依頼の品⑧
香織さんの方からも相談があるということで、渡した松茸を入れた後で香織さんが出してくれたお茶を飲みながら内容を詳しく聞いてみることにした。
「……えっとね。なんて言えばいいか、自惚れだったら笑ってくれていいんだけど……最近さ、私の肌というか、全体的にこう、綺麗になってるというか……若々しさ? みたいなものが、ある気はしない……かな?」
「香織さんは前から若々しくて綺麗ですが、確かに最近はより磨きがかかってるというか……前も20代前半とかに見えるぐらい若い印象でしたが、いまは10代って言われても信じてしまいそうな雰囲気はありますね。香織さん自身が活力とかに溢れてて、ちゃんと大人っぽさもあるのに若々しい雰囲気があるのは前からですが……言われてみると、それだけじゃ説明が付かないほど肌とかが若返ってる感じはありますね」
「……君本当にそういうところだぞ、そういうところだからね! 毎回毎回100点満点の解答をすることは、時として変な誤解とか招いちゃうんだからね! いい加減本当に責任取ってもらう方向にシフトするよ……」
とりあえず聞かれたことに素直に返答すると、香織さんは頬をひくつかせて喜んでいるのか怒っているのか、どっちか判断が付きにくい表情を浮かべていた。
しかし、すぐに一度深呼吸をした後で、気を取り直すように表情を戻す。
「……いや、快人くんのタラシっぷりに突っ込んでたら話が進まない。いや、本当に変に若返ってるというか……スキンケアを頑張ってたり、食生活に気を使ってたりとかじゃ説明が付かないぐらいの変化なんだよね。本当に身長とかはそのままで肌とかだけ若返ってるって感じがするんだよ」
「う~ん……ライフさんの祝福に似てる感じですかね? ライフさんの祝福は確か、年齢とか体型を本人の思い描く理想の状態に近づける感じらしいです」
まぁ、理想の体型とはいっても本人が過去にそうだった。或いは、努力で到達できる範囲に限られるっぽい感じではある。だって、そこに効果があるようなら俺の身長も伸びてるはずだし……。
言ってみれば過去の状態に戻ることはできても、未来の状態に辿り着くことはできないって感じだろうか? フェイトさんの運命の権能を全力で使った運命の臨界点って技は、未来の到達点に一時的に辿り着けるものらしいが、ライフさんの祝福にそこまでの効果はない。
というよりは祝福自体に、神本人の権能ほどの力は無いので、出来ることはある程度限られているわけだ。もちろん人間である俺や香織さんの目から見れば、常識では考えられない効果ではあるのだが……。
「確かにそれに近いかも? というか、実はその方向で心当たりがあるんだよ」
「心当たりですか?」
「うん。ほら、前にオリビア様と私と快人くんで一緒に出掛けた時に、オリビア様が私に念話で話しかけてたでしょ? 快人くんも聞いてたみたいだからもしかしたら覚えてるかもしれないけど、その時にオリビア様が神族の祝福を真似たものを私に施したって言ってたんだよ」
「……あぁ、そういえばサラッとそんなことを言ってましたね。確かに、オリビアさんも神界の序列とかの枠外ってだけで、実質的に神族に近いみたいですし祝福を行えたとしても不思議じゃないですね。ってことは、香織さんの変化は、オリビアさんの祝福によるのもなんですかね?」
「その可能性が高いって思ってたんだけど、快人くんの反応を見るとやっぱそれが有力っぽいね」
「そうですね。どのぐらい本人に調整できるのかは分かりませんが、最高神の祝福には共通して不老の効果があったりしてますし、オリビアさんも能力的には最高神に匹敵するみたいですし、香織さんを不老にしたり若返らせたりってこともできそうな気はします」
オリビアさんの場合権能に該当する能力は、友好都市内で発揮できる類のものだが……でもアレは元々の力に、友好都市以外では使用制限がかかるってだけで、オリビアさんの元々の力が変わるわけではない。
俺の誕生日パーティとかでも一時的に制限を解除されて、異世界でも本来の能力を発揮できていたし、この制限はオリビアさん自身にかかってるもので、権能に制限はなさそうな気がするので、祝福の効果が友好都市以外で消えたりってことはなさそうな気がする。
「……それで、相談の内容に移るんだけど……そのことについてオリビア様に詳しく聞きたいんだけど、ひとりで中央大聖堂に行くのは腰が引けて……快人くんも一緒についてきてくれないかな?」
「それはもちろん構いませんが、念話で聞いたりってのは無理なんですか?」
オリビアさんと念話で会話ができるのであれば、それで聞けば一番手っ取り早い気もしたが……。
「それがね。えっと、なんて説明すればいいのかな……電話をイメージするのが分かりやすいかも? オリビア様がこっちに電話をかけてきて、私がそれを受ければそれが切れるまで自由にやり取りできるんだけど……私の方はオリビア様の電話番号を知らなくて、こっちからはかけれない感じかな」
「あ~なるほど、オリビアさんの方が回線を繋いでくれないと出来ないって感じなんですね。それなら確かに、直接訪ねたほうが手っ取り早いですね」
ハミングバードではやり取りに時間がかかるし、オリビアさんは祈りの最中は基本的にハミングバードは見ないらしいので、祈りとかをしていれば返事が遅くなる可能性もある。
……俺が送った時は、いつも爆速で返ってくるが……オリビアさんの性格を考えると、それはあくまで俺が相手だから祈りより優先しているという感じなのだろう。
となるとやっぱり、香織さんが祝福について聞くなら直接訪ねるのが一番か……。
シリアス先輩「胃痛フラグはあるが……弱いか? 元々オリビアとは仲良くしてるわけだし、香織自身不老とか若返りとかに憧れてた節はあったから、説明を受ければ納得して受け入れそう……となるとその後に待つのは、定休日で時間に余裕のある香織と友好都市デート……」




