星見酒⑤
流星群を見つつ、ジークさんとのんびりと楽しむ晩酌はなんとも心地よく、なんとなく時間がゆっくりと流れているような感覚があった。
いや、実際は思っている以上に時間は経過してそうなのだが、落ち着いた空気が時間がゆっくり流れるような感覚を与えてきているのかもしれない。
「……そういえば、リグフォレシアに里帰りした時も夜でしたし、カイトさんと一緒にお酒を飲むのは夜が多い印象ですね」
「確かに……というか、ジークさんも俺も昼に酒を飲むことはほぼ無いですしね。昼に一緒に飲むとなると、たぶん紅茶になるでしょうしね」
「なるほど、なら夜に飲む機会が多いのは必然ですね。まぁ、そもそも私が滅多にお酒を飲まないというのもありますが……」
「あ~確かに、こうやって一緒に飲んでるとき以外でジークさんが酒を飲んでる姿は、ほぼ見ませんね。船上パーティの時も持ってたのはジュースでしたっけ?」
言われてみれば、そもそもジークさんが酒を飲んでる姿をほぼ見たことが無い。本当にこうして一緒に晩酌をしている時ぐらいであり、船上パーティや俺の誕生日のパーティの際にも特に酒類を飲んでいる様子はなかった。
「私は立場上リリの護衛ですからね。私も酔いを瞬時に治すことはできますが、対外的な印象などがありますから、個人で参加している場であっても、基本的に人目の多い場所でお酒を飲むことは無いですね」
「なるほど」
確かに船上パーティの時や俺の誕生日パーティの時のように、あくまでジークさんが個人で参加している場であっても、普段はリリアさんの護衛についているのでリリアさんの護衛と認識される場面も多いだろう。
個人で参加している場では別に酒を飲んだりしても駄目というわけではないのだろうし、実際は周囲はそこまで気にしていなかったりもするのだろうが、それでも気を使ってしまう部分とかもあるだろうし、楽しく酒を飲むのは難しいかもしれない。
「あと単純に、紅茶を飲む機会の方が多いというのはありますね。私自身が紅茶好きなので、お酒を飲もうと考えるより先に紅茶を飲もうと考えることが多く、結果的にお酒を飲む機会が少なくなっているのでしょうね」
「確かに、ジークさんは酒より紅茶のイメージが強いですね」
「お酒も普通に好きではありますけどね……ビールは嫌いですが」
「そういえば、苦手だって言ってましたね」
「ワインか果実酒か、飲むのはその辺りぐらいですね」
以前好き嫌いの話題になった時に、エールもラガーもどっちも苦手だと言っていたのを思い出した。ワインもそうだが、ジークさんは果実で作った酒が好きで、それ以外はあまり好みではないのかもしれない。
そんなことを考えていると、ジークさんはどこか楽し気に苦笑する。
「でも、カイトさんとこうして夜に一緒に飲むならお酒の方がいいですね。紅茶ではちょっと雰囲気にロマンチックさが足りない気がしますし……」
「夜に飲むなら確かにワインとかの方が、恋人同士でいい雰囲気で過ごしている感覚はあるかもしれないですね」
「ええ、なので私にとってお酒は、特別に気を許せる相手とだけ飲むもの……という事にしておきましょう」
そう言って少し悪戯っぽく微笑むジークさんは大変に可愛らしい。というか、今日はジークさんは少しいつもよりテンションが高めというか、もちろん落ち着いた優しい雰囲気もあるのだが、それ以上に今日は可愛い面をよく見せてくれるので幸せな気持ちになる。
「……ああ、そういえば、翌日が仕事の時にはお酒を飲む気にならないというのも、普段あまり飲まない要因かもしれませんね。いえ、酔いは消せるんですが、なんとなく……」
「あ~分かります。俺もシロさんの祝福のおかげで、酔いを醒まそうと思えばすぐにできますし、息が酒臭くなったりもしないんですが……翌日に朝から予定があったりすると、酒を飲む気にはならないですね。あれ? でも、ということは……ジークさんは明日は休日ですか?」
「ええ、次の担当勤務は明後日の夜間警備なので、いまの時間からだと丁度丸二日ぐらい休みですね」
「おぉ、それなら結構しっかり羽を伸ばせそうですね」
ジークさんの仕事はリリアさんの屋敷の警備であり、ジークさん自身は「基本的に何も起こらないので見回りと訓練や指導程度で、仕事内容はとても楽です」と言っているのだが、勤務時間が昼だったり夜だったりするし、リリアさんが外出する際に付き添ったりもするので、なんだかんだで大変そうである。
「そうですね、羽を伸ばせ……」
「うん?」
「ああいえ、もうちょっと後になってから言いますので、気にしないでください」
楽しげに笑っていたジークさんは、途中で言葉を止めてジッと俺の顔を見てきた。その様子に首をかしげると、ジークさんは後で話すと言って苦笑した。
その際にグラスを傾けつつ、小さくなにかを呟いていたみたいだったが、内容までは聞き取れなかった。気にはなるが、とりあえず後で話してくれるという事なので、それを待つことにしよう。
「……夜更かしをしても問題ないわけですし……別の部屋に泊まっても……カイトさんの明日の予定は確認しないといけませんが……」
シリアス先輩「ぐ、ぐあぁぁぁ、同衾フラグだと……か、体が本当に星形のクッキーに……」
マキナ「もぐもぐ」
シリアス先輩「くっ、ミルキーでサクサクなクッキーになってしまったせいで、またイカレ神に捕食されてる……」
マキナ「いや、ちょっとしっとりしてるから、サクサク感は無いかなぁ……でも味は美味しい85点」
シリアス先輩「人の体食っといて、ケチ付けた上に採点までしやがった!?」




