依頼の品⑥
とりあえずは最初に松茸云々の話をした上に、松茸を欲しがっている様子だった香織さんにお裾分けをしようと思ってハミングバードで連絡した。
今日は香織さんの店は定休日のはずなので、都合が悪い可能性もあるので先に確認してみると、すぐに訪ねても問題ないという返事が来たので、10時に香織さんの店に行く約束をした。
とりあえず、アリスに貰った木箱には10本ぐらい入るので、まずは10本お裾分けする形で大丈夫だろう。
「いっそ、香織さんの店に卸して定食に使ってもらったらいいんじゃねぇっすか?」
「あ~それはいいかも……アリスとか無限に食べれる人に処理してもらう以外だと、1万本を消費するのって難しいし、そういう意味じゃ定食屋で使ってもらうのもいいかな。でも、それって有りなのか?」
「おまけが多すぎるとはいえ、カイトさんはランツァさんからお金を払って購入したわけですし、他に卸したとしても問題は無いですよ。そもそも槍枝樹の精霊たちは、他排的とかじゃなく外に無関心なタイプの閉鎖的な感じで、出荷したスピアマッシュがどうなろうと興味は無いですよ」
「ああ、そういうタイプなのか……ランツァさんの性格からはあんまり想像できないけど、そういえば俺が指摘するまで嗜好品として食事とかを楽しむって発想も無かったみたいだし、カミリアさんに会うまで界王配下に加わる気は全くなかったり、外界に興味がないって言われるとそう思える部分もあるか……」
有翼族はどちらかと言えば、他の種族とあまり関わる気が無いし、購入も最低限で基本里に入れないって感じの他排的な雰囲気ではあるが、対して槍枝樹の精霊は自分たちの住処以外に関心がほぼ無いタイプらしい。
ランツァさんもカミリアさんと出会ったことで、界王配下に加わって外と関わるようになったが、それまではそれこそ数万年とかって単位で自分たちのテリトリーだけで生活してた感じっぽいし、良くも悪くも身内で生活がほぼ完結しているタイプの精霊たちなんだろう。
まぁ、香織さんのところに卸す云々に関しては念のためにハミングバードで「確定ではないが、もしそういう話になったら譲っても構わないだろうか?」と確認の連絡を送ってみた。
すると爆速で「まったく問題ありません! 渡したスピアマッシュは既にカイトさんの物なので、取り扱いは全てカイトさんの自由にしてもらって大丈夫です!!」と返事が来た。
ハミングバードの文字が滅茶苦茶デカいんだけど……魔力を多めに込めてサイズを大きくして送ってきたのかな? なんというか、本当に元気いっぱいな方である。
「……まぁ、カイトさんは今後期間外でもスピアマッシュは譲ってもらえるようになりそうですけどね」
「……え? なんで?」
「聞きたいっすか?」
「聞きたいけど、お前なんでワイングラス取り出した?」
「いや~相変わらずカイトさんは、無意識に変なフラグ立てるなぁ~って、アリスちゃんは笑いが止まらないわけなんすよ」
ワイングラスを取り出して、なんか楽しそうにワインを飲んでるアリスを見て嫌な予感がした。俺が不利益をこうむったりするような感じであれば、アリスは事前に止めてくれるだろうし、たぶんそういう類の話では無い。
ただ、なにかしら俺の行動が原因で……たぶんなんか、いい意味で変なことをしたのだと思う。
「……カイトさん、ランツァさんにカナーリスさん製の美味しい水を渡しましたよね?」
「わ、渡したけど……」
「あれ、カイトさんとかが飲めばただの美味しい水っすけど、精霊族にとっては虜になってしまうぐらいに最高の水なわけなんすよね。分かりやすく例えるなら、ティーパックの紅茶しか飲んだことが無かった相手にグロリアスティー渡したようなもんすかね」
「……つ、つまり?」
「ただでさえ精霊族からの好感度馬鹿高いカイトさんが、そんな最高のプレゼントをしちゃったわけで、槍枝樹の精霊たちからの好感度は、それはもう爆裂に高まるわけですよ……なんなら、来月辺りには槍枝樹の精霊の住処に行きたいって言っても、大歓迎で迎えてもらえるぐらいには好かれてるでしょうね」
「……」
なるほど、確かに俺に不利益は無い。槍枝樹の精霊たちからの好感度が物凄く上がるという話であり、今後スピアマッシュが欲しければカナーリスさん製の水を交換条件に出せば収穫時期じゃなくても譲ってもらえる可能性があるわけだ。
だが、ここで重要なのは……現時点ですら既に、100本買ったら9900本おまけが付いてくるようなとんでもない状況なのである。会ったことがあるのはランツァさんだけなのだが、既に好感度という意味では物凄く高いような気さえしたのだが……それがもっと高まる?
「……次は十万本かもしれないっすね~」
ケラケラと楽しそうに笑いながらワインを飲むアリスを見て、俺はなんとも言えない表情を浮かべていた。いや、好意的な印象を持たれるのは喜ばしいのだが……若干不安も感じる。
シリアス先輩「そして、精霊族は連動的に好感度が上がると……やめろ、ただでさえそれっぽい秋波向けて来てる精霊も結構いるんだから、これ以上好感度を荒稼ぎするんじゃない……」




