依頼の品⑩
明日は出張のため、次の更新は明後日になります
部屋に案内されて、恐らくキッチリ2分のタイミングで「失礼します」という一言と共にオリビアさんがやってきた。
そしてそのまま俺の前まで歩いてくると、スッと流れるような動きで祈りの姿勢になる。
「ミヤマカイト様にお会いできる幸福に感謝を……本日は大聖堂まで足を運んでくださり、心より感謝いたします。ミヤマカイト様が訪れるだけで大聖堂の空気も神聖さを増すように感じております」
「あ、あはは、急に訪ねてきて申し訳ない」
「いえ、中央大聖堂にはいついかなる時においてもミヤマカイト様の来訪に閉ざす扉などありません。そして、私個人としましても、ミヤマカイト様が訪れてくださるだけで溢れるほどの幸福を感じております。いつでも気軽に来訪していただいて問題ありません」
なんというか、いつも通りのオリビアさんである。初手祈りから入ったり、大げさだったりするのも流石に結構慣れてきた感じである。
オリビアさんは俺に軽く一礼して視線を戻した後、香織さんの方を軽く見て口を開く。
「ミズハラカオリもよく来ましたね。来訪を歓迎します」
「あ、はい。お邪魔してます……この快人くんとの対応の温度差がオリビア様って感じがするなぁ」
香織さんはそう言っているが、正直オリビアさんは香織さんに対してはやや対応が柔らかい気がする。たぶん香織さん以外相手だと「来訪を歓迎します」って一言だけ軽く告げて済ませるだろうし、なんだかんだで日頃から付き合いがあるからだろう「よく来ましたね」という一言が出るあたり、香織さんの事は他の人より高く評価している感じがする。
この場において比較対象がとんでもない信仰心を捧げてる俺なので、相対的に香織さんへの対応はそっけないように見えるだけである。
「改めまして、ようこそいらっしゃいました。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「えっと、今回は俺というか香織さんがメインでして……前に三人で出かけた際に、オリビアさんが香織さんに祝福に近いものを与えてるって言ってたことに関して、詳細が聞きたいというのが用件です」
「なるほど……ああ、失礼いたしました。いつまでもミヤマカイト様を立たせたままでいるなど、歴史に名を遺すレベルの大罪……どうぞこちらにお座りください」
「そんな大罪は無いです……じゃあ、失礼します」
オリビアさんに促されて香織さんと共に席に座る。するとオリビアさんは少し緊張した表情で俺に一礼した。
「……ミヤマカイト様。ご迷惑でなければ、話の前に茶と菓子を用意させていただきたいと思いますが、構いませんか?」
「ええ、ありがとうございます」
「いえ、機会を与えてくださりこちらこそ心より感謝いたします。以前ミヤマカイト様をお招きした際からも学びを重ねてまいりました。ミヤマカイト様にご満足いただけるように、鋭意努力いたします」
決戦にでも赴くのではないかというような顔で、オリビアさんはお茶の用意を始める。見た感じほうじ茶を用意してくれているみたいで、陶器っぽい和風の容器を用意していたり、なんとなく以前よりかなり勉強している雰囲気が伝わってきた。
ほどなくしていい香りのほうじ茶が俺と香織さんの前に置かれ、続けて茶菓子が用意される。以前はクッキーを用意していたオリビアさんだったが、今回は緑色のバームクーヘンっぽいもので……パッと見た感じ、抹茶のバームクーヘンみたいに見えた。
「オリビア様、コレって抹茶のバームクーヘンですか?」
「ええ、以前貴女に教えてもらった和スイーツなる品を学び、参考文献やこれまでに得た情報を元に試行錯誤した品です……ミ、ミヤマカイト様の口に合えばよいのですが……」
「美味しそうですね。それじゃあ、さっそくいただきますね」
滅茶苦茶緊張してる……本当に判決を言い渡される囚人かのような表情でジッと俺の方を見ており、それこそ悪い評価だったらこの場で腹を切って詫びるとか言い出しかねない真剣さである。
とはいっても、パッと見た感じ凄く美味しそうで問題は無いだろう。
そう思いつつ一口食べてみると……間にチョコレートの層があるみたいで、抹茶の味わいにチョコレートの味がマッチしてかなり美味しく、ほうじ茶にも非常に合う感じだった。
「……凄く美味しいですね。チョコレートの組み合わせが抜群というか、個人的に凄く好みの味です」
「ぁっ……ミヤマカイト様にそういっていただけると、すべてが報われた思いです。もちろんまだまだ未熟なこの身ではありますが、学んだことが行かせたことは喜ばしく思います。チョコレートに関しましては、以前にミヤマカイト様の御導きにより、ディア・ロイヤル・チョコレートに連れて行っていただいた後に個人的に購入して、今回の菓子に合うように調整させていただいたものになります。もちろんミヤマカイト様にお出しするにあたって、まだまだ完璧とは言い難い完成度かもしれませんが、それでもお口に合ったようでこの胸は喜びに満ち溢れております」
……滅茶苦茶嬉しそうというか、俺が美味しいと告げた瞬間に曇天に光が刺したかのようにパァッと笑顔に変わって明らかに饒舌になっており、なんというか小柄な見た目も相まって凄く可愛らしかった。
~今回の分かりやすいあらすじ~
オリビア「ドキドキ(; •̀ ~•́ )」
快人「美味しいです」
オリビア「・:*:・✧*。(ˊ▽ˋ*)✧*。・:*:・」




