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専用ブラシの購入⑱



 快人の言動は、ある意味では仕方のない勘違いともいえる。リリアは当主であるため除外するとして、現時点で快人が貴族令嬢と言って思い浮かべるのは、やはりエリスであり彼女が基準になるのも必然だ。

 だが、エリスとコーネリアでは立場が大きく違う。エリスは、侯爵家の次期当主であり幼少のころから才女として様々な分野で才覚を見せており、若くしていくつかの店舗を立ち上げたり、侯爵家が行う事業などにも関わっており、多くの権限と高い立場を持っている存在だ。


 対してコーネリアはあくまで伯爵家の長女であり、伯爵家を継ぐのは嫡子である兄であり、コーネリアに関してはどちらかと言えば政略結婚により嫁入りも想定した立場であり、あまり伯爵家の事業には関わっておらず権限も少ない。

 もちろん自身の家で行っている事業の内容などはある程度把握しているし、場合によっては意見やアイディアを出すこともあるが……少なくともシャロン商会などの経営にはほぼ関わっていない。

 ヴィクター商会に快人を案内したのも、あくまで快人と友人関係なのがコーネリア個人であるという理由からであり、実質的な傘下であるヴィクター商会に対しても特に権限などはない。


「なるほどのぅ、たしかに竜種に限った事ではないが、ブラシなどが肌に合わぬという者もおるな。専用のブラシを作成するというのは、よい考えと言えるのぅ」

「マグナウェルさんも専用ブラシが欲しかったり?」

「いや、ワシの体躯に合わせたブラシなんぞ現実的に作れんじゃろ。ワシは魔法を用いて綺麗にしておるが、鱗一枚一枚まで綺麗にするには、かなりの技量が必要じゃからできん者も多い。そういった者は、ブラシなどを使っておるな」


 現状のコーネリアにとって、快人とマグナウェルの会話は極めて恐ろしいものだった。特にマグナウェルが、魔物専用ブラシに一定の興味を抱いているのが恐ろしい。


(竜王……マグナウェル様自身はブラシを作ったりという気は無いようですが、よくない話の流れです。本当によくない流れ……あの、カイト様……覚えてますよね? ヴィクター商会は小規模の商会なんです。仮に竜王陣営からの大量発注などという事になると、とてつもないことになってしまうのですが……)


 竜王の配下には数千万という数の魔物が存在しており、その内のどの程度かは分からないが……王であるマグナウェルが興味を持った専用ブラシとなれば、欲しがる者も多いと容易に推測できる。

 だがそんな規模の発注に対応できるような余裕はヴィクター商会には無く、もし仮にそうなった場合はシャロン伯爵家が大きく予算組んで、商会の規模を大きくさせる必要が出てくる。

 それは間違いなくとてつもない利益をシャロン伯爵家にもたらすのだが……もし、この流れでそれが成立した場合……その案件の中心に誰が据えられるのかといえば……間違いなくコーネリアだろう。


「まだ俺も今日発注したばかりなんで受け取って無いですが、コーネリアさんの話ではかなりいいらしくて楽しみにしてます」

「ふむ、ならば是非受け取った暁には、使用感を聞いてみたいのぅ。良いようなら、ワシの配下でブラシなどを欲しがっておる者にも勧めよう」

「ああ、それはヴィクター商会の売上も上がりそうでいいですね」


 そして話は、コーネリアの危惧した方向に進んでいった。


(カイト様? カイト様っ!! マグナウェル様の陣営は、幻王陣営に次いで数が多いと言われておりまして……いえ、もちろんその全員が発注したりするわけでは無いですが、仮に100分の1の数であっても、とてつもない数になるのですが!?)


 もちろんあくまで快人が受け取った専用ブラシを使ってからの話であり、現時点でそういった発注があるわけではない。


(これ、もしですよ……もし、カイト様が専用ブラシを高く評価した場合……とてつもないことになってしまうのでは? そ、想像するだけで胃が……)


 その光景を想像するだけで胃が悲鳴を上げるようだったが、その直後にマグナウェルがコーネリアの方を向いて死刑宣告のような言葉を告げた。


「では仮に、ワシの配下でブラシを欲しがるものがおったら、コーネリア・シャロンに伝えよう……構わんか?」

「は、はひっ、畏まりました」


 叶うのなら、シャロン伯爵家の方に伝えて欲しい……伝えて欲しいのだが、現時点ではマグナウェルとも快人とも、ついでにニーズベルトやエインガナとも交流があるのはコーネリアのみであり、少なくともいまの段階ではシャロン伯爵家の方に振るわけにはいかない。


 そしてそれ以上に、六王であるマグナウェルが他に選択肢はないとはいえ直々にコーネリアに窓口になるように要請しているともいえるセリフであり、立場的に拒否できるようなものでもなかった。


 シャロン伯爵家長女コーネリア・シャロン……シャロン伯爵家の魔物関連分野における最高責任者となる未来が確定した瞬間だった。




シリアス先輩「利益はある。間違いなく利益は凄いし、いずれ政略結婚とかに使われるのかなぁ的な感じで明確に将来のポストとかが決まってなかったコーネリアにも、かなり高い地位が約束されたともいえる……ただし代償は、とてつもない胃痛である」

???「そして、カイトさんも商会関連とか事業関連とかにまったく詳しくないので、シンプルに『売上悪くて縮小したって言ってたし、売上が上がると喜ぶだろうなぁ』程度に考えてる感じでしょうね」

シリアス先輩「それ、快人の幸運補正が仕事してない? 快人がヴィクター商会とかの売上が上がればコーネリアが喜ぶだろうなぁ的なことを考えてるから、そっちの方向に話が進んでる的な」

???「いや、この時点ではまだですね。あくまでマグナウェルさんとかの会話の範疇なので……補正が仕事するとしたら、実際に竜王配下が発注してからでしょう……たぶん、竜王配下内でブームが来るかと……」

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― 新着の感想 ―
シリアス先輩? コーネリア嬢的にはめっちゃシリアスな展開でお話しが進行してませんかね?w
冥王様ー!大至急メギドさんに恋愛の教育とカイト君に経済の説教してー!
まだ、楽団の演奏聴く前から、コーネリアさんの胃のダメージが甚大だな…。この後更に追撃があるかと考えると恐ろしいな…。カイトさんの周囲に与える影響力……。
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