依頼の品⑫
祝福についての説明を終えた後で、オリビアさんは少し間を開けてから説明を再開した。
「……では、ミズハラカオリに対して基本的な祝福の説明が終わったところで、私が行った祝福に関して説明させていただきます。まず最初に、そもそもなぜ私がミズハラカオリに祝福を行おうとしたかに関してから説明させていただきます」
俺も香織さんもよく知ることではあるが、オリビアさんは超が付くほど真面目である。今回俺たちはオリビアさんに詳細の説明を求めたので、オリビアさんは本当に祝福を行った理由まで含めて、すべて詳細に説明してくれるつもりらしい。
話はある程度長くなりそうではあるが、俺としても香織さんとしても細かな部分まで知っておきたいという思いもある。聞いてなかった部分に重要な内容が含まれていたりということもあるわけだし、特に香織さんにとっては自分自身に関わることなので、事細かに知っておきたいと考えるのが自然だろう。
「ミヤマカイト様に導いていただいて以降、私は様々な面でミズハラカオリには助けられているという自覚があります。定食屋での食事に関しては、提供する料理に対して対価となる金銭を支払っているので問題はありませんが、それ以外でもミズハラカオリには個人的な話に助言を求めたり、私の知識が足らぬ場面で説明や実践をしてもらったりと、多岐に渡って助力をしてもらっており、ミズハラカオリには心より感謝しています」
「い、いや~そんな大げさな感じじゃ、たまたま相談に乗る機会とかあっただけで……」
照れたように頬をかいている香織さんだが、実際に面倒見がいいのでデート関連の話ではかなり相談に乗っていたりしたみたいだし、オリビアさんにしてみれば助けられた部分も多いのだろう。
「そんな様々な助力に対して、なにか礼が出来ないものかと考えました。そして日々の会話の中から、ミズハラカオリは主に、老い、肌、青春、恋愛というものに対して悩みを抱いていると判断しました。青春や恋愛に関しては、抽象的な部分も多く私自身の未熟さや種族などの違いの影響もあり、具体的な解決策を講じるのが難しいと判断しました。故にそれらは除外し、ミズハラカオリが響きにしている老いと肌に関して、私の力でどうにかできないかと考えました」
「な、なるほど……あ、あの、オリビア様……そんなガチな感じで分析されると、その、恥ずかしいというか……」
「ミズハラカオリが老いや肌に関して口にする場面は多いですが、特に頻繁に口にするのは……まず、老いによる影響。これに関しては、過去と比較して無理が効かない等の身体能力の低下に関する発言が複数あり、人間という種の特徴から照らし合わせると、やや老化による影響が出るのが早いように感じますが、個体差の範疇であると判断しました。次いで、肌に関しては老いによる劣化を懸念する場合と、水などを扱う仕事……外的環境による肌荒れなどに関して言及する場合がありましたが、比較的に老いを基準とする発言が多く……ミズハラカオリは人間種の他の個体に比べて老化の影響を受けやすいのではないかと判断するに至りました」
「ちがっ……はぅぅ……は、恥ずか死ぬ……」
なんだろう、オリビアさんは滅茶苦茶真面目な感じで話しているのだが、香織さんが公開恥辱されているように感じられてしまう。
いや、実際に年齢による影響はあるのだろうが、香織さん的には「十代の頃と比べて肌のハリが悪くなったなぁ~」とか「昔と比べると徹夜とかキツクなったな~」的な、よくある自分も歳をとってきたなぁって感じの雑談だったのだろう。
だが、超真面目なオリビアさんはそれを真剣な悩みと判断し、知識と照らし合わせて「香織さんは廊下の影響を受けやすい体質で、それに対して悩んでいる」と考察したらしい。
たぶんオリビアさんから見た人間族の老化は、もっと本当に中年とか初老とかそういう段階になって発生するものだと思っているのだろう。
実際その辺は種族の違いなので致し方ないのだが……他愛のない雑談を、クソ真面目に考察されている香織さんは顔を両手で抑えて滅茶苦茶恥ずかしそうにしていた。
「祝福にはそれを解消するための効果をと思ったのですが、私は不老であり老いによる劣化の影響を判断できませんし、ミズハラカオリの以前の状態を知らないため彼女の望む状態というのを正確に把握することが出来ませんでした。故にその判断はミズハラカオリ自身に委ねるのが最善と考え、私の権能と結びつけ『友好都市内で生活している間、本人が老いによる影響と判断している状態が徐々に理想とする状態に戻る』という効果を試験的に付与しました」
「……えっと、つまり、単純な若返りとかってわけでは無い感じですかね?」
「はい。例えば、ミズハラカオリの例で挙げるなら、彼女の肌が若返ったのであれば……それは以前肌の状態を『老いによるもの』と認識していたからでしょう。逆に身長などが変化していないのは、ミズハラカオリ自身が身長が伸びることは老いではなく成長と認識しているからでしょう。また、効果は徐々に発揮され、本人の意志の影響も大きくなります。肌に関して影響が顕著なのは、それだけミズハラカオリが肌に関して老いを強く感じていたということだと思います」
「……確かに……肌に関しては気にしてましたけど……それを他人の口からきくのは……ホント……恥ずかしくて死んじゃう……」
淡々と祝福の効果について説明してくれるオリビアさんだが、肌事情を気にしまくっていたことを図らずも暴露されてしまった香織さんは、耳まで真っ赤にしていた。
シリアス先輩「たぶん、他より快人に聞かれたのが恥ずかしいんだと思う。茜とかには話してたけど、快人の前ではそんな若返りたいとか、そんな発言はしてなかったから……くそっ、ヒロインしてやがる!?」




