星見酒⑧
風呂から上がって簡単な準備だけをして、のんびり本を読みながら待っていると、約束の時間の5分前ぐらいのタイミングでドアがノックされた。
間違いなくジークさんが来たのだろうと、返事をして本をマジックボックスにしまって出迎えるためにドアに向かい、ヘアのドアを開けると……そこには予想通りジークさんの姿があった。
「お待たせしました」
「いえ、いいタイミングでしたよ。どうぞ」
「失礼します」
ジークさんを部屋に入れつつも、俺は少しだけ動揺していた。というのも、ジークさんの格好だった。ノースリーブの上着なのは、普段と変わらないのだが寝巻用なのかゆったりと余裕がある感じの、若干オーバーサイズの上着に、太ももの半分にも届いてないような短さのショートパンツという格好で、想像していた以上に薄着だった。
いや、似合っているし、大変可愛らしいのだが……背が高めで足も長いジークさんが、ショートパンツを履くと綺麗な足にチラチラと目線が向かってしまう。
いや、上着の方もかなりキワドイというか、ノースリーブかつオーバーサイズということもあって、動くと横から胸が見えてしまうのではないかという感じで、ハラハラドキドキする。
「あ、こっちのソファーにどうぞ」
「はい。テーブルの上に、料理なども並べてしまいますね」
「ありがとうございます。じゃあ、俺はこれを……」
「それは、たしか……カイトさんがイレクトローネ様からいただいていた……」
「ええ、雰囲気に合わせた音楽を自動で再生してくれる機能もあるみたいで、音楽を聴きながら酒を飲むのもお洒落でいいかなぁって、この部屋は防音性もしっかりしてるので音が漏れて迷惑ということはないですし……いや、というかそもそも漏れたとしても、音が聞こえる範囲の部屋を使ってる人は居ませんが……」
単純に俺の家の大きさに対して、住んでる人が少ないので部屋はあまりまくっており、俺の部屋の周囲の部屋に関しても現在は使用してない。
いずれもしかしたら、リリアさんがコレクションルームを作ってたみたいに、趣味に使う部屋になる可能性もあるので、俺の部屋の隣を含めた数部屋はアニマとかイルネスさん辺りが意図して空けてくれているようだった。
まぁ、それを抜きにしても外や隣の部屋に音が漏れたりするような造りではないので、夜に音楽を流してもまったく問題ない。
猫耳デバイスを自動モードで起動してみると、ほどなくしてゆったりとした綺麗な音楽が流れ始めた。音質は非常によくて、まるで生演奏を聴いているような音質で素晴らしいが……なんか、滅茶苦茶ムーディな音楽が流れ始めたんだけど……。
「いい曲ですね」
「そうですね。バーで流れてそうな音楽で、いい感じですね」
大人の夜って感じの雰囲気の曲であり、確かに恋人と一緒に晩酌をするというシチュエーションには物凄く適している音楽だ。
「じゃあ、まずはワインの残りから飲みましょうか」
「はい。乾杯しますか?」
「そうですね、雰囲気ありますし……じゃあ、乾杯」
「乾杯」
軽くグラスを合わせて、再度晩酌がスタートする。不思議なもので、同じワインではあるのだが、やっぱりシチュエーションが変わると味の感じ方にも変化が出るもので、丘で星を見ながら飲んだ時よりも深くしっとりした味わいのように感じられた。
するとそのタイミングで、ジークさんが丘でしていたのと同じように軽く俺の体にもたれかかってきた。
風呂上がりだからか、凄くいい匂いがするし体温も少し高い上に、感触も柔らかい気がした。いや、実際に丘で飲んでた時より遥かに薄着になっているので、ジークさんの体の感触をより感じやすくなっているのはあると思う。
そこに雰囲気のいい音楽が合わさることで、なんかしっとりした感じになるというか……いや、そもそも、恋人とふたりきりで晩酌、場所は自室、翌日の予定には余裕があって、雰囲気も最高にいいとなると意識しない方が難しいというレベルである。
「美味しいですね」
「ですね……えっと、ジークさん」
「はい?」
それだけではなくジークさんから感応魔法で伝わってくる感情は、覚えがあるというか……前にジークさんに誘われて外泊した時にも感じたものである。
思えばあの時も、ジークさんが色々お膳立てしてくれてリードしてくれた感じであり、今回もそれに近い感じになっている気がする。
そう考えると、丘で「後で言う」と言っていた内容にも想像が付くのだが……むしろそれは、俺の方から言うべきだろう。気のせいかもしれないが、ジークさんも俺が切り出すのを待ってるような気がした。
「……今日は俺の部屋に泊まって行きませんか? ベッドはひとつですが、ふたり寝るには十分なサイズですし」
「……はい。私も、そうなればいいなと思っていたので……嬉しいです」
雰囲気などにも背中を押される形で伝えると、ジークさんは嬉しそうに微笑んで体を預けるかのように力を抜いてより一層もたれ掛かってきた。
シリアス先輩(クッキー&ジャム)「…………」
マキナ「もぐもく……ジャムと合わせると90点……パクパク……むんっ!」
シリアス先輩「はっ!? ま、また体が戻……ぐあぁぁぁ!? こ、この糖度は! なんて場面で復活させやがる……こ、これ、気絶を封じられた胃痛戦士みたいになってるんじゃ……」




