香織と映画鑑賞⑥
香織さんと一緒に皇城に向かうと、既に話は通っていたみたいで門の前には案内の方……というか、アレキサンドラさんもといアリアさんが待っていた。
そのままアリアさんの案内で城内に入り、廊下を歩いていると香織さんがしみじみした様子で呟く。
「……部外者なのにボディチェックとかも無しで案内……さすが快人くんだよ」
「ああ言われてみれば普通は皇帝と会うなら、危険物とか持ってないかチェックを……マジックボックスに入れていたら意味がないのでは?」
「え? いや、ボックスロックの魔法……」
「……え?」
危険物の持ち込み対策でボディチェックをしても、マジックボックスに隠していたら意味がないのではないかと思ったら、どうもそれ専用の魔法があるっぽい感じがする。
「マジッボックス所持者に、同意の上で一定期間マジックボックスを使用不可にできるボックスロックって魔法があるんだよ。相手の同意が無いと効果が無い特殊付与魔法だけど、勇者祭のセレモニーとかでも使われてるよ」
「そ、そういう魔法もあるんですね……一度もかけられたことありませんが……」
「やっぱVIP待遇だからかな……」
確かに警備上の安全を考えれば、そういうマジックボックスを一時的に制限できる魔法はあって然るべきだろう。ただ俺は三国全部の城に訪れたことはあるが、どこでもボックスロックをされたことは無いし、なんなら提案とかされたこともない。
「お話に割り込む形になってしまいますが、理由は主にふたつ……創造神様の祝福を受けているミヤマ様にその手の制限を付与する魔法が効かないのが一点。そもそもミヤマ様……もとい、護衛についていらっしゃる幻王様単騎でこの城の住人を皆殺しにするのに数秒もかからないでしょうから、仮にミヤマ様が悪意を持って襲撃してきた場合はそもそも防げないので制限する意味がないのが一点です」
「……ああ、なるほど」
俺と香織さんの会話を聞いていたアリアさんが、いままで俺にボックスロックの魔法を施すような提案をさてたことが無い理由を説明してくれた。
シロさんの祝福があるので効果が無いのと、そもそも俺のマジックボックス封じたところでさほど意味がないという二つの理由だった。
「やっぱりシャローヴァナル様の祝福って凄いんだね」
「凄いんですけど、いまいちどんな効果があるか把握しきれてないんですよね」
シロさんの祝福は全ての神族の祝福の上位であるというのは聞いているが、細かくどんな効果があるのかはよく分からないし、本人も「さぁ?」って首をかしげてたので、まぁいろいろな効果がある祝福とそう思っておく。
そんな風に雑談をしながら歩いていると、応接室に辿り着いた。中に入ると既にクリスさんが居た。
「ミヤマ様、カオリさん、ようこそいらっしゃいました。メイド長も案内をありがとうございます。三人分の紅茶を……」
「畏まりました」
「おふたりとも、こちらの席にどうぞ」
微笑みを浮かべて歓迎してくれるクリスさんに促されて、応接室のソファーに座る。
「こんにちは、クリスさん。今日は突然すみません」
「お仕事とか忙しくなかったですか?」
「いえ、ちょうど連絡をいただいた際には手が空いていましたので、まったく問題ありませんよ」
特にこれと言って目的があって尋ねてきたわけではないのだが、クリスさんは快く歓迎してくれており、穏やかな表情で香織さんと軽く会話をしている。
そのままふたりの話がひと段落するのを待ってから、俺はクリスさんに声をかけた。
「……クリスさん、最近なんかアルクレシアでいろいろ俺が原因で騒がしくなったみたいで、申し訳ないです」
「ああいえ、確かに驚きはありますが、国の利益としては凄まじいのでむしろありがたいぐらいです……ひとつずつ起こっていたら」
「え?」
「いえ、失礼。なんでもありません」
最後の方に小声でなにか付け足していた気がしたが、声が小さくて聞き取れなかった。とりあえず、国の利益にはなっているみたいで、それに関してはホッとした。
「実際、少々機会が早まっただけで、いずれ西部の物流には手を加える必要があるとは思っていましたので」
「う~ん、私にはその辺はあんまりよく分からないんですけど、お金とかもいっぱいかかるのでは?」
「確かに予算は必要ですが、運命神様の加護を受けた地や建国記念祭の件もあって、全体的に好景気で国庫は潤っています。ただまぁ、国という大きな組織ですと金銭や人員を動かすのにもあちこちの承認や会議が必要になるので、会議は以前より少し増えましたね」
忙しくはあるが、クリスさん的には望んだ展開でもあるって感じだろうか?
「あっ、クリスさん。これ……必要ないかもしれませんが、お詫びというかお土産というか、カナーリスさん特性の精神的面が原因の胃痛に効く紅茶なので、よかったら……」
「……大変ありがたい品ですね。心よりの感謝を……愛飲させていただきます」
……あれ? いま一瞬、滅茶苦茶疲れてるみたいな顔になった気が……やっぱ結構忙しい感じだろうか? でも、俺に特になにかできるわけでもないし、変になにかしようとして新しいトラブルでも呼び込んだら目も当てられないので、下手に言及はしないでおこう。
「……ああ、紅茶と言えば、今度お茶会を企画しようとしてるんですが」
「………………は?」
「……快人くん、クリスさんにさっそくその紅茶飲ませようとしてる? マッチポンプって知ってるかな?」
シリアス先輩「現在の参加確定者が、シロ、オリビア、エリス、リリア(まだ誘われてないけどたぶん確定)とかいう地獄の宴に引き込もうとしてる」




