クリスマス番外編・見たかった景色~後編~
公園で合唱コンクールを見学した後は、再び賑わう通りをアイシスさんと一緒に歩く。クリスマスっぽい飾りつけも多く、アイシスさんは珍しそうにキョロキョロと視線を動かしていた。
「……クリスマスは……カイトの世界のお祭り……だよね? ……この世界のクリスマスと比べて……どう?」
「そうですね。飾りとか雰囲気は結構似てるイメージですけど、俺のイメージするクリスマスはどっちかというと家でパーティーみたいなことをする感じですね。七面鳥……鳥の丸焼きみたいな料理や、ケーキを用意して親しい人と過ごして、クリスマスプレゼントを交換したりってそんなイメージですね」
「……あんまり……外に出かけたりはしないの?」
「いや、そんなこともないんですよ。家で家族と過ごすってのも多いですが、恋人とクリスマスデートをする人も多かったですね」
俺のクリスマスの思い出と言えば、幼少期とかに母さんと父さんとパーティー……というほどの規模でもなく、ちょっと豪華な料理が出る日で、メインは翌朝に枕元に置いてあるクリスマスプレゼントだった覚えがある。
サンタクロースの存在を信じていたのは小学校3年ぐらいまでではあるが、朝起きて枕元に綺麗に包装されたプレゼントが置いてあると、サンタクロースの正体を知った後も嬉しかった。
まぁ、恋人たちのクリスマスだとか、性なる夜だとか、そういう方向には縁が無かったので、恋人たちがクリスマスデートでなにをするかと言われると、あんまり分からないのだが……。
「……じゃあ……今日は……私とカイトで……クリスマスデート……だね」
「ですね」
はにかむように笑うアイシスさんが大変に可愛らしい。そう、以前はともかくとしていまはこんなにも可愛く天使と言っていいほどの恋人がいるので、幼少時とは違ったクリスマスの楽しみを味わっている気分になる。
「……出店も多いですし、せっかくですからなにか食べますか?」
「……うん……鶏肉を……食べるんだっけ? ……じゃあ……あのお店がいい?」
「……ま、まぁ、たしかに鶏肉ですね間違いなく……あの店に寄りましょう」
アイシスさんが指さした露店は、確かに鶏肉……焼き鳥の屋台だった。間違いではない、焼いた鳥を食べるというのは間違ってない。だが焼き鳥をクリスマスらしい料理と判定するべきかどうかは、悩ましいところである。
まぁ、七面鳥とかローストチキンじゃなくてフライドチキン食べる人だって多いわけだし、むしろ買い食いとしてであれば、串に刺さっていて食べやすい焼き鳥が正解かもしれない。
そして焼き鳥の屋台の前に移動すると、バジルっぽいいい香りがした。タレとか塩ではなく、バジルチキンみたいな感じのやつなのか、これはこれで美味しそうである。
アイシスさんはそんなに量は食べないということで、一緒に食べる前提で大きな串の焼き鳥を一本購入して屋台から離れる。
「……カイトが先に……食べていいよ……カイトが食べた後で……私も食べる」
「分かりました。じゃあ、さっそく一口……おぉ、あっさりしてて美味しいですね。アイシスさんもどうぞ」
「……ありがとう……いただきます」
串にささっている鶏肉は結構大きく食べ応えがあり、バジルチキン風の味わいがかなり美味しかった。一切れたべて串に軽く手を添えてアイシスさんの方に差し出すと……アイシスさんは上品な動きで、髪の毛が当たらないように軽く手で押さえながら、焼き鳥を一口食べる。
先程俺が一口で食べた一切れの鶏肉を三分の一ほどだけ食べて、アイシスさんは可愛らしく微笑む。
「……美味しい……でも順番は失敗だったかも……私が先に食べて……残りをカイトに食べてもらった方が……よかった……一口で食べるには……ちょっと大きい」
「確かに……じゃあ、残りはアイシスさんが一口食べて、俺が食べる形で行きましょう」
「……うん」
仲良く一緒にひとつの串の焼き鳥を食べるというのも、なかなかどうして恋人っぽいというか……クリスマスデートしているなぁって気分になる。
もちろん大きめとはいっても焼き鳥一本なので、すぐに食べ終わり串をゴミ箱に捨てて、次はどの屋台に行こうかと考えていると、不意にアイシスさんがなにかに気付いたような表情を浮かべた。
「……あっ……カイト……ちょっとソースが付いてる」
「え? 焼き鳥のやつですかね? えっと……」
「……じっとしてて」
俺が「どこですか?」と尋ねる前に、アイシスさんは俺に動かないように告げてソッと俺の頬に手を当てて顔を近づけて、軽くキスをしてきた。
唇の中心より少しズレた場所へのキスと、直後にペロッと舌で軽く舐められる感触……顔を離したアイシスさんが、いつの間にか手に持っていたハンカチで軽く俺の唇の横を拭きつつ笑顔を浮かべる。
「……えへへ……これで……綺麗になった」
「ありがとうございます……あっ、でももしかしたら、唇の内側にも付いてるかも?」
「……あっ……そうかもしれない……じゃあ……もう一回……綺麗にするね」
俺の言葉を聞いて意図を察したのか、アイシスさんは嬉しそうな笑顔と共に再び顔を近づけてきた。
シリアス先輩「……認識阻害魔法があるとはいえ、天下の往来でイチャラブとは、成長したな主人公!! くそがっ!! おかげで、こっちはイカレた神に切り株ケーキにされたんだぞ!!」
マキナ「ふっふっふ~ん♪ ふっふっふ~ん♪ ふふふ~んふふ♪」
シリアス先輩「ご機嫌に鼻歌歌いつつ切り分けてんじゃねぇ! あと、ジングルベルは、本来クリスマスの歌じゃなくて馬ぞりの歌だろうが!?」
マキナ「……ケーキが喋っている」




