広がる余波㉔
神域から上層に戻ったライフは即座に行動を開始した。神族は思念神オモイカネの権能により、任意の相手を思い浮かべるだけで念話による通信を行うことが出来るため、他の神族に連絡を行うことは簡単だ。
まぁ、これに関しては受信側が拒否することもできる為、以前のサボっていた際のフェイトなどは無視をしていたが……。
(思念神、聞こえますか? 直ちに全神族に念話を繋いでください)
(畏まりました)
ただこれはあくまで思念の権能が及ぶ範囲なので、普段はオモイカネが常時権能を展開している神界でしか行えない連絡方法であり、神界から人界の下級神への連絡を行ったり、複数の相手と同時に念話を行う場合には、一度オモイカネに連絡を行って権能の範囲を拡大してもらう必要がある。
(全神族に通達します。いまから15分後に、私の神殿において緊急会議を行います。権能が植物及び果実の生成に影響を及ぼす可能性が僅かででもある者、農作業などを含めた植物に知識や経験がある者は、私の神殿に集合してください。これは、シャローヴァナル様の要望に関わるものであり、他の業務より優先されます。また、あくまでこれは大まかな方針を決めるための話し合いです。方針が決定した後は、様々な視点からの意見も欲しいため、全神族に改めて通達して意見を募りますので、先の条件に該当しない者も心構えはしておいてください)
シャローヴァナルから一任され、期待しているとも言われた黄金リプルの制作において、ライフは一切の妥協をするつもりはなかった。
己の知識だけでは足りぬ部分や、見落としもあり得る為、他の神族からも広く意見を募るつもりだ。
念話での伝達を行った後で、ライフが己の神殿に戻ると……そこにはすでにフェイトとクロノアの姿があった。
「さすが、早いですね。運命神、時空神」
「シャローヴァナル様の要望って言われると、そりゃね……というか、生命神滅茶苦茶やる気が溢れてない? 目地から半端じゃないよ」
「こうしてみるだけでも、覚悟が伝わってくるな……」
フェイトが告げた様に、現在のライフはやる気に満ち溢れている。普段はほとんど閉じている状態の目もハッキリと開き、赤い目に炎でも見えるのではないかというほどのギラギラした光を宿らせており、誰の目に見てもとてつもないやる気が見て取れる状態だった。
「ええ、貴女たちには先に大まかな内容を伝えておきます。先程シャローヴァナル様に呼ばれ……」
同じ最高神であるフェイトとクロノアに対しては、話し合いの前に詳細を伝えておくことにして、先ほど神域であったことを説明する。
「あ~なるほど、そりゃやる気もでるよね」
「シャローヴァナル様に期待され、名まで呼んでいただいたとあれば、熱が籠るのも必然だな。少し羨ましいという気持ちもあるが、それ以上に生命神の気持ちは理解できる。我も全力で力になろう」
「もちろん私も……けど、その感じで行くなら、加護とかをアレコレするよりはこっちで黄金リプルの木を作って、リッチ男爵に渡す感じがよさそうだよね。そうすれば希少性も維持できるだろうし、生命神にとっても得意分野だろうしね」
ライフの気持ちは神族であれば心の底から共感できるものであり、フェイトもクロノアもすぐに協力を約束した。そして、フェイトが普段の面倒くさがりの様子からは想像できないほどに素早く提案を口にし、その言葉にライフも軽く頷く。
「ええ、私もその方向で考えていました。植物も生命、新たな植物を作り出すことには私の権能が大いに活躍するでしょう。ただ視野が狭くなってしまうのは避けたいです。これが最善であると、私が思っていても別の視点から見れば穴がある可能性もある。なので、可能な限り広く意見を募りたいところです」
「いい考えだ。試作も行うべきだろう。なに、我の時の権能があれば、試行錯誤を繰り返すのも容易い。シャローヴァナル様にご満足いただける最高の品を作ろう」
「あとは、農業神とか植物神とか、その辺はさっきの呼び出しで来るだろうから問題ないとして……リプルパイにした時のことを考えると、調理神とか食神の意見も聞きたいとこだよね」
神界においてライフの招集により、神族たちが動き出していた頃……快人の家の地下にあるイリスのバーでは、カウンターでワインを飲もうとしていたアリスが、ピタッと手を止めた。
「……え? マジっすか……そっちが動くんすか……うわぁ」
「うん? どうした?」
「あ~いや……」
「なぜ、ワインをしまう?」
「……いや、さすがに愉悦より可哀そうって気持ちが勝ったので……ちょいとフォローしてあげますか……いや、さきにマキナのアホが動かないように釘刺すところからですね」
飲もうとしていたワインを片付けた後で、アリスはどこか呆れた様子で呟き、その凄まじい頭脳で高速でこれからの展開を考え、マリーやリッチ男爵のフォローを手配し始めた。
シリアス先輩「さすがのアリスでも、憐れみが勝った!?」




