依頼の品⑯
中央大聖堂を出て、香織さんと並んで歩きつつ話をする。香織さんは流石に疲れた様子ではあったが、不老とかに関しては嬉しいと言っていたこともあり、大変そうでもあり嬉しそうでもあり、なんとも言えない表情だった。
「……ところで香織さん、もう返答はさっきの反応で分かってるんですけど、いちおう聞いときますね。お茶会に出る気あります?」
「快人くん、分かるかな? 胃に穴が開いたら、紅茶なんて飲めないんだよ。私を呼ぶときは、神とか王とかそういう方々が居ない時にだけにして」
「了解です。でも、なんだかんだで香織さんも凄いことになりましたね」
「本当にね! 友好都市限定とはいえ、爵位級並みの力とか……とんでもないよ」
「う~ん、でもそれに関しては、俺の体感なので確実じゃないですよ?」
確かにイータやシータの魔力量に近いとは感じたが、それがイコール男爵級高位魔族並みの力があるかどうかは分からない。
「いや、私も同じぐらいの感想だし……正確な基準は分からないにせよ、そのぐらいの力になってるとは思うよ。なにより魔力量が50倍ってのが凄まじすぎるからね」
「やっぱりそこが一番重要ですか?」
「快人くんも知ってるかもしれないけど、一番戦闘力に影響があるけど一番伸びにくいのが魔力量だしね」
「そういえば、俺の魔力も全然増えてませんね」
「私もそうだよ。10年以上こっちに住んでるけど、本当に召喚時点から少しぐらいしか増えてないよ」
魔力量というのは香織さんの言うようにかなり伸びにくい。少なくとも俺は体感できるほど伸びてないし、香織さんに関しても勇者召喚された時からそれほど伸びてはいないらしい。
魔力量は魔法の威力や身体強化の強化率に大きく影響するので、魔力量は戦闘能力に直結すると言っても過言ではない。俺の身体強化がショボいのも、単純に俺の魔力量が少ないからというのもある。
「魔力量って生まれ持った才能に滅茶苦茶影響受けるし、本当に少しずつしか伸びないしね。快人くんのところのイータさんやシータさんだって、生まれ持った才能に加えて数百年とか数千年とかかけてようやく爵位級の魔力量に到達したんだろうから、そこに地域限定とはいえ一瞬で到達できちゃうオリビア様の祝福が凄いんだよ」
「魔力量が50倍になるなら、実際の戦闘力の上昇は50倍どころじゃないって感じですね」
「そうだね。魔力量が大きければ魔法の威力も上がるし身体強化の倍率も上がる……まぁ、もちろん例外というか、適正によって本来の魔力量じゃありえないぐらいの魔法を使えたりってのもあるね。私の水魔法とかもその例外に該当するね。私の魔力量って人間にしてはそこそこ多い程度だけど、水魔法に関してだけは本来の私の魔力量じゃありえないぐらいの威力と規模で放てるわけで、だからこそ私より魔力量も多くて身体能力も高いフラウさんと模擬戦をした時も押しきれたわけだしね。特殊な適性が無ければ普通に負けてたと思うよ」
これに関しては陽菜ちゃんとかもそうだろう。魔力量に関していえば葵ちゃんの方が大きいのだが、身体強化は異世界人特有の尖った適性の影響もあって陽菜ちゃんが圧倒的だ。
実際陽菜ちゃんの身体強化は、強化率だけならジークさんとかルナさんという人族最強格に匹敵するほどらしいので異世界人の適性の特化具合がよく分かる。
「50倍の魔力量になった私なら、もしかしたら水魔法に関しては極大魔法も使えちゃうかもしれないね」
「俺その辺はあんまり詳しくないんですけど、極大魔法ってそんなに難しいんですか?」
「そりゃ難しいよ。下級、中級、上級の魔法の枠組みを超えた魔法が極大魔法って呼ばれてるんだけど、規模も威力も桁違いというか、大抵の極大魔法は小さい街なら消し飛ばせるぐらいの威力はあると思うよ。それこそ使えるのは伯爵級高位魔族レベルだと思うし、私の魔力量が50倍になったところで本来は使えないんだけど、水魔法に関しては適性が特化してるから、もしかしたら行けるかも?」
「なるほど……アイシスさんとかはポンポン撃ってましたが」
「いやいや、それは比較対象がおかしい!? 死王様の魔力量って、伯爵級と比較しても桁どころが次元が違うでしょ! 仮に私の魔力量が1億倍になったって足元にも及ばないぐらいだから、そりゃ極大魔法ぐらい連打できると思うよ」
実際俺が極大魔法を目にしたのは、アイシスさんとイリスさんの戦いでだ。いや、もしかするとそれまでも見ているのかもしれないが、明確に極大魔法と明言した上で使用しているのを見たのはあの時が始めてた。
アイシスさんは本当に軽く使ってたが、それはあくまでアイシスさんが飛び抜けて強いからであって、本来はまずありえない光景なのだろう。
「やっぱ六王は別格ですか……」
「六王様も別格だけど、私たちの目から見たら伯爵級で既に化け物だよ。男爵級とか子爵級は、もちろん私が歯が立つようなレベルじゃないけど、それでもまだ納得できるぐらいの強さだとは思う。でも、伯爵級クラスになるともう光速に対応できて当たり前とか、そんな次元じゃん……光速とか、バトル漫画でもトップクラスのキャラとかって感じなのに、それが最低限みたいな感じだしね。子爵級と伯爵級の間には大きな壁があるって言うけど、それも納得できるよね~」
「……もしかすれば、香織さんもいつかその領域に……」
「行かないよ!? というか、行けないよ!! …………いけないはずだよ。君が変なことしない限りは……止めてね? なんか変な神様とか引っ張ってきて私を超強化するのは……私定食屋の店主だからね! 光速に対応したりする必要は無いからね!!」
「いや、そんなことするつもりは……」
「そのつもりが無くても、そういうことが起こっちゃうから怖いんだよ君は!?」
魂の叫びのように告げる香織さんの言葉に、俺はなんとも言えずに苦笑する。まぁ、本当に実際のところ、シロさんとかマキナさんにお願いしたら、香織さんが伯爵級レベルの強さになったりというのもあり得るのかもしれないが……そんなことをする理由もない。
或いは、誰か異世界の神様とかが香織さんを気に入って祝福みたいなことをしたりすれば、そういうこともあるかもしれないが……まぁ、まずありえないだろう。
シリアス先輩「……マキナとメッチャ仲いい神が、バーサークゴリラの次に来るんじゃなかったっけ?」
???「でもその方が、カオリさんを個人的に気に入るきっかけとかってありますかね?」
シリアス先輩「……さすがに無いか」




