広がる余波㉚
私用につき明日はお休みで、次の更新は明後日です
あまりの衝撃に気を失って、無慈悲にも魔法で叩き起こされるというのを数回繰り返した後、マリーは絶望とはコレだと言わんばかりの表情で項垂れていた。
快人と買い物に行っていた時のように現実逃避でもしたいところではあるが、アレはまだ夢見心地な状況がそうさせたものであり、現在の状態では難しい……というより、夢だと思い込もうにも猛烈な胃の痛みが、全力で夢ではなく現実だと訴えかけて来ていた。
「……マ、マリー様……お気をたしかに……」
「ちょ、朝食食べてなくてよかったです……食べてたらきっと、全部戻してました……エ、エリス様……わ、わた、私……どど、どうすれば……」
気遣う言葉をかけてくれたエリスに対して、マリーは縋るような目で尋ねる。もはや自体はマリーがどうにかできるようなレベルを遥かに超えており、対応策どころか己がどう動いていいかすらサッパリ分からない。
だからこそ、己よりはるかに高位の貴族令嬢であり才女としての才覚をいかんなく発揮しているエリスに、なにか現状を打破するアドバイスを貰いたかった。
だが、そのマリーの言葉にエリスはなんとも難しい表情を浮かべた。
「……申し訳ありません。こればかりは、私にもどうすればいいか見当すら……」
仮にこれが六王辺りであれば、まだなんとかなった。もちろんそれはそれで凄まじいし、マリーがとてつもない胃痛に悩まされるという結果は変わらずとも、対応などのアドバイスをある程度行うことはできたはずだ。
だが、シャローヴァナルとなるとランクが変わってくる。そもそも、シャローヴァナルと言葉を交わしたことがある者すら極少数であり、どうすればいいかなどエリスには答えようがなかった。
特に黄金リプルをシャローヴァナルに献上などと言うことになれば、貴族や国家だけの問題ではない。神殿関係の者や神教の信徒たちにも影響がありえる。それこそ、世界規模の状況になりかねない。
実際エリスだけでなく、クリスも悩むように頭を抱えていた。マリーに黄金リプルの木が下賜されるのは避けられず、当然ではあるがシャローヴァナルへの献上を避ける術もない。
当然間に入るような真似も不可能であり、マリーに対してなんらかの手助けをする方法が思いつかなかった。
「……あ~まぁ、それに関しては私の方である程度考えてますよ。別に私も、マリーさんをイジメに来たわけでは無いですし……」
「げ、幻王様っ……」
思わぬところから差し伸べられた救いの手……アリスの言葉を聞いて、マリーは目に涙を浮かべながら視線を向ける。
その様子に、憐れむような苦笑を浮かべた後で、アリスは説明を始める。
「とりあえず、黄金リプルの木が下賜されるのは避けれないので、諦めて受け取ってください。それで、最初に出来た黄金リプルですけど……カイトさんに渡してください」
「カイト様に……ですか?」
「ええ、私の方からカイトさんには説明しときますので、それでカイトさんにシャローヴァナル様のところに届けてもらいましょう。それなら、マリーさんがシャローヴァナル様と直接やりとりをする必要は無いです」
そこまで話したところでアリスは言葉を止め、部屋の天井の方に視線を向けながら口を開く。
「……ってことでいいでしょ、シャローヴァナル様? どうせ、私が動いたから様子見てるんでしょうし、この会話も聞いてるでしょ? シャローヴァナル様だって、マリーさんからよりカイトさんから貰ったほうが嬉しいでしょうし、そのあとに一緒に食べるなりなんなりすればいいでしょうから、問題はないでしょ?」
アリスがそう告げると、唐突に部屋の天井にキラキラと光の粒子のようなものが現れ、それが手の形に変わった後、グッとサムズアップをして消えた。
「……シャローヴァナル様的にもOKみたいなんで、そうしてください。とりあえず、シャローヴァナル様関連はカイトさんに放り投げとけば、なんかいい感じにしてくれるでしょう」
「わ、わかりました」
事実として、シャローヴァナルに対応するなら快人が最善である。そもそも、シャローヴァナルが黄金リプルを欲しがっているのも、快人と食べる為であり、快人が持ってくるのであれば文句などあろうはずもない。
とりあえず最大の懸念であったシャローヴァナルへの献上という問題が解決したことで、マリーは少しだけ安堵の表情を浮かべたが……。
「……まぁ、そのあとは頑張ってください。シャローヴァナル様に献上した品で、少数しかならないであろう黄金リプルをその後どうしていくかは、クリスさんとかと協議してく感じでいいんじゃないですかね。多少は情報操作もしてあげますが……世界中から注目の的になることは避けれないと思うので……」
「あ、あばっ……」
「まぁ、最悪どうしようもなくなったらカイトさんに泣きつくって手もありますよ?」
「そ、そんな無礼は、で、でで、できませんし……」
「……極論泣きつくのが最適解とは思うんですが……まぁ、その辺をどうするかは任せます」
実際のところ、アリスが告げた「快人に泣きつく」というのは、最適解とも言えるかもしれない。恥も外聞も無く泣き付けば、本当に最適と言える方向に話は転がりそうではある。
それこそ、場合によっては快人が黄金リプルの木を引き取ってくれる展開もあり得るのだが……根が善良だからか、それともまだ親しいといえるほど交流を重ねてないからか……マリーがその最適解を選ぶことは無かった。
シリアス先輩「……う~ん、でもこれ、実際に考えて快人にガチ泣きで縋りつくのが、一番早急かついい形で解決できそうな方法な気も……快人がマリーを助けようと動けば、アリスもアドバイス程度じゃなくて全力で助けてくれるだろうし……後出しからどうとでもできそうなゴッドもいるし……」




