星見酒②
ブラッシングも手入れも欠かしていないベルの毛並みは肌触りも最高で、もたれかかると実に心地がいい。ベルの体のサイズが大きいので俺とジークさんが並んでもたれ掛かっても余裕はある。
まぁ、それでもかなり距離は近いというかほぼくっついた状態で座る形になるのだが、そこは恋人同士なので問題ない。
「想像以上に星が綺麗ですね」
「圧倒されますね。街から少し離れるだけで、見え方もかなり変わってくる印象です」
「最初は照明魔法具を消して、星空を楽しみましょうか?」
「賛成です。お酒などはそのあとで……」
まだ流星群っぽい光景は見えないが、街の灯りが無く雲もないので星が本当に綺麗に見えた。これぞまさに満天の星空と言えるような光景で、ただ見ているだけでも圧倒される雰囲気があった。
そのまま少し星を眺めていると、ジークさんが無言で軽く俺の方にもたれかかってきた。微かな重みと心地よい温もりを感じながら、俺もそっとジークさんの手を取り、指を絡めるようにして手をつなぐ。
「……不思議ですね。特別アレコレをしてるわけじゃなくて、並んで座って手を繋いで……それだけのことが、凄く特別に感じられます」
「確かに俺もジークさんとこうしてると、なんか特別で贅沢な時間を過ごしてるような気分になりますね」
「幸せという気持ちを実感しますね。ついついこうして、カイトさんに甘えたくなってしまいます」
ジークさんはそう言って軽く俺の肩に頭を乗せるようにしてくる。普段は落ち着いて穏やかなジークさんが、こうして甘えるような可愛らしい仕草を見せてくれるのは、それだけ俺に心を開いてくれている証拠のようにも感じられて、なんだか嬉しく口元に笑みが浮かんだ。
「俺としてはもっと甘えてもらって、全然大丈夫ですけどね」
「おっと、その発言には責任が伴いますよ? なにせそう言われてしまうと、いまの私は真に受けてもっと甘えてしまいますよ」
「嘘偽りない気持ちなので、真に受けてもらってまったく問題ないですよ」
「ふふふ、では、そうさせてもらうことにしますね」
嬉しそうに告げた後で、繋いでいた手をいったん解いて、ギュッと俺の腕を抱きしめてた上で手を繋ぎなおしてきた。
先程よりも密着度が確実に上がり、腕全体にジークさんの温もりを感じる。照明魔法具を消しているので灯りはないが、星の光がそれなりに明るくジークさんの方を向くと、なんとか顔が見えるぐらいの明るさはあった。
繋いでいない方の手をジークさんの頬に軽く当てると、こちらの意図を察してくれたのかジークさんはこちらに向けて顔を上げた後で目を閉じてくれたので、そのまま顔を近づけて軽く唇を重ねる。
ただ本当に軽いキスだけに留めておくというか、流星群を見るという目的を忘れてしまわない程度にしておいた。
「……なかなか難しいですね。流星群を忘れてしまいそうになります」
「あはは、俺も同じようなことを考えてました。せっかく出向いて来たのに、結局見ませんでしたとかだともったいないですもんね」
「ですね。時間的には、そろそろ流れ星が――あっ、見えましたよ!」
「え? 見えなか……あっ、また流れましたね。今度は見えました」
ジークさんの声に導かれて空を見ると、ポツポツと流れ星が見え始めていた。俺の居た世界では流星群は、多くても一時間で数十個ぐらいという感じみたいだが、この世界ではどうなのだろう?
「ジークさん、ちなみに流れ星って一時間でどのぐらい見えるんですか?」
「数えたことはありませんが、数百とかもっと多いかもしれません」
「そんなにたくさん見えるんですね。それは凄そう……というか、もうすでに結構流れてますね」
この世界の流星群は、一種の世界のシステム……流れ星が隕石となって振ってきたり、俺の居た世界のように彗星が要因というわけでもない。
例えるなら天候の一種のようなものかもしれない。一定周期で発生する珍しい天候が流星群という表現が適切かもしれないが、ともかく俺の居た世界の流星群とは根本的なルールから違う。
現に夜空には次々と流れ星が見えており、たくさんの流れ星が見える幻想的な光景が広がっていた。
ある意味ではこういう光景も異世界ならではの景色と言えるかもしれないが、とにかく圧巻の光景である。星空に次々に大小の流れ星が流れており、言葉も出ないほどに圧倒された。
(快人さんがデートを楽しめるように、本日は流れ星を70%増量しておきました)
……気を使ってくれありがとうございます。おかげで凄い光景が見れて嬉しいですが……その、スーパーのお徳用パックみたいな言い方は、凄くいろいろ台無しになった気が……。
シリアス先輩「ぐあぁぁぁぁ!? ま、まてまて、飛ばしすぎ……久しぶりだからもう少し段階を……はっ!? 手先が金平糖に!?」
???「金平糖……まぁ、星っぽく見えなくもないからですかね? あと、余談ですけど今回の流星群が例年より明らかに流れ星が多くて、天文学者とかは頭抱えてたみたいですね」




