依頼の品②
家の玄関から外に出て、すぐ脇にある柱のような形状の物体に触れてから、約束している相手にハミングバードを送る。この柱はカナーリスさんが作成した品で、これに俺やアニマと言った事前に登録している者が触れることで、玄関前の空間だけ一時的に転移阻害の効果がなくなるので転移魔法で家の前までやってこれるようになる。
以前メギドさんに言われて初めて知ったのだが、俺の家の認識阻害は神域並みに強力らしく六王であるメギドさんでも無視して転移することはできないレベルらしい。
しかも、この転移阻害は俺やアニマといった家に住んでいる者は全く影響を受けない特別製で、俺は普通に転移魔法具で家に帰ってこれるというカナーリスさんのゴッドパワーがいかんなく発揮された転移阻害が展開されている。
なので、俺の家に住んでいる人以外が俺の家に来る場合は門の前に転移してきて入るのが基本パターンで、それ以外にこうして玄関前の転移阻害を一時的に無効化して玄関前に転移してくる方法がある。まぁ、門の前と玄関の前でそこまで距離があるわけではないのだが、転移で来れるなら近い方がいいだろう。
ハミングバードを送って1~2分経った辺りで、俺の少し前の地面に魔法陣が浮かび、ほどなくして約束していた人物が現れた。
「こんにちは、ランツァさん」
「こんにちは! 今日はお招きにあずけり……あずかり……あずかれ? あずか……来ました!!」
なんか丁寧な言い回しをしようとして、途中でよく分からなくなった様子で途中で諦め、吹っ切れたような表情で明るく告げる赤錆色のショートポニーの女性……界王配下であり、カミリアさんの部下でもある槍枝樹の精霊、ランツァさんである。
「こうしてまたカイトさんに会える日を心待ちにしていました! 確か異世界では、これをいちじせ……いちじくせん……いちじ……えっと……」
「……一日千秋の思いですか?」
「それです! そんな気持ちで待っておりました!」
相変わらずなんというか、元気いっぱいな方でありカミリアさんの部下ではあるのだが、どこかブロッサムさんっぽさも感じる。
見た目というか服装もほぼくノ一って感じの見た目だし、ブロッサムさんと並ぶと和風感が強い気がする。
「……というか、待たせたのは私ですかね?」
「いやいや、こちらが無理にお願いしたわけですしね」
ランツァさんが尋ねてきた用件は、以前に松茸……この世界ではスピアマッシュと呼ぶ品が欲しいので買わせてもらえないかとお願いした件である。
ランツァさんは、スピアマッシュを売ることは快諾してくれたのだが……スピアマッシュは、収穫と販売の時期が槍枝樹の精霊たちによって細かく決まっていて、売るのは構わないのだが収穫時期まで待ってほしいと言われていた。
もちろん異論なんてあるわけもなく、収穫時期を楽しみに待っていて……その収穫時期が来たということで、今回はランツァさんがスピアマッシュを届けに来てくれたのだ。
「代金は事前にいただいておりますので、今回は品の引き渡しだけで大丈夫ですね!」
「というか、あんなに安くてよかったんですか? 高級なキノコなのでは?」
「う~ん、世間的に高級なのは我々があまり売らないからですね。基本的に私を含めた槍枝樹の精霊は、必要最低限の金銭があれば問題ないので、必要以上に商売をする気もなく、年に一回決まった個数を売っているだけなので結果的に高価になっている形ですね」
「なるほど……」
ランツァさんは飲食もしないし、趣味は自己鍛錬という話でお金などはほぼ使わないらしい。他の槍枝樹の精霊も似たようなもので、住処の保全や環境整備用に必要額だけを稼いでいるとのことで、単純に出回る数が少ないから効果という形らしい。
「もちろん、カイトさんの頼みであれば譲るのもまったく問題ありませんし、なんなら代金も不要なのですが……カミリア様が、それではカイトさんが気にしてしまうだろうと仰れ……仰られ……仰らる? ……そう言っていたので!!」
「そ、そうですね。タダでいただくのは気が引けますし、その方がありがたいですね」
「ですが! 安心してください! 他ならぬカイトさんの頼みでしたし、私の権限でしっかりサービスをしました!! 100本の代金をいただきましたが、今回特別におまけで9900本お付けして、切りよく1万本持ってまいりました!!」
「1万本!?」
グッとガッツポーズのような姿勢で高らかに告げるランツァさんの言葉に驚愕する。いやいや、どこの世界に買った品の99倍の個数のおまけを付ける人が……いや……目の前に居るんだが……ニッコニコである。
あとなんか、あんまり話したことは無い筈なんだけど……ランツァさんからの好感度がやけに高いというか、本人がサッパリした性格なので爽やかな感じではあるのだが、感応魔法でかなりの好意が伝わってきていた。
と、とりあえず、どうしよう? 本人はニコニコで、俺に喜んでもらえるのを期待しているようなので、1万本もいらないですとは口が裂けても言えない。
「……ありがとうございます。嬉しいです」
「カイトさんに喜んでいただけて、私も嬉しいです!」
いい人なんだよなぁ……間違いなく、明るく元気いっぱいでいい人なんだけど……なんかちょっと、絶妙に抜けてる感じが……。
【ランツァ】
ブロッサムのようにテンション上がると話を聞かないとか、思い込みが激しくてというわけではなく……シンプルに馬鹿であり、単純な性格をしている。
深く考えずに思いついたら即実行するため、行動力は凄まじい。思いついた翌日にリリウッドに挑戦するために居城に単身訪ねて行ったり、カミリアの強さと優しさに感動したら、早々に仲間に話を通して界王配下に合流してカミリアの部下になったりと、思い立ったが吉日を地で行くタイプ。
もちろん精霊族の好感度補正もバッチリ影響しており……というか、基本単純な性格なので自然に愛されまくってる快人に対する好感度はハチャメチャに高く、『快人は自然に愛されてる=自然の一部である自分も快人を愛している』ぐらいの感覚で接してくるので、好感度は初期からほぼカンストしているような状態である。




