依頼の品⑬
肌事情を気にしていたことを淡々と暴露されて香織さんが羞恥の海に沈んではいるが、オリビアさんは淡々とした様子で説明を続けていく。
「外的要因だけでなく、内臓などに関してもミズハラカオリが老いの影響と認識しているものは改善されていると思いますが、その辺りはどうでしょうか?」
「……た、確かに最近元気ですし、体の調子は凄くいいですね」
「ふむ……あくまで仮として付与した効果ですが、実際に体感した感想はどうでしょうか? いずれ聞くつもりではありましたが、せっかくの機会なのでいま所感について聞いておくことにしましょう」
「あ~えっと……そうですね。いや、なんか凄いことになってるなぁってのはあるんですが……しょ、正直……肌が若返ったのは嬉しいですし、三十路手前で気にしてる部分が多かったので……恥ずかしさとかを除外すれば本当に、心からありがたいです」
香織さんは切り替えの早い方なので、とりあえず気を取り直した様子で感想を述べる。いつの間にか仮祝福が施されていたことには戸惑ったし、それを淡々と説明されるのは恥ずかしかったが、それでも肌などが若返っているというのは嬉しい様子で、オリビアさんにお礼の言葉を告げていた。
「……ミズハラカオリが気に入ったようでしたら、この効果で問題はなさそうですね」
「え? あ、あぁ、もしかしてまたかけてもらえるんですかね? 効果1年とはいえ、その間に老いなかったりってのは嬉しいですし、いまのこの肌とかが維持できるのも嬉しいなぁと……ちなみに、友好都市の外に出た場合に変化が戻ったりするんですか?」
「既に起きた変化が戻ることはありません。他の祝福を例に挙げるなら、生命神ライフの仮祝福は祝福を受けた際に任意の年齢に若返ることが出来ますが、1年が経過して仮祝福が切れたとしても変化が戻ることはありません。私の祝福も同様です。また、友好都市外でも不老や病を防ぐ効果が消えることもありません」
「あ、それなら安心ですね」
オリビアさんの言葉を聞いて、香織さんは微笑みを浮かべる。するとそれを見たオリビアさんは一度頷いてからスッと立ち上がる。
「我が名オリビアの名において宣告する。神界、人界、魔界、いずれにも属しいずれにも属さぬ都市、三界の縁交わるところに我はあり。名は調、名は記、名は導、導き示す先に汝あり。使徒、神徒、聖徒、いずれにも寄らぬ者として、ミズハラカオリの名を連なり記すこと、我が名オリビアの名において許可する」
「……お、おぉ……な、なんか凄いですね。カッコいいというか、神教の洗礼かなにかですかね?」
……え? いまのって、本祝福では? 神族のものとは言い回しが違っていたが、連なり記すとか言ってるし……サラッと流れるように本祝福したのでは!?
香織さんは、そもそも本祝福の言い回し自体を知らないはずなので、よく分かっていない様子で感心して拍手をしていたが、気のせいではなくさっき香織さんの体が一瞬光った。
たぶんというか、確実に本祝福を行ったんだと思う。
「……いや、あの、香織さん」
「うん?」
「いまのたぶん、本祝福です」
「……………………ふぁっ!?」
最初は俺の言葉が理解できなかったのかポカンとしていた香織さんだったが、少しして「青天の霹靂」とでもタイトルを付けたくなるような表情に変わった。
「ほ、ほほ、本祝福!? え? な、なんで? なにが……お、オリビア様!?」
「どうしました?」
「え、いま、本祝福を……その……したんですか?」
「神族に当てはめるなら本祝福と呼称して間違いありませんね。元々仮祝福に近い形にしていたのは、どういった効果が貴女に適切であるか、経過も含めて確認する為でした。老化の改善を重視とした効果をミズハラカオリが気に入ったのであれば、仮祝福としておく必要もありません」
「え? あ……はい……えと……ありがとうございます?」
慌てた様子で尋ねる香織さんではあるが、オリビアさんは淡々としており、あまりにも当たり前のように語るので香織さんも押し切られるように頷いていた。
たぶん、オリビアさんにしてみれば元々本祝福を行うつもりで、効果を調整していただけなので……その効果を香織さんが問題ないと判断したなら、これ以上試験運用のような形にしておく必要は無いと判断して本祝福にした感じで、オリビアさんにとっては最初の予定からなにも変わってないのだろう。
もちろん、いきなりの流れで本祝福を受けることになった香織さんの戸惑いも分かるのだが……。
「……オリビアさん、神族の場合は仮祝福と本祝福で効果が違うというか、本祝福の方が効果が強くなる感じですけど……香織さんにかけた祝福も変化はあるんですか?」
「先ほど語った効果に関しては変化はありません。ただ、私の権能が友好都市に関したものなので、それに関する効果が追加されるような形ですね。ささやかな変化ではありますが、ミズハラカオリが友好都市内に居る場合は能力などに補正がかかるでしょう」
「あ、あぁ、えっと……友好都市にいる間は、強くなれるみたいな感じですかね?」
俺が仮祝福と本祝福の効果の違いについて尋ねると、オリビアさんは大きな変化はないが友好都市内に居ると香織さんの能力にバフがかかるという感じの説明をしてくれた。
たぶん、スカイさんやガイアさんの祝福と同じで特定の環境に居る場合にバフがかかる感じなのだろう。空や大地と比較すると、友好都市って範囲が狭い感じで……なんか範囲を絞る分強力になりそうなイメージもあるが……。
「強さの数値化は難しいですが、仮に魔力量で表現するなら……そうですね。友好都市内にいる間はミズハラカオリの魔力は平時の『50倍』程度になるかと思います」
「ささやかじゃない!? 全然ささやかじゃないです!?」
本当に些細なことのように告げるオリビアさんの言葉を聞いて、香織さんが魂の叫びをあげた。
……最高神レベルのオリビアさんにとってはたぶん、現在の香織さんの魔力が50倍になる程度は本当に少しの変化なのだろうが……当人にとってはとてつもない変化である。
シリアス先輩「ちょいちょい、人付き合いの少なさに起因する箱入り感が出る感じだなオリビア……」
???「まぁ、最高神級であるオリビアさんからみると、カオリさんの魔力量が50倍になっても、マジで誤差レベルの差ですからね。まぁ、ただこれ、魔力を例に挙げただけで……他も上がるんすけどね」
シリアス先輩「あっ……」




