専用ブラシの購入⑪
明日は出張につき更新はお休みします。
偶然な遭遇ではあったが、せっかくの機会だからという事でフレアさんとエインガナさんも相席することとなり、席を移動して俺とコーネリアさんが並びで座り、向かい合う形でフレアさんとエインガナさんが座る形になった。
相手が六王配下幹部という事もあってコーネリアさんはかなり緊張してる様子なので、会話に関してはしっかりフォローしよう。
そう思っていると、フレアさんがコーネリアさんを見てどこかしみじみした様子で呟いた。
「……しかし、コーネリア・シャロンか……懐かしい名前だな」
「え? フレアさんは、コーネリアさんのことを知ってるんですか?」
「ああいや、彼女ではない。数百年前のシャロン伯爵家の当主が同じ名だったのだ。恐らくではあるが、コーネリア殿の名前はそこから名付けられたのではないだろうか?」
「仰る通りです。私の名前は、シャロン伯爵家中興の祖と言われる六代目当主コーネリア・シャロンにあやかる形で付けられたものです」
「やはりそうか、挑戦心に溢れる素晴らしい女傑だった」
どうやらシャロン伯爵家の昔の当主の名前がコーネリアさんと同じらしい。確かにそういう先祖にあやかって同じ名前を付けるというのは聞く話だし、そういった経緯で名付けられたのは不思議ではない。
ただ、フレアさんが明確に名前を憶えているという事は結構凄い人物だったのだろうか? そう思っていると、俺の疑問を察したのかコーネリアさんがこちらを向いて説明してくれた。
「カイト様に説明いたしますと、六代目当主は商人としての気質が非常に強く、いまのシャロン伯爵家の基礎を作り上げたといっていい人物なんです。道中にお話ししたこの商業都市の特例を作ったのも、六代目当主ですね」
「なるほど、凄い人だったんですか?」
「ええ、当時は落ち目の子爵家だったシャロン家を伯爵位に押し上げた方で、歴代当主の中でも一番名が知れているといっていい人物です」
来る時に聞いた当時としては革新的だった施策を打ち出したのも、六代目当主らしく子爵家から伯爵家に陞爵するぐらいの功績を上げた凄い人だったみたいだ。
もしかしたらシャロン商会を立ち上げたのもその人だったりするのかもしれない。
「熱意と挑戦心に溢れる人物でな。貴族家当主の身でありながら、魔界の各地に直接足を運んで様々な商談を成立させていたりと、個人的に好感の持てる人物だった。メギド様も気に入っておられて『アルクレシア帝国貴族の中では一番気に入ってる』と評しておられたぐらいだ」
「メギドさんって貴族は結構嫌い気味ですもんね。リリアさんのことはかなり気に入ってましたが……」
「貴族的な腹芸などは、メギド様が最も嫌うもののひとつだからな……さすがにリリア殿ほど気に入ってるわけではないだろうが、高評価であったのは間違いない」
メギドさんは、裏でコソコソ足を引っ張ったりだのが嫌いだし、貴族に関しては全般的に割と嫌い気味だ。ただ、貴族は全部嫌いというわけではない。
リリアさんのことは貴族家の当主じゃなければ配下にしたかったと口にするぐらい気に入ってるし、前にエリスさんのことを軽く話したときも「ハミルトン侯爵家はアルクレシア帝国貴族の中じゃマシな方」と口にしていたので、ハミルトン侯爵家もある程度は評価しているっぽい。
まぁ、当主が武芸に秀でてるだとか、いろいろ意欲的に挑戦する感じの熱意があれば好きな感じだろう。そして、フレアさんとメギドさんが気に入っているという事は、そういう挑戦心に溢れる熱い方だったんだと思う。
「じゃあ、メギドさんがコーネリアさんと会ったら、フレアさんと同じように名前が同じって気付くかもしれないですね」
「ひぇ……あ、そ、それは、大丈夫でしょうか? 六代目当主と私では性格もかなり違いますし……」
「戦友の友人であるなら問題ないであろう」
「ミヤマカイトさんの友人であれば、心配する必要はないかと……」
気に入っている人物と同じ名前の自分を見て、名前を穢されているとかそんな風に思われたらと不安げだったコーネリアさんだったが、フレアさんとエインガナさんが即答で問題ないと同時に告げた。
「えっと……そうなんですか?」
「うむ、先にあげたコーネリア・シャロンやリリア殿と戦友では、メギド様の気に入り具合が比較にならん。メギド様は戦友が居るだけでいつも上機嫌といっていい故、戦友の友人であるならまったく問題は無いだろう」
「実際、少し前にメギド様とお話しした際にも、ミヤマカイトさんが高く評価しているエリス・ディア・ハミルトン侯爵令嬢に興味を持っているようで、一度話してみたいと口にしていましたね」
「……本当に、カイト様の影響力に圧倒されます」
俺の友人ならメギドさん的には、相手が貴族であっても問題ない感じか……じゃあもし機会とかあれば、エリスさんとかを紹介しても問題は無いわけか……いや、別に紹介する予定はないのだが……。
シリアス先輩「お分かりいただけただろうか? サラッと、エリスに胃痛フラグが立ったぞ……」