広がる余波⑪
香織さんの美味しいシチューをいただいて、そのあとで茜さんと香織さんとのんびり食後のお茶と雑談を楽しんでから、解散という形になった。
「快人は、真っ直ぐシンフォニアに帰るんか?」
「ああいえ、俺はちょっとアルクレシア帝国の首都によっていこうかなぁって思ってます」
「アルクレシア帝国の首都? 今日なにかあるの?」
茜さんの質問に答えると、香織さんが不思議そうに首をかしげながら聞き返してきた。
「いや、用事とかじゃないんですよ。前にアイシスさんに、アルクレシア帝国に凄く大きな書店があるって教えてもらって、行きたいなぁと思ってたんで、せっかく出てきたんでついでに寄っていこうかなぁって。転移魔法具あるので首都にはすぐ行けますしね」
「ああ、中央通りにある滅茶苦茶デカい店やな。ウチは行ったことないけど、雑誌から古書までなんでも置いてるらしいな」
「ええ、時間にも余裕がありますし、のんびり楽しんでこようかと……」
いつも行く本屋とかには置いてない本とかもありそうだし、時間的な余裕もあるので丁度いい。納得したように頷く茜さんと香織さんに軽く挨拶をしてから、俺は転移魔法具を起動させてアルクレシア帝国首都に向かった。
目的の本屋は、茜さんが滅茶苦茶デカいというだけあって、ある程度近くまで行ったらすぐに分かった。俺が普段行く書店の何倍あるのか分からないほどの大きさであり、中も広々としていてどこを見ても本がビッシリ、凄く大きな図書館のようにも見えるが、そこは書店だけあっていろいろコーナー分けされていたり、人気の本は平積みされていたりするので、雰囲気は違う。
とりあえず雑誌とかが置いてあるコーナーに来てみたが、これもまたかなり広く、全然見たことが無い雑誌とかもかなりたくさん置いてあった。
面白そうなのは無いものかと探していると、ふと表紙に写真が使われている雑誌がいくつも置いてあるコーナーを見つけた。
……なるほど、ファッション誌か……確かにファッション誌と写真の相性は抜群である。まだまだ広まっている最中はと言え、記録魔法具による写真が出版業界にもたらした影響は凄まじい。
しかし、こういうファッション誌にしてみても、やはり俺の居た世界とは色々な違いが……。
『月刊アンデット』
……なんか、ゼクスさんがお洒落な礼服っぽい服を着て表紙に映ってる雑誌を見つけてしまった。いや、ゼクスさんはアンデット界隈で超有名なイケオジらしいし、こういう扱いでも不思議ではないのだが……な、なんとも凄い光景である。
なんなら、表紙から読み取れる情報だとゼクスさんは14ページぐらいに渡って特集が組まれているみたいだ。表紙にもなんか『骨だからこそ、反骨心を持て』とか、煽りが書いてある。
く、くそっ……見てぇ、中が凄く気になるが……駄目だ。それは本当によくないぞ。だっていま俺は、ファッション誌のとしての目的じゃなくて、お笑い的な面白さを求めて中を見たいと思ってしまっている。それは駄目だ。
自分に分からない分野だからって、ネタとして楽しむようなのは本当に失礼なことだ。気にはなる。気にはなるけど……ここはグッと我慢して……。
「あ、ちなみにこれ中のグラビアには『若輩者とは、骨密度が違う!』って煽りが入ってますよ。ガイコツ界隈では骨密度がイケメンの条件なんすかね?」
「ぶっ! やめろ馬鹿、変な情報を伝えてくるんじゃない……」
「なんと今回の写真には、肋骨チラ見せセクシーカットもあるそうです」
「肋骨チラ見せセクシーカット!? アンデット界隈だと肋骨がセクシーなのか……というか、マジでやめろ、それ以上情報を伝えてくるな」
アリスが本当に余計なことを言ってきたので、思わず吹き出してしまった。本当にやめろ、買いたくなっちゃうだろうが!!
駄目だぞ、宮間快人、友人としてゼクスさんに顔向けできなくなるようなことは止めるんだ。鋼の精神で、他の雑誌に……。
『今年くるミノタウロス族のムキカワコーデ』
……なんだこのコーナー、魔境かなにかか? アンデット族向けのファッション誌の横には、牛の顔で露出高めの服を着たムキムキの……おそらく女性と思わしきミノタウロスが三人でポーズを決めている雑誌があった。
そしてムキカワとは? ムキムキで可愛いということだろうか? 俺の目から見るとムキムキで逞しいという印象しかないし、文字が無ければボディビルのポスターかと思うよう感じだが、ミノタウロス界隈では違うのだろうか……種族の違いを感じる。
というか、アンデット種はまだ結構幅広いから分かるんだけど、ミノタウロス族は専用の雑誌が売れるほどに数が多いのだろうか?
……あ、いや、よく表紙を見るとサイクロプス族だとか、オーク族だとかって文字も見えるので、いろんな種族を纏めたファッション誌っぽい感じだ。
そういえば、余談ではあるがニアさんの側近であるミノタウロスのミナさんこと、ミナガルドさんはミノタウロス界隈では絶世の美女として通っているらしいという話をチラッと聞いた覚えがある。
これも、アンデット界隈並みによく分からないのだが……でもまぁ、ミナさんに関してはある程度納得感もある。
声が滅茶苦茶高くて綺麗だし、仕草もひとつひとつ上品なので、たしかに言われてみれば上品さとか高貴さがあって、なるほどミノタウロス界隈ではそうなのかと、納得できる部分もある。
ゼクスさんの骨密度とか、骨の形とかの話はまったく分からないけど……。
ま、まぁ、とりあえず、流石巨大な書店だけあっていろいろな雑誌があるもんだ。
『月刊メイドファッション』
……やっぱ魔境か? このコーナー……。
シリアス先輩「メイドファッションってことは、他にもいろいろな種類のメイド関連の雑誌があるんだと予想できる不思議。そして、明らかにアインが関わっているであろうことも予想できるという」
???「まぁ、それもそうですけど……マリーさんたち、いま首都に居るんすよね?」
シリアス先輩「……あっ(察し)」




