広がる余波㉖
アルクレシア帝国から自宅に帰ってくると、もうそろそろ日が沈む時間帯だった。マリーさんとの買い物とカフェが楽しかったので、結構時間が経過してしまった。
マリーさんが俺より年下で、葵ちゃんや陽菜ちゃんに近い年齢という事もあって、ついついいろいろ買ってあげたくなるというか世話を焼きたくなってしまう。
貴族令嬢ではあっても、いい意味で貴族っぽくなく庶民的なところがあるので、個人的な感覚としてはかなり接しやすい気がする。
まぁ、なんにせよ楽しかったし、喜んでもらえたようなのでよかった。茜さんの話で、リッチ男爵家領関連で、意図してはいなかったとはいえいろいろ厄介事を引き寄せちゃったみたいだし、いい気分転換になったようでマリーさんも楽しそうだったのは本当によかった。
綺麗な服とかに憧れがあったりということも言っていたし、マリーさんは結構買い物好きなのかもしれない。金銭的な余裕が無いので高級店街に行く機会はあまりないみたいだが、色々大変だろうしまた今度息抜きも兼ねて高級店街とかに連れて行くのもいいかもしれない。
「カイトさん、お帰りなさい」
「ジークさん? こんばんは、仕事上がりですか?」
「ええ、今日は夕方までの勤務だったので、ちょうど終わったところですね。それで、カイトさんが帰ってくるのが見えたので……」
「なるほど……俺はこれから、夕食前に軽くベルの散歩に行くつもりですが、ジークさんも一緒に行きませんか?」
ジークさんは丁度仕事が終わったタイミングだったみたいなので、せっかくこのタイミングで会えたのだからとベルの散歩に誘ってみた。
ベルはプライドが高いがよくお世話をしてくれるジークさんには懐いており、ジークさんを背に乗せるのは嫌がらないので一緒に散歩に行くのも問題ない。
まぁ、今日は思ったより帰りが遅くなったので、あまり長くではなく本当に軽く散歩をする感じになるが……。
「いいですね。ですが、それなら夕食後にしませんか?」
「夕食後にですか?」
「ええ、実は今日は流星群が見える日らしいので、少し足を延ばして首都南西の丘まで行けば、綺麗に見えそうですから、よろしければ一緒に見に行きませんか?」
「いいですね、楽しそうですし、ベルも遠出できる方が喜びますね」
シロさん曰くこの世界に宇宙というものは存在せず、夜空の星や月というのは一種の世界のシステムとして存在しているという話だ。
ただ、まったく毎晩同じ星空というわけではなく、一定周期で流星群が見えたり、日食や月食があったりするので、本当に俺が居た世界の夜空と変わらない感じである。
「せっかくですし、お酒でも持って行きますか? 星を見ながら軽くお酒を飲むのもいいですよね」
「そうですね。それなら、前にカイトさんがリグフォレシアの私の実家に来た際に一緒に乗んだリプルのお酒があるので、アレを持って行きましょう」
「楽しみですね。じゃあ、ちょっとベルに説明してきますね。時間的には夕食後すぐでいいんですかね?」
「そうですね。夕食後30分ぐらい経って出れば、丘に着くころにはちょうどいい時間になっているかと思います」
思わぬところで楽しそうな予定が追加され、ジークさんと軽く打ち合わせをして、ベルに説明をしてから自室に戻る。
またすぐ出かけるので部屋着には着替えず、そのままで問題なさそうだ。特に追加で持って行くものもないし、大抵のものはマジックボックスに入っているので大丈夫だ。
そう考えていると、不意に部屋の壁の一部がスライドし……梯子のようなものが出てきて、それを上ってアリスが現れた。
「カイトさん、流星群を見に行くならいいものをあげますよ」
「……いやその前に、初めて見たその梯子がいったいどこに繋がってるのかを聞きたい」
「……まぁ、どこかですよ。そんなことより、コレです!」
「やっぱ一回、カナーリスさんにクリアリングしてもらうべきか……それで、なにを……うん? ワイン?」
呆れつつアリスが差し出してきたものを受け取ると、結構高そうなワインの瓶だった。流星群を見に行って、ジークさんと一緒に飲めってことかな? けどなんでまた唐突にワインを?
「いや、私が飲むつもりだったんすけど……愉悦決めてる場合じゃなくなってきたので、ジークさんと飲んでください」
「う、うん? いや、まぁ、ワインはありがたいけど……なんかあったのか?」
「ん~あったと言えばあったというか、これからあると言えばあるというか……まぁ、気にしないでください。変にカイトさんが動くとさらに追加でなにか起こる可能性もあるので、気にしない感じで」
「いや、それほぼ俺が原因って言ってるようなものじゃ……」
「まぁ、大丈夫です。今回のK案件は私にとっては情報操作程度で済む楽な部類なので、気にせずジークさんとのデートを楽しんでくださいな~」
そう言ってアリスは姿を消した。う、う~ん、気にはなるが、アリスが大丈夫だというなら、気にしないほうがいいか……。
胃痛の悪魔「油断、危機感の欠如……それは、果たして、胃痛戦士だけに言えることなのか?」
シリアス先輩「なっ、なにを……」
●痛の悪魔「お前だよ、シリアス先輩。傍観者気取りで、のんびり楽しくやれているつもりか? 気を……抜き過ぎなんじゃないか?」
シリアス先輩「え? わ、私?」
●●の悪魔「順番が、回ってきたと……そういうことさ……甘い夢は終わり……いや、甘い夢はむしろ、これから始まるのか……」
シリアス先輩「な、名前が……変わっていく……」
砂●の悪魔「理解できないか? 理解したくないのか? それとも……」
シリアス先輩「あっ、あぁ……そ、そんな……」
砂糖の悪魔「まさか……まだ、『胃痛回だから自分は大丈夫』なんて、ハニートーストよりも甘い幻想を抱いてるんじゃないだろうな?」
シリアス先輩「ぎゃぁぁぁぁ!? でたぁぁぁぁ!?」




