依頼の品⑰
明日はクリスマスイブなのに仕事で出張のため、次の更新は明後日です。
とりあえず香織さんと一緒に水蓮に向かってはいるが、特にこの後どうするといった予定は決めていない。せっかく友好都市に来たんだし少し観光したいという気持ちもあるが、香織さんは疲れもあるだろうしゆっくりしたいところだろう。
もちろんひとりで回るという手もあるが、それはそれでもったいないという思いもある。
「……あ、そうだ。香織さん、一緒に映画見ませんか?」
「え? 映画? 記録魔法具ってもうそんなに発展してるの? 前に聞いた話だと、まだ3分前後の映像記録が精いっぱいって感じだったけど……」
香織さんの言う通り記録魔法具……俺たちの世界で言うところのビデオカメラに該当する魔法具は、まだまだ発展途上の品だ。
母さんと父さんから聞いた話では、魔水晶は魔力などの保存は得意だが映像データなどの保管には向いていないようで、高純度のものでもあまり長時間の映像を記録することはできないみたいだった。
というのも性質上魔水晶は常に空気中の魔力を取り込んでいるので、それが保存している記録に影響を及ぼしてしまうみたいで、それから保護する術式なども追加で刻まなければならず、そうなると保存しておける容量はほぼ無くなってしまうらしい。
なので俺たちの世界で言うところのBDだとか、そういう記憶媒体的なものの開発が必要らしく、そちらの方向性でいろいろな商会が開発に乗り出しているみたいだ。
実際最初に開発成功した商会の利益とかは凄いだろうが、なかなか難しいみたいだ。クロも頭を悩ませていたので、適した新素材とか新加工技術とかが出てこないと難しいっぽい感じがする。
まぁ、それは今回の話とは関係ない。今回香織さんと誘ったのは、記録魔法具はまったく関係ない話である。
「ああいえ、記録魔法具じゃなくって……えっと、香織さんは知らなくても無理はないんですが、誕生日パーティーの時にカナーリスさんにプレゼントとして、俺たちの居た世界の映画が見えるタブレットみたいなのを貰ったんですよ。お金を払えば、最新の映画から古い映画まで全部みれるっていう品ですね」
「え、えぇぇぇ、最新の映画もみれるの!? い、いいなぁ、私映画結構好きなんだよね。特に恋愛映画とか、こっちに召喚された時にはまだ公開されてなくて見たかった作品とかもあるし……久しぶりに見たいのとかもあるし……え? それ、私もみれるの?」
「ええ、空中にSFチックなモニターで投影したり、壁にプロジェクターみたいな形で写したり色々できるので、映像も音もすごく綺麗でしたよ」
「それ最高! 見たい! 快人くんがいいなら、私の店で一緒に見よう!」
映画と聞いてかなりテンションが上がった様子で、香織さんは笑顔で告げる。想像以上の食いつきではあるが、よくよく考えたら香織さんにとっては十数年ぶりの映画鑑賞なわけだし、テンションが上がっても仕方がないのかもしれない。
特に香織さんは観劇とかも好きって言っていたし、そういう物語的なのを見るのが好きなのだろう。まぁ、なんにせよ嬉しそうでよかった。
「じゃあ、このまま店に向かう形で大丈夫ですかね?」
「そうだね……あっ、いや、せっかくの映画だし、お菓子とか買って行こうよ!」
「確かに、お菓子とかあったほうがいいですね……というか、かなりテンション上がりましたね」
「そりゃ上がるよ、だって映画だよ映画! いや、もちろん劇とかも楽しいんだけど、映画は本当に久しぶりでワクワクするよ。この世界って魔法具のおかげで、不便さとかは全然感じないけど……娯楽に関してはスマホとかパソコンとか、インターネットがあったあっちの世界には及ばないからね。快人くんの誕生日にやったゲームも、久しぶりで楽しかったしね」
「あ~確かに、その辺の娯楽関係は元の世界が圧勝してる感じはありますね。もちろん、こっちの世界もこれからどんどん発展していくんでしょうし、あくまで現時点ではですが……」
その辺はある程度シロさんとマキナさんの間の契約で、機械製品系の再現とか技術流用に世界規模で制限がかかってたことも要因にあるような気がする。
いまは制限も緩和されて記録魔法具とか、新技術が登場してきているので、今後はそういう分野もより発展していく可能性もあるし、いずれはインターネットに近いようなものもできるのかもしれないが、まだまだ先の話である。
「ああ、見る映画は香織さんが決めてくれていいですよ」
「ありがとう! うわ~楽しみだなぁ、なに見ようかな? 見たかった最新映画とかもいいし、好きだった昔の映画とかもいいし……迷うな~快人くんは、好きな映画とかある?」
「好きな作品だと結構古い作品が多いですね。やっぱ子供の頃に見たのが印象に残ってるというか……例えば……」
「あ~その辺りのは鉄板だよね。テレビでもよく放送されてたし……私も結構その辺は印象に残ってるね。あとは……」
香織さんと好きな映画の話で盛り上がりつつ、どこか楽しい雰囲気でお菓子を買うために移動する。思い付きの提案ではあったが、これだけ喜んでもらえたなら誘ったかいもあるというものだ。
シリアス先輩「……映画デート開始、ってこと?」
???「YES」
シリアス先輩「わ、わぁ……」




