星見酒③
圧巻の光景ともいえる流星群にしばらく目を奪われていたのだが、せっかく流星群を見ながら酒を飲もうという話だったのに、酒を飲まないままではもったいないという事で、準備をすることにした。
「ああそういえば、アリスがジークさんと飲めってワインをくれたんで、これを飲みましょう」
「これはまた随分といいワインですね。なぜアリス様が私たちに? いえ、ありがたいのは間違いないですが……」
「う~ん、自分で飲むつもりだったけど予定を変更したからって言ってたので、たまたま持ってたからくれた感じだと思います」
実際のところはたぶん釘刺しの意味もあってあのタイミングで出てきたのだと思う。たぶん茜さんとも話していたアルクレシア帝国関連の話で、マリーさんの方は追加でどうこうというほどまだ動きは無い筈なので、コーネリアさん関連じゃないかと思う。
テトラさんが明らかにシャロン商会に興味を持ってる様子だったし、その辺が動いてアリスが情報処理をする必要があると判断する段階まで騒ぎが進んだのではないかと思う。
俺が原因なので申し訳ないという思いもあるんだが、アリスから遠回しに「いまなら情報処理だけで簡単に片付けられるレベルだから、追加でなんか起こして複雑にしないように大人しくしとくように」的なことを言われたので、そっちの関連はアリスに任せてジークさんとの星見酒を楽しむことにしている。
「簡単ですが、摘まめるものも用意してきました」
「え? これ、ジークさんが作ってきてくれたんですか? よくそんな時間が……」
「ああ、私はカイトさんに声をかけた時点で夕食は食べ終えていたので、カイトさんが夕食を食べている間に用意したんです。とはいっても、短い時間で軽く用意しただけなので、簡単な料理ばかりですけどね」
俺がワインを用意すると、ジークさんも重箱のようなものを取り出しシートの上に置く。中には一口で食べれるつまみが何種類もあり、かなり美味しそうだった。
クリームチーズを生ハムで巻いた料理や、プチトマトっぽい野菜などを串に刺したもの、一口サイズのサンドイッチなどもあり、どれもワインやリプル酒に合いそうな料理だった。
ジークさんは簡単なものを作ったと言っていたが、確かに調理工程は簡単な品が多いが種類が相当の数なので、結構手間がかかってるように感じられた。
「なるほど、でも種類もたくさんですし、凄いですね」
「ふふ、いくつかは作り置きしていた料理を流用したりしたので、一部手抜きはしています……でも、味は大丈夫だと思いますよ」
「ジークさんの料理は美味しいのはもちろんですけど、なんだか優しく温かい味わいなので、かなり好きですね」
「カイトさんへの愛情がたっぷり入ってますからね。いまから食べるのですが、とりあえずひとつ味を見てもらえませんか?」
優しく微笑んだ後で、ジークさんは一口サイズのサンドイッチを手に取り、片手を添えながら俺に差し出してくれる。
食べさせてくれると言いう事だろう。ジークさんは穏やかで優しいお姉さんって雰囲気の方だし、こうやって微笑みながら料理を差し出してくれる姿には、なんというか包容力のようなものを感じる。
口を開けてサンドイッチを食べさせてもらうと、たぶんハムサンドだろうか? 少しピリッとした感じもあるのでマスタードも使ってるかもしれない。少し濃い目の味わいが、お酒に抜群に合いそうな感じだった。
「美味しいです。ワインにも合いそうですね」
「リプル酒に合うつまみを持ってきたので、ワインにも合いそうなのが多いのは幸いですね」
「しかし、お酒もつまみもジークさんに用意してもらって、ワインもたまたまアリスに貰ったやつですし、俺もマジックボックスからなにか出したほうが……いやでも、それだと量が多くなりすぎますかね」
「そうですね。私もカイトさんもそんなにたくさん飲んだり食べたりするわけではありませんし、追加は無しでいいと思います」
マジックボックス内には食べ物とか酒類もあるので、追加で出そうと思えば出せる。だが、ジークさんの言う通り、俺もジークさんも大酒飲みというわけではなく、むしろ雰囲気的にゆっくり飲みながら会話重視で酒を楽しむ感じになりそうなので、これ以上なにかを用意しても過剰である。
「なので、カイトさんのなにかしたいという気持ちは、そうですね……私を甘やかしたりする方向に注いでもらいましょうかね?」
「あはは、なるほど……ジークさん、その発言は責任が伴いますよ?」
「おっと、それはそれは……ふふ、楽しみですね」
なにかしたいという気持ちは、自分と恋人らしくいちゃつくことに回してほしいと、なんとも可愛らしいことを言うジークさんに対して、ちょっと前のジークさんの言い回しを真似て返す。
すると、ジークさんは楽しそうな笑みを浮かべて、俺にもたれかかってきた。
シリアス先輩「い、いちゃつきやがってぇ……ぐっ、く、くそっ!? 浸食速度が速い、もう既に体の半分が金平糖に!?」
マキナ「……もぐもぐ……ちっちゃな金平糖が連なって体の形になってるし、色合いも元の体に準じた感じ……ぽりぽり……服まで金平糖になってるのは、変な感じだよね……ぱくぱく……体の一部扱いなのかな?」
シリアス先輩「なに当然の権利のように食い始めてるんだイカれ神!!」
マキナ「う~ん、美味しいんだけど元のシリアス先輩がベースだから、色合いが……金平糖って視覚でも楽しむお菓子だと思うんだよね。もっとカラフルな方がいいなぁ……」
シリアス先輩「勝手に人の体を食った上に、文句までつけてくるとか暴君にもほどがあるんだが……」
マキナ「…………よしっ……『シリアス先輩カラフルビーム』」
シリアス先輩「は? ぎゃぁぁぁぁ!? 残ってる体の部分がレインボーな色合いに!? なにしてくれるんだテメェ!!」
マキナ「これで、カラフルで色鮮やかな金平糖が食べれるね!」
シリアス先輩「ふざけっ……というか、そこまでやるなら自分でカラフルな金平糖創造しろよ!! 絶対そっちの方が楽で早いだろうが!!」
マキナ「……はぁ、シリアス先輩。最短の手順や最高の効率が最適解とは限らないんだよ」
シリアス先輩「少なくとも私の体をレインボーに着色するのは、最適解ではねぇよ……」




