星見酒⑦
一度家に戻って、俺の部屋で飲みなおすことになったが、家に着いたタイミングでジークさんがある提案をしてきた。
「カイトさん、いまから改めて飲むとそれなりに遅い時間になるでしょうから、お互いに先に入浴などは済ませてしまいませんか?」
「あ、そうですね。丁度外から帰るわけですし、入浴とかして……1時間後に俺の部屋で大丈夫ですか?」
「はい。それでは、また後で」
といった感じに先に互いに入浴を済ませてしまおうということになった。確かにもう夕食も済ませているし、飲み終わったら普通に寝るぐらいの時間だろうから、先に風呂などを済ませておくというのが最善だ。
俺は家に入ってそのまま浴室に向かって、浴室入り口にある魔法具に軽く触れてから自分の部屋に移動する。いまのは風呂用の魔法具で、起動させれば湯を張ってくれる便利な魔法具である。
リリアさんの屋敷もそうだが、俺の家の風呂も相当広く以前の感覚で言えば水の無駄遣いのように感じてしまうが、この世界には魔法具があるので話はかなり変わってくる。
俺の家にある風呂用の魔法具は、魔法によってお湯を作り出し、使用後に特定の操作をすることで湯を再び魔力に戻すという実にエコな機能があるので、毎日どころか日に何回でも一番風呂に入れるわけだ。
湯を張るのにかかるのも数分なのでとても便利である。
ちなみにこの風呂用魔法具はリリアさんの屋敷の風呂にも搭載されている。というか、高位貴族の間では人気の魔法具らしく、伯爵以上であればまず確実に屋敷にあるという話だ。
まぁ、とても便利だがかなり大掛かりな魔法具なので当然値段も高く、その上小型化は技術的に難しいらしくどうしても浴室が大きくなってしまうので、財力のある貴族でないと設置するのは難しいのだろう。
こういう大掛かりな類のものは魔法具の得意分野と言えるかもしれない。逆に細かいことをするのは機械の方が上だ。特に空調系は魔法具だと細かい温度調整や切り替えは難しい上に、扇風機ぐらいの機能の魔法具でもエアコン並みの価格なので、年間を通して気候が安定しているシンフォニアはともかく、寒いアルクレシア帝国とかの一般人は結構大変らしい。
まぁ、魔法を使える場合は、自分で体の周囲の温度を調整する魔法を覚えたほうが安上がりかもしれない。
そんなことを考えつつ自室に移動し、ジークさんと酒を飲むことになるであろうソファー回りを軽く確認して、問題が無さそうだったのでそのまま風呂場に向かって入浴する。
ジークさんはともかく、俺の方は入浴に1時間はかからないので、なにか準備をしたほうがいいだろうか? でもおつまみ系はジークさんが作ってくれているものがあるし、酒に関してもワインの残りとリプル酒で十分である。
となると別に用意するものも無いか……あっ、そうだ。イレクトローネさんに誕生日プレゼントで貰った猫耳デバイスで音楽が聴けるんだし、あれでいい感じの音楽とか流してみるのもお洒落なんじゃないだろうか?
お洒落な音楽が流れる部屋で、ワイングラスを片手に恋人と晩酌……かなりいい感じである。まぁ、問題があるとすれば、お洒落な音楽=クラシックぐらいの発想しか出てこない俺の経験不足だろうか、オズマさんとかだと丁度いい雰囲気の音楽をさりげなく選びそうだ。
(突然の脳内への連絡を失礼します。謝罪と解説を出力……『突然ごめんなさい、快人様。いま、快人様が一瞬私のことを考えたのが伝わって、反射的に全知で確認してしまいました』……驚かせた上に、勝手に事情を覗き見た無礼を謝罪します)
……こんばんは、イレクトローネさん。いや、割とシロさんで慣れてるので大丈夫ですよ。これ、世界間の通信的なやつなんですかね? なんにせよ、また話ができて嬉しいですよ。
(感動を出力……『推しの優しさが留まるところを知らない! 激メロ過ぎてツライ……』。改めて本題を出力……『失礼しました。本題に移りますね。私がプレゼントしたデバイスなんですが、曲名とかジャンルをしていなしくても、雰囲気に合ったそれっぽい音楽を流せるモードがあります。快人様の精神状態とか気分とかに合わせて適したものを自動で流す感じです。起動時に自動モードと念じてスイッチを押してもらえればOKです!』……以上、説明を完了します)
なるほど、そんな便利な機能が……わざわざ教えてくれてありがとうございます。世界が違うといろいろ大変だとは思いますが、機会があればまた遊びに来てください。
(大いなる感動を出力……『推しの尊さが溢れてる。いまの私なら全知全能級10体でもボコれる』……嬉しいお言葉をありがとうございます。その際にはまた是非、お話をさせていただけると嬉しく思います。それでは、当機との会話にお時間をいただき感謝を……以上で通信を終わります)
こちらこそありがとうございました。
……別の世界からも通信とか出来るのか……まぁ、全知全能の神様であればそのぐらいは余裕かな? むしろ、最初に謝罪から入る辺り、相変わらず凄くマトモな方である。
電脳天使「直感を出力……『はっ!? 推しが、私のことを考えてる!!』」
のじゃロリ「……ちょっと前の我と同じようなこといっとらんか?」
電脳天使「そちらの誇大妄想と同一視は止めてもらいたい。こちらは実際に当機の名を思い浮かべているという、確たる事実が存在する」
のじゃロリ「そうか……ゴリラ呼ぶか……」
電脳天使「妨害行動は止めたまえ、当機にはこれから快人様の疑問に回答するという崇高な目的のため、世界間通信の許可をシャローヴァナルに取る必要がある。危険生物を召喚した結果、快人様への回答が遅れた場合は、極星神の責任をみなすが?」
のじゃロリ「うぐっ……一番星に迷惑をかけるわけにはいかんのじゃ……仕方あるまい。羨ましいが、指をくわえて見ておくとするか……」




