香織と映画鑑賞②
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
菓子などを買い込み、店に戻ってきた快人と香織はさっそく映画鑑賞の準備を行う。
「プロジェクターみたいに映せるんだっけ?」
「それもできますが、空中にSFチックなモニターも出せますよ。なのである程度自由は効きますね」
「あ~じゃあ、この辺りのテーブル使おうか? それで、向こう側に映せばいい感じじゃないかな?」
相談の結果四人用のテーブル席を使うことにして、テーブルの上に香織が飲み物や菓子類を並べる間に、快人が映画を見る準備を行う。
カナーリスに貰った端末を起動させ、相談して決めた映画……移動中に話題に上がった恋愛映画を購入してセッティングする。
「こっちは準備OKだよ」
「こっちも大丈夫です」
「じゃあ、快人くんが席に座ったら明かり消すね」
画面を見やすいように明かりを消す。もちろん時間帯的にまだ外は明るいので、明かりを消しても真っ暗になるわけではないのだが、大きな窓が無い居酒屋風の店内はそれなりに暗くなり、映画館に近い雰囲気になった。
そして香織が快人の隣の席に座ると、ほどなくして映画がスタートする。
(……異性と暗い部屋でふたりきりになっても同様とかしてる感じは一切なし。というか、異性とふたりきりのシチュエーションに慣れてる余裕すら感じる。こ、これが恋愛強者……いや、そもそも単に私が意識し過ぎなだけかな)
そんな風に軽く思考を巡らせていた香織だったが、すぐに始まった映画に夢中になる。元々見たいと思っていた映画であり、彼女にとっては十数年ぶりの映像作品ということもあって感動も大きい。
映画の内容は、若くして旦那をなくした未亡人と大学生のラブロマンスであり、年齢差的な面で言えば香織と快人に近いかもしれない。
(う~ん、いいなぁ。これ大当たりだよ。ヒロインの年齢が私と近いのがいいよね。いろんな面で共感できて、見ていて凄く引き込まれるし、年下の男の子との恋愛も青春感があって最高だね)
しっかり好みに合致していたこともあって、香織は楽しそうな微笑みを浮かべながら映画を見ていたのだが、ふとそのタイミングでなんとなく隣の快人を見た。
画面の光に照らされた横顔は作品に見入っている感じで、香織の視線には気づいていない。真剣な横顔はどこか凛々しく、少し胸の奥が跳ねるような感覚を覚えた。
(……人生って、分からないものだなぁ。こうやって、楽しく恋愛映画見れてるのは……中学生以来かなぁ? あの頃はなんか、根拠もなく高校生になれば自分もキラキラした素敵な青春を送れるんだって思ってたけど……全然そんなことは無かったなぁ)
香織は高校に入ってすぐ両親を亡くしており、その後は親戚に受け入れを拒否されてたらい回しにされたりと、急速に移り変わる環境に翻弄されて、映画鑑賞などしている余裕は無かった。
(お父さんとお母さんをなくしてからは、なにが起こってるかすらよく分からないような日々が続いて、いろんなところに拒否されて消えてしまいたいとか思ってたっけ……それで、児童養護施設入りがほぼ決まった辺りでこっちの世界に召喚されて、何年も旅をしてたから青春なんて考える暇もなかったなぁ)
振り返ってみれば自分自身でも随分数奇な人生を生きてきたと感じる。己の選択に後悔は無い。もっと上手くやれたかもしれないと思う部分はあるが、それでもなんだかんだでたどり着いたいまの日々は幸せだと感じているから……。
(本当……人生って分かんないものだなぁ。そんなことがあって完全に諦めてたはずの青春が、まさか今頃になって押し寄せてくるとは、想像すらしてなかったよ)
そんなことを考えながら映画を見続け、時折横に座る快人の方に視線を動かして苦笑する。
(……でもやっぱ、私って変な星の元に生まれてきたのかも? 遅れてやってきた青春で、いいなって思う相手は……また変にとんでもなくて、全然胃に優しくないんだよねぇ。本当に困った子だよ)
元々やりたいことも見つけてそれなりに充実していた日々だったが、快人と知り合ってからそれがさらに色付いた気がした。
それこそ、幸せも大きくなったのだがその分騒がしさも大きくなり、振り回されることも多くて胃も何度も痛めている。
だがそれでもやはり、いまの日々が悪いものとは感じられないし……なんだかんだで、己が青春していると思うことも多い。
(……まぁ、思い通りにならないのが恋で青春なのかもね。まだまだよく分かんない部分も多いけど……とりあえず、これからもよろしくね。胃に優しくないくせに、カッコよくて素敵な……遅れてやってきた私の青春さん)
シリアス先輩「こ、こいつ、そういえば重い過去持ちだし、なんだかんだヒロイン力の潜在能力はかなり高い……」




