依頼の品⑨
中央大聖堂は香織さんの店からさほど遠くは無いので、歩いて向かうことにして店を出て香織さんと共に中央大聖堂に向かって歩きつつ会話をする。
「そういえば、香織さんは普段中央大聖堂に足を運んだりするんですか?」
「う~ん、天光礼拝ぐらいはするけど、本当にそれぐらいだね。この世界だと月一とかで礼拝する人も多いから、私は少ない方だと思う」
天光礼拝というのは、年に二回……天の月と光の月に礼拝を行う形であり、半年に一回神教の祈りに参加するという感じで、この世界においては一番ポピュラーな礼拝と言える。
それこそ日本で言う初詣とかそんな感じなので、この世界に住む大半の人は天光礼拝は行っているみたいだ。まぁ、あくまで風習的なものであり義務ではないので、どの日に行くとか決まりがあるわけでもないし、行かない人も居るとは思う。
天の月と光の月に関しては、礼拝客目当てで神殿の周囲とかに出店とかも増えるので、雰囲気としては本当に初詣とかに近い感じだ。
ちなみに光の月はノインさんの功績によってそう呼ばれるようになっており、以前は地の月だったので友好条約以前は天地礼拝と呼ばれていたらしい。
「快人くんは天光礼拝とかするの?」
「いや、俺が行くとクレームが入るので……」
「クレーム? むしろ快人くんが来るなら、神殿関係者も歓迎しそうだけど……」
「いや、そっちではなく……『神殿に行って祈るぐらいなら、ここに来ればいいのでは?』って神域からクレームが……」
「あ、あぁ……そういう……」
そう、神殿関係者からクレームが入るのではなく、もっと大元……礼拝によって祈られる側の世界の神様から、わざわざ神殿に行って神に祈りを捧げるぐらいなら、神のところに直接来いとクレームが入るのである。
(当然の要求です。神殿で祈られるより快人さんが来る方が私が嬉しいのですから、そちらにすべきです)
……とまぁ、祈られる側の世界の神様がこう要求しているので、天光礼拝の代わりに神域にお茶をしに行っている。
そんな話をしつつ移動していると、ほどなくして中央大聖堂に到着する。何度見ても本当に巨大な建物であり、まさに友好都市の中心に相応しい佇まいだった。
今日は特に行事があったりするわけではないのだが、それでも結構大勢の人を見る辺り、この世界の人たちの信仰心の高さも伺える。
俺と香織さんが大聖堂内に入ると、入り口近くにいた神官が近付いてきて一礼をした。
「中央大聖堂に足を運んでくださり、心より感謝いたします。教主様にお取次ぎいたしますか?」
「あ、はい。お願いします」
「畏まりました。こちらへどうぞ、部屋をご用意させていただきます」
軽く頭を下げた後で関係者通路と思わしき通路に通され、そこを移動する。最初に訪れて以降、中央大聖堂に来るとだいたい即近くの神官とか司祭とかが声をかけて来てくれて、オリビアさんに取り次いでくれるので話が非常にスムーズである。
たぶんというか、間違いなくオリビアさんが徹底させてるんだと思う。
「……さすがだよ。中央大聖堂が完全に顔パスじゃないか、相変わらずこの後輩とんでもなさすぎる」
「確実にオリビアさんの指示でしょうけどね」
「まぁ、そうだよね。オリビア様が、快人くんに関する対応に関して神官とかに周知してないはずがないし、言われてみれば納得だよね」
ちなみにこうして移動している間にオリビアさんには速報が入っているみたいで、5分すら待たされたことはない。本当に徹底しているというか、凄まじいVIP待遇ではあるのだが、オリビアさんがトップと思うと香織さんの言う通り納得できてしまう部分がある。
「こちらでお待ちください。教主様は2分ほどで参られるそうです」
「分かりました。ありがとうございます」
「もったいないお言葉です」
対応がスムーズなのはとてもいいのだが、強いて問題を上げるとすれば、一般神官も含めて中央大聖堂にいる神教関係者がほぼ全員、俺を神そのものみたいな丁重な対応をしてくるのには思わず苦笑してしまう。
いや、この辺りも含めてオリビアさんらしいと言えばオリビアさんらしいのだが……。
「……これさ、私はいったいどういうポジションとして見られたのかな?」
「ああそっか、香織さんはオリビアさんと交流するのはほぼ香織さんの店なんでしたっけ?」
「うん。だから神官の人とかが私のことを知ってるとは思えないし、快人くんと違って私に関してオリビア様が神官たちに通達する理由もないよね。となると、快人くんが連れてきた見覚えのない一般人って感じなのかな?」
「自分たちが知らないだけで、とんでもない存在……とか思われてるかもしれませんよ?」
「えぇぇぇ……それは止めて欲しい。本当に、切実に……」
分からないところではあるが、実際オリビアさんと香織さんは仲良くしてるわけだし、教主の友人ってポジションで周知されたとしても……やっぱり結構なVIP待遇になりそうな感じはある。
シリアス先輩「まぁ、たしかに顔パスの凄いVIP待遇ってなっても……オリビアが指揮取ってるって考えると、まぁそうだろうなって感想になる不思議……これが信仰心……」




