なんだかんだでちゃんと年上のお姉さん属性もあるんだよな、香織……やはり、かなり油断ならぬヒロインか……」




