依頼の品⑮
とりあえず一通りの話は終了したといっていい感じであり、香織さんが知りたかったことは知れたのは間違いない。
まさかこの場で本祝福が行われるとは予想していなかったが、とりあえず香織さんも受けれた……というか、小声で「でもやっぱ、不老は嬉しい」って呟いていたので、なんだかんだで悪くないもののようだ。
「……あっ、そういえばオリビア様。今回の件で思ったんですけど、私の方からオリビア様に連絡を取りたいな~って思った場合はどうすればいいですか? ああいや、ハミングバード送って返事待ちで大丈夫な時とかじゃなくて、出来るだけ早く連絡が取りたいなぁってなった場合は、私の方からも祝福を利用した念話みたいなのできるんですか?」
「可能と言えば可能ですが、魔力波長による念話はハミングバードとは違い遠方に魔力波長を飛ばす技量が必要になります。近距離であれば自然と行えるでしょうが、距離が離れている場合は……いまのミズハラカオリの能力では少々難しいかもしれません」
「あ~なるほど、じゃあ私にとっては、念話は近距離用みたいな感じなんですね」
「そうですね。というより、私に用があるのでしたら今回のように中央大聖堂に来れば問題はありませんよ。貴女のことも、『すでに全神官に通達してある』ので名前を伝えれば私に取り次ぐでしょう」
「……おうふっ」
次に似たようなことがあった時のために連絡方法の確認をしようとしていた香織さんだったが、思わぬオリビアさんの一言でなんとも言えない表情に変わる。
ここで重要となってくるのは、オリビアさんが香織さんをどのように通達しているかである。オリビアさんの香織さんに対する評価は間違いなく高いが、他の神官に通達する時に「友人です」とかそんな風に伝えるだろうか?
「……オ、オリビア様? 通達って……ど、どんな風に? ほ、ほら、私って神教の関係者とかじゃないですし、どんな風に他の神官様に伝えてるのかなぁって……」
「ああ……『ミヤマカイト様と親交が深く、私個人との交流も多く助言などを賜る機会の多い女性であるため、訪れた場合は私が直接対応する』と伝えてありますね」
「……お、おかしいな、お腹痛いよ……胃の強さは50倍になってないのかな?」
なにひとつ嘘は伝えていない。確かに俺と香織さんは同郷であり、親交が深いというのは間違いではなく、オリビアさんと交流も多いしアドバイスも何度もしているというのは間違いないだろう。
ただそのアドバイスは主にデートプランとか、そういう関係のはずなのだが……オリビアさんが神官に通達した内容だと、香織さんは俺と交流が深く教主であるオリビアさんに助言ができるような凄い人物であると読み取れてしまう。
オリビアさんにその気がなくとも、他の神官たちにとって香織さんは神教における重要人物みたいな立ち位置と認識されてそうな気がする。
香織さんは頭を抱えてしまっているが、実際の問題としてないように嘘はないのでそれをオリビアさんに修正してもらうというのも難しい。
というか、仮に修正……もっと細かく説明をするとなった場合、それはそれで超真面目なオリビアさんが事細かに説明した結果、余計妙な重要人物になってしまうという可能性もある。
香織さんもそれが分かっているのだろう。これ以上はなにも言えないような感じなので、俺の方で話を締めくくってお開きにしよう。
「……ああ、えっと、オリビアさん。いろいろ質問に答えてくれてありがとうございました。香織さんも聞きたかったことは解決したと思います。お仕事とかもあったでしょうに、急に訪ねてすみません」
「いえ、どうかお気になさらず。私にとってミヤマカイト様とシャローヴァナル様に関すること以上に優先するものなど存在しませんので、最優先に対応するのは至極自然なことです」
「お茶とバームクーヘンも美味しかったです。ありがとうございます」
「い、いえ、ミヤマカイト様に喜んでいただけたのでしたらこれ以上の幸せはありません。まだまだ未熟な身ではありますが、またこのような機会がいただけるのでしたらその際にはいま以上に腕を磨いておもてなしをさせていただきます」
俺の言葉を聞いて本当に嬉しそうに話すオリビアさんは非常に可愛らしいというか、子犬のような雰囲気すらある。
……と、そのタイミングでふとあることを思いついた。
「……あっ、そうだ。詳しい日程はまだ決まってないんですけど、俺の家でお茶会をやろうと思ってるんですよ。シロさんも参加する予定なんですが、よかったらオリビアさんも参加しませんか?」
「ミヤマカイト様とシャローヴァナル様が揃い立つ席に私が!? も、もちろんそれは、この身に余る光栄ではありますが……よ、よろしいのでしょうか?」
「ええ、まだ参加者を集めてる状態なので、オリビアさんがよければ是非」
「それほどの栄誉を与えていただけるとは、ミヤマカイト様の広く深い慈悲に心よりの感謝を……至らぬことの多い身ではありますが、ありがたく招待を受けせていただきます」
「分かりました。じゃあ、また詳しい日程とかが決まったら連絡しますね」
シロさんも参加するお茶会なら、オリビアさんも嬉しいだろうと思って誘っていると予想以上の喜びようだった。それこそ本当に神聖な儀式に赴くかのような雰囲気を醸し出していた。
あと余談ではあるが、チラリと香織さんの方を向いたらとんでもない勢いて青ざめた顔を左右に振っていたので、香織さんは誘わない方がよさそうである。
シリアス先輩「香織は逃れた……だが、エリスの胃は死にそう……」
???「えっと、現状参加確定してるのは、シャローヴァナル様、エリスさん、オリビアさん……あとどうせ巻き込まれるだろうリリアさんですね」
シリアス先輩「ナチュラルにリリアが参加枠に……いや、まぁ、たしかに入りそうだけど……」




