香織と映画鑑賞④
香織さんが手際よく作ってくれたサンドイッチを食べ、軽く食後の休憩をしつつ今後の予定を話す。
「どうします? まだ、時間的に2本ぐらいは見れそうですが……連続で映画見るのも疲れますかね?」
「う~ん、確かにもう一本ぐらい見たい気持ちがあるけど、少し間は空けたい気がするね。雑談でもしてよっか……快人くんはなにか、オススメの映画とかある?」
「そうですね。この前、家で見た映画が結構面白くて……ジャンルとしてはホラーかと思ったんですが、コメディ色が強くて怖いというよりは、面白い作品で……」
香織さんに話を振られ、以前に見た映画についてネタバレは避けつつ紹介する。香織さんは興味深そうに頷きながら話を聞いて、時折質問をしたりして他愛のない雑談は続いて行く。
そしてその話がある程度キリがいいタイミングで、ふと香織さんが思い出したような表情で話題を変えた。
「……そういえば、家で思い出したけど……よくよく考えたら、私って快人くんの家にちゃんと遊びに行ったことないね」
「あれ? 送迎とか打ち合わせはイルネスさんに任せてたので、俺はほぼ見てないですが……船上パーティの料理の監修で来てたんじゃなかったでしたっけ?」
「いや、うん。行ったことは間違いないんだけど……イルネスさんが迎えに来てくれて、快人くんの家の厨房……あれ? あっちは、リリアさんの屋敷の厨房だっけ? ともかく厨房に直接転移魔法で移動していたから、食堂と厨房以外全く見てないんだよ。茜さんから聞いて滅茶苦茶大きな豪邸とは聞いてるし、食堂や厨房は凄かったけど……外観とかまったく見てないんだよね」
「あ~なるほど確かにそれだとほぼ見てないですよね。外観はほぼリリアさんの屋敷のコピーなので……公爵家の屋敷と同じって感じですから、間違いなく豪邸ですね。まぁ、部屋とか余りまくってるので、そのサイズを十全に使えてるとは言い難いですが……」
実際に内装は違うが、外から見た感じはほぼリリアさんの屋敷と同じなので豪邸というのは間違いない。ただ、使用人も多く雇っているリリアさんの屋敷と比べれば、俺の家の方は空き部屋は圧倒的に多い。
全員が屋敷で寝泊まりしているわけではないが、リリアさんの屋敷には数十人の使用人と私兵ともいえる警備隊が居るので、それと比較すれば俺の家の方の住人は圧倒的に少ない。
俺、アニマ、キャラウェイ、イータ、シータ、母さん、父さん、葵ちゃん、陽菜ちゃん、カナーリスさんで十人……ネピュラは世界樹のところに居るので部屋は無く、イルネスさんもリリアさんの屋敷の方に部屋があるので俺の家に住んでいるわけではない。
それ以外だと、リリアさんの屋敷の使用人で特に仲のいい人には部屋を貸していたりもする。
職場で生活するのはなんだか気が休まらないが、外から通うのもそれはそれで大変という人も居るのだ。リリアさんの屋敷があるのは中央区画の高級住宅街なので、屋敷の近くで部屋を借りるにしても高くて、別区画の安い部屋を借りれば屋敷からかなりの距離があるので通うのが大変という感じだ。
ルナさんとかも別区画からの通いではあるが、実質リリアさんの側近と言える立場のルナさんは、家と屋敷が登録された転移魔法具をリリアさんから支給されているので、それを使って通っているため別区画からの通いでも問題ない。
しかし、一般の使用人に同じように高価な転移魔法具を貸し出すわけにもいかないので、通いの使用人は結構大変らしい。
そんな使用人の内、仲が良くてよく話をする人から相談を受けて、家の部屋を安く貸したのが最初の切っ掛けだった。渡り廊下ひとつ挟むだけでも気分的に違うらしく好評だったので、同じように仲のいい他の通いの使用人にも提案した結果、何人か俺の家で部屋を借りている……まぁ、それでも五人なので、合計で十五人しか住んでいないので、部屋は余りまくっている。
「……香織さん、俺の家に興味あります?」
「うん。なんていうか、怖いもの見たさというか……一度ちゃんと見てみたいって気持ちはあるね」
「なら、俺の家に移動して次の映画は見ますか? 転移魔法ですぐに移動できますし、香織さんの転移魔法具で座標登録しておけば、今後なんか用事がある時とか訪ねて来やすいでしょうし……」
「凄く魅力的な提案というか、行ってみたいって気持ちは強いんだけど……急で迷惑だったりしない?」
「まったく問題ないですよ」
「なら、せっかくだし、遊びに行かせてもらおうかなぁ……」
香織さんはお店の営業もあるので、いままでは俺の方が会いに来る形だったが、今日は定休日なわけだしタイミング的には丁度いいと思う。
「じゃあ、さっそく行きますか?」
「うん……あっ、快人くん、もしアレだったら少しワガママというか、お願いしちゃってもいいかな?」
「お願いですか?」
「うん。今度茜さんに頼もうかと思ってたんだけど……一度アルクレシア帝国に連れていって貰いたいんだ。私がクリスさんにいろいろお世話になったって話は前にしたと思うけど、会いたくてもアルクレシア帝国は遠くていままではあまり会いに行く機会が無くてね。せっかく転移魔法具を手に入れたから、アルクレシア帝国の首都を登録しておきたいな~って」
「ああ、なるほど。そう言うことでしたら、俺の家に行く前に一度アルクレシア帝国を経由しましょう」
「ありがとう、助かるよ」
う~ん、でもそれならいっそ少しクリスさんに会いに行ってもいいのかもしれない。もちろんクリスさんの予定を確認してからの話ではあるが、とりあえず香織さんには提案だけしてみよう。
シリアス先輩「お家デートから、お家デートへのスライドだと!? う、ウソだろ、そ、そんなことが……そんな無法行為が許されていいのか!?」




