番外編・意外なところにある縁
大晦日もガッツリ仕事でして、執筆時間が取れないのでこの番外編が今年最後の更新となります。今年一年ありがとうございました。また、来年もよろしくお願いします。
過去の勇者役にして移住者である大蔵重信、魔族に転生したという特殊な経歴を持つノインや雅を除けば、現存する異世界人では最年長と言っていい彼は、現在はハイドラ王国の片田舎で半ば隠居生活を送っていた。
そんな重信には、妻であるハンナとの相手に息子ひとり、娘ひとりのふたりの子供がいて、孫も合計で四人いる。
ある日、その孫のうちのひとりが重信とハンナの家に遊びに来た。
「おじいちゃん、おばあちゃん、来たよ~」
「おお、よく来たなニコル」
「いらっしゃい、転移ゲートから遠くて大変じゃなかった?」
「平気平気、普段は冒険者としてもっと長距離を移動したりすることもあるし、このぐらいは余裕だよ」
尋ねてきたのは、重信とハンナの孫娘であり、現在はアルクレシア帝国を拠点として活動する冒険者であるニコルだった。
ニコルは明るい笑顔で重信とハンナと言葉を交わした後、家に上がり持ってきていた紙袋を手渡す。
「これ、お父さんからお土産だよ」
「悪いな。たくっ、アイツは娘に出張らせて自分は仕事か?」
「まとまった休みが取れなかったんだってさ。おじいちゃんたちの住んでるところは田舎過ぎて、尋ねるのも一苦労だ~って言ってたよ」
「まぁ、事実としてド田舎だからな」
ニコルの父親が重信の息子にあたるのだが、現在はアルクレシア帝国の商会で働いており、食料品などを取り扱う商会ということもあって、リッチ男爵領関連で、様々な商会の動きが活発ないまは書き入れ時のようで長期の休みを取ることはできなかった。
苦笑を浮かべる重信を見て、同じように苦笑を浮かべたニコルの元にハンナがお茶を持ってくる。
「ニコルちゃんは、冒険者稼業はどう?」
「それがさ~もう、本当にレオのやつが馬鹿で考え無しでさ~。いや、腕はいいし度胸もあるのはいいんだけど、深く考えないでアレコレ行動しちゃうから困りものだよね。本当に、私が付いてないと駄目なんだよね~」
「ふふふ、そうなのね」
ニコルはレオンハルトという冒険者とコンビと組んで活動しており、愚痴るように話しつつもその表情は楽し気であり、レオンハルトに対してなんだかんだで好意を抱いているのは容易に読み取れる。
そんな微笑ましい孫娘の様子を見て、ハンナも微笑ましそうな表情を浮かべる。
「今日はレオくんは一緒じゃないの?」
「なんか、実家からたまには顔を出せって手紙が来たみたいで、すっごい嫌そうな顔で実家に帰ってくるって言ってたよ。実家関連の話すると露骨に嫌そうな顔するから聞いてないけど、変に貴族の話題に詳しかったりするから、レオって貴族家の出身なのかもね。なんか最近は、結構アルクレシア帝国の貴族がアタフタしてるとか、そんなこと言ってた気がする」
「へぇ、まぁ、こっちには大して関係はねぇが、貴族は貴族でいろいろあるんだろうな……ああ、それにしても、ニコルはいいタイミングで来たな。ちょうどいいもんがあるんだよ」
「うん? なになに?」
首をかしげるニコルの前で、重信は高級そうな木作りの箱を取り出してテーブルの上に置く。
「……つい最近知り合いから貰ったんだが、スピアマッシュだ」
「え? 嘘ッ!? スピアマッシュって、アレだよね? 魔界ですっごい貴重な高級キノコでしょ? へ~初めて見たよ……しかも十本も? おじいちゃんの知り合いって、凄いんだね」
「まぁ、とんでもないやつなのは間違いねぇな……ともかく、私とハンナだけじゃこの数はちと多いからな、ニコルも食べていくといい」
「やった! ありがと~」
スピアマッシュは超高級キノコであり、ニコルも名前だけは知っていたが実物を見るのは初めてだった。値段もさることながら、そもそも出回る数が少ないので手に入れるのは難しい。
重信がどうやって手に入れたかも不思議ではあったが、重信がいろいろ幅広い交友関係を持っているというのはニコルも知っていたので、そういった伝手で入手したのだろうと納得して喜んでいた。
「そういえば、エミルのやつはどうしてるんだ?」
「お姉ちゃん? お姉ちゃんは、ちょっと前に会ったけど……えっと……仕事の方で凄く忙しそうだったよ」
「うん? エミルは確か魔物学者だったよな?」
「うん。なんか、白竜の異常変異種が確認されたとかで研究に大忙しだってさ。なんかその白竜が凄い高貴な人のペットみたいで、直接調査も難しくって頼み込んで譲ってもらった鱗一枚を必死に研究してるみたいだけど、その変異を再現するのがほぼ不可能みたいで、論文を書くのも難しいしどうすればいいんだろうって頭抱えてたね」
「よく分からねぇが、まぁ、新種が発見されればそりゃ学者は忙しいか……」
「なんか偉い伯爵様から話も来てて、勤務地も変わるかも~とかも言ってたね」
もうひとりの孫であるニコルの姉に関しても、仕事が忙しくて重信とハンナの元に来る余裕は無いようだった。その言葉を聞いて納得したように頷いたあとで、ハンナがニコルの方を見て楽しそうに微笑む。
「……それより、私はニコルちゃんとレオくんの話をもっと聞きたいですね。ふたりの恋の進展具合とか」
「ぶっ!? お、おばあちゃん!? なな、なにいってんの……レ、レオとは別にそんなんじゃ……そ、そう、手のかかる弟みたいなものであって、恋とかそういうのじゃなくてね!」
「あらあら……デートとかはしてるんですか?」
「ある意味いつもの冒険者活動が一種のデート……じゃなくて!!」
顔を赤くして反論する孫娘の様子を見て、重信もハンナも楽しそうな笑顔を浮かべていた。
シリアス先輩「お、おぉ、これはまた意外なところに縁が……ニコルって、重信とハンナの孫だったのか……エミルってのは?」
???「ヴィクター商会専属の魔物学者で、カイトさんがブラシ買いに行った時に鑑定した人ですね」
シリアス先輩「あぁ、なるほど……」




