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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした  作者: 灯台


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広がる余波⑬



 時は少し遡り、リッチ男爵と親子共々方針気味に神殿でエルンの話を聞いていたマリーだったが、正直話を聞きながらもあまりにも現実味がなく理解が追い付いてはいなかった。

 もちろん混乱しているのはマリーだけではない。加護を強化されれば恩恵は非常に大きいのだが、それはすなわちリッチ男爵家領は神族と特別に交流が深いと周囲に宣言するようなものであり、今後の事を思えばリッチ男爵は頭を抱えたかった。


 しかし、これは提案ではなく決定事項であり、神界の……ひいては最高神ライフの厚意ともいえるものであり、拒否という選択肢は存在しない。神族相手に拒否などできるわけがないというのもそうだが、仮に選択肢があったとしても拒否なんてしようものなら他の貴族から神界を蔑ろにしているだとか、様々な理由でタコ殴りになるのは間違いないため、どちらにせよ結果は変わらなかっただろう。


「範囲は、地図上のここまでで問題ありませんね? 私の加護を強化することにより収穫量なども大きく上昇するでしょう」

「は、はは、はい。問題ありません」


 とりあえず他の貴族家との付き合いだとか、社交的な面を考慮しなければリッチ男爵家にとっては得しかないのは間違いない。

 現状でも割とリプルは余り気味なのだが、最近の流れを考えると売り上げが増えそうだというのはリッチ男爵やマリーであっても予想ができ、収穫量などが増えるのは今後を思えばありがたいとも言えた……今後を考えたくないという思いも、非常に大きかったが……。


「ああそれと、加護というわけではありませんが……今回の件に大地神様も協力してくださるそうで、私が加護の強化を行った範囲の土壌に少々手を加えてくださるそうです。ただ加護ではないため、状態が維持されたりというわけではなく、土の状態はその後の環境の変化などによって変わる可能性もあるので注意してください」

「は、はひっ……」


 マリーにとって本当に救いだったのは、この場に父親であるリッチ男爵が居てくれたことだろう。あくまでリッチ男爵家の当主は父であり、この場におけるエルンとのやり取りをマリーが担当することはないため、そこだけは本当に助かっていた。

 リッチ男爵の恐縮具合をみると、己が跡取りでなくてよかったと、そんな考えさえ浮かんでいた。


 そのまましばらく細かな部分……加護の強化を行うタイミングなどを話し合って、いちおう話は終了した。するとそのタイミングで、エルンはマリーの方を向いて話しかけてきた。


「……話は変わるのですが、マリーさんは神族の祝福を受けていませんね?」

「あ、は、はい。も、申し訳ございません。そ、そこまでの金銭的な余裕がなく……」

「ああいえ、咎めているのではありません。受けることを強制するようなものではありませんからね……ただ、ミヤマさんの友人である貴女が急な病などにかかってしまってはいけません。下級神を含めた神族の祝福には、病を防止する効果がありますので、私が仮祝福を行いましょう」

「はぇ?」

「そ、それでしたら、正規の金額を……」


 仮祝福を行うというエルンにマリーが呆然とした表情を浮かべ、リッチ男爵が正規の金額を支払うと言いかけるが、エルンは首を横に振る。


「いえ、私から提案をしておきながら金銭を受け取っては私の沽券に関わります。金銭は不要です……マリーさん、貴方に豊穣の祝福を……」

「ッ!? あ、ありがとうございます。こ、ここ、光栄です」

「今後も貴女に関しては仮祝福の金銭は必要ありませんので、新年の際には他に仮祝福を受ける方たちと共にいらっしゃってください」


 改めて快人の友人という立場の凄まじさを実感しつつ、まるで激流に飲まれるかのように状況に流されながらリッチ男爵とマリーの神殿訪問は終わり、ふたりは疲れ果てた表情で神殿の外に出た。

 本来ならばそのまま来る際に話していた通り、マリーのよそ行き用の服を買うために服屋に向かうはずだったが……神殿を出たところで、豪華な馬車が止まっているのが目に付いた。


「……アレは、ハミルトン侯爵家の?」


 馬車に刻まれている家紋を見てリッチ男爵が首をかしげると同時に、馬車の前に待機していたメイドがリッチ男爵とマリーに近付き丁重な礼をして口を開く。


「旦那様が、今回の件と今後について是非お話がしたいと申されております」

「あ、ああ、なるほど……ハミルトン侯爵には早めに相談したかったので、助かるよ」


 どうやらリッチ男爵とマリーが豊穣の神殿に招待されたことを把握していたハミルトン侯爵が、話をするために迎えをよこしてきたらしい。リッチ男爵としても、己の手には余る……経験の浅い己では今後の対策等も満足にできないと考えていたので、ハミルトン侯爵に相談できるのはありがたかった。


 だがそこでふと、リッチ男爵は隣のマリーを見た。エルンとの話はかなりの緊張だったらしく、明らかに精神的に疲れている様子を見て、親としての気遣いが顔を出す。


「……ただ、申し訳ない。娘は疲れもあるので、話の場には私だけで向かわせてもらう。マリー、私はハミルトン侯爵と話をしてくるから、お前は貴族用の店が並ぶ通りに服を買いに行くといい。金は渡しておく」

「わ、分かりました。ありがとうございます、お父様」

「それでしたら、店の並ぶ通りまでは馬車でお送りいたします。護衛の手配なども致しましょうか?」

「あ、いえ、私は普段から護衛とかは付いていないので大丈夫です」


 貧乏貴族であるリッチ男爵家に個別に護衛を付けるほどの財力は無く、長男や長女を除いた下の子供たちは皆ある程度自分の身は自分で守れる程度の鍛錬は行っており、マリーもいざという時に走って逃げることぐらいは問題ない。

 そもそも、今回行くのは高級店の並ぶ通りであり、治安もいいため護衛は必要ではない。


「それではマリー、話が終わればハミングバードで連絡する。服を買い終わって時間があるようなら、カフェにでも行って甘いものでも食べるといい。お金は大目に渡しておくから、気にせず使い切るつもりで羽を伸ばすといい」

「お父様……ありがとうございます」


 かくしてマリーは、単独で高級店の立ち並ぶ通りに服を買いに行くこととなったのだった。




シリアス先輩「なるほど、娘がこれ以上の胃痛にならないように気遣う親心……とても美しい、感動的だ……だが、その結果として『知り合いとの偶然エンカ率100%』とかいう胃痛の化け物がうろついてる首都に、娘をひとりで放り出す結果になったと……皮肉な話だ」

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― 新着の感想 ―
みんな善意でしかやってないのに…w
マリーたん、うしろうしろー!(胃痛の悪魔がー!)
更新お疲れ様です!連続で読みました! 快人さん続けて本を確認するとメイドシリーズに関する本が思った以上にあったぞ汗) 後半のメイドのラインナップの内辞典みたいな本もあったりと凄い事になってるな 快人さ…
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