香織と映画鑑賞⑨
クリスさんには予定もあるので長々と話し込んだりはせずに、ある程度話をした後で香織さんと共に城を出て改めて皇城の外に出てから転移魔法具を使って俺の家に移動する。
俺の部屋に直接転移することもできるのだが、香織さんは外観とかを見たいということだったので玄関前に転移する。
「おぉ……凄いね。いや、私がイルネスさんに連れてきてもらった時は玄関ホールに転移してたから、広いのは分ってたけど……外から見ると圧巻だね。豪邸というか、高級ホテルみたいなサイズしてるよね」
「思いっきり広さは持て余してますけどね……」
「あはは、まぁ、このサイズはよっぽどたくさん人を雇ったりしてないと持て余すよね。というか、家の外観もそうだけど……庭も凄いね! なんか、お洒落な庭園というか、観光地かと思うレベルで整ってるし……家の形は同じでも、リリアさんの屋敷とはかなり雰囲気が違うね」
香織さんの言う通り、家に関しては外観はほぼリリアさんの屋敷と同じなのだが、庭に関してはネピュラとイルネスさんによって大規模な改修が行われたので、リリアさんの屋敷の庭とはまったく違う。
リリアさんの屋敷の庭は貴族的な雰囲気で、左右対称のシンメトリー的な感じに整えられて噴水とかもある形で、門から馬車で入れるように道もかなり広いが、その分花とか木はやや少なめな感じだ。
逆に俺の家の方は馬車ではなく門からは徒歩で歩く前提で調整されており、ベルやリンが遊びやすいように芝生や丘っぽい場所などもあって、自然公園とかの雰囲気に近い庭である。
「……香織さん、せっかくですしちょっと庭を見てますか?」
「いいの? うん、こんなすごい庭だと、一度ぐるって見て回ってみたいね」
「じゃあ、軽く一回りする感じで行きましょう」
香織さんが庭に興味ありそうな感じだったので、家に入る前に庭をぐるっと見て回ることにして一緒に歩いて移動する。
俺の家の庭はかなりの広さであり、一回りするのもそれなりの距離ではあるが、ネピュラやイルネスさんが景観とかには拘っているので綺麗な花とかを見ながら、それこそ観光するように見て回れるのは凄くいいと思う。
香織さんも楽しそうにしており、時折足を止めて花壇などを見ていた。
そのまましばらく一緒に庭を見ていると、少し離れた場所にベルとリンの姿が見えた。セラの姿は見えないので、たぶんセラはいまジークさんの部屋に行っているのだろう。
「お、おぉ、アレが快人くん自慢のペットだね。ベヒモスは、やっぱり結構迫力あるね……」
「どっちもいい子ですよ。ベル、リン、おいで~」
「ガゥ!」
「キュイ!」
ベルもリンも賢い子なので、俺が香織さんと一緒に居るのを見て邪魔しないように近付いてきたりはしてなかったが、俺が呼ぶとどちらも嬉しそうな様子で近付いてくる。
「やっぱり、ベヒモスって魔力が凄いよね。人界の魔物じゃまずありえないぐらいの魔力……え、えっと、触っても大丈夫かな? 噛まれたりしない?」
「大丈夫ですよ。リンの方は首のあたりだけは嫌がりますが、それ以外は問題ないです。ベルは好き嫌いがあるというか……プライドが高めで、特に自分より魔力が小さい相手だと、若干嫌そうな顔をしますね。例外はありますが……」
「あ~高位の魔物はそういう子が多いみたいだよ。むしろ、白竜も高位の魔物だからプライドは高めのはずだけど……えっと、じゃあまずリンちゃん、触ってもいいかな?」
「キュクイ!」
ベルは俺が言い聞かせているので唸ったり噛んだりということは無いが、相手によって嫌そうな顔をする。最初は単純に気に入った相手以外は駄目という感じかと思ったが、どうも魔力量で判断しているところがあるみたいで、基本的に魔力が低い……自分より弱い相手に触られるのを嫌がる傾向にあることが分かった。
ただ例外はいくつかある。たとえば、葵ちゃんや陽菜ちゃんに関しては付き合いもそれなりに長いこともあって、撫でたりしても嫌そうにはしないし、背中に乗りたいと言われたりしても「やれやれしょうがないなぁ」という表情で乗せたりしているので、あくまで初対面の時の第一印象的な部分に魔力量が影響している感じだろう。
対してリンはまったく問題ない。竜種的な拘りなのか、首の下辺りの逆鱗がある部分に関しては、番と認識している俺以外には触らせたがらないが、それ以外は別に嫌がったりすることは無い。
いまも香織さんが手を伸ばして頭を撫でると、心地良さそうにしている。
「かなり人懐っこくて可愛いね」
「たぶんですが、リンは元々飛竜便に居た竜なので、単純に人に慣れてるんだと思います」
「なるほどね……えっと、ベルちゃんの方は……その、撫でてもいいかな?」
「……ガゥ」
「え? これ大丈夫? 私ベルちゃんより魔力量少ないけど……嫌がってない?」
「いや、むしろその感じならまったく問題は……意外と第一印象がいい感じ……あっ、そうか!」
香織さんが恐る恐ると言った感じで尋ねると、ベルは一鳴きして頭を少し低くした。これは意外と好意的というか、自分より魔力量が大きい……つまるところ、己より強い相手に対しての反応に似ている。
ただ単純な魔力量で考えれば、既に成体のベヒモスより巨大な魔力を持つベルに香織さんの魔力量は及ばないのだが……そこで、香織さんがある例外の条件を満たしてることに気付いた。
「確定ではないんですが、一部の本祝福を受けてる相手も自分より格上って認識してるみたいなんですよ」
「あっ、オリビア様の祝福があるからだね」
そう、いくつかある例外のもうひとつが、本祝福だ。これは確定というわけではないのだが、母さんと父さんに対して、ベルは比較的大人しく言うことを聞くし、撫でても嫌そうな顔はしない。
これは、フェイトさんの本祝福を受けていることが影響しているのではないかと予想していたのだが、今回の香織さんに対する様子を見てほぼ確信した。
本祝福に対してなのか、最高神クラスの本祝福だからなのかまでは分からないが、とりあえず香織さんの事は格上と認識しているみたいで大人しく撫でられていた。
「おぉ! 凄い、手触りが最高だね。話には聞いてたけど、快人くんの拘りを感じるね」
「ほぅ……」
もちろんベルの毛並みは俺の自慢であり、拘りの拘り抜いた最高の手触りではある。しかし一撫ででそれに気づく香織さんも、いいものを見極める素晴らしい感性を持っていると言っていいだろう。
「さすが、香織さん。ベルの毛艶にはかなり拘りがあるんですよ、詳しく説明すると……」
「え? 詳しく? あっ、なんだろうこれ、駄目な話の振り方しちゃった気が……」
「まず別のこの部分の毛は、他より少し柔らかくて……」
せっかくだからその辺の拘りについてちょっと説明を……。
シリアス先輩「好感度は爆上がりになるが、迂闊に快人に対して振ってはいけない話題=ペット関連。茜に対するお好み焼きの話もそうだが、香織ってたまに迂闊に地雷的な話題踏むな……」
???「その手の話題になると、親馬鹿スイッチが即座にONになりますからね」




