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専用ブラシの購入⑩



 立ち寄ったカフェに現れたニーズベルトとエインガナ、快人の元に近づいてくるふたりを見ながらコーネリアは遠い目をしつつ思考を巡らせていた。


(……巨竜の羽ばたきとは聞きました。聞きましたが……本当に巨竜と呼べる方々と遭遇するなんて聞いてないです。ま、間違いなく四大魔竜のニーズベルト様とエインガナ様……ど、どうすれば……)


 当たり前ではあるが、伯爵家の長女に過ぎないコーネリアと六王幹部であるニーズベルトとエインガナでは立場が大きく違う。もちろん、コーネリアが下であるため、コーネリアの方から迂闊に声をかけたり挨拶をしたりという事はできない。

 そもそも竜王マグナウェルはかつて友好条約の後で、人族に飛竜を御する術……現在で言うところの飛竜便の原点となる技術などを提供し、人界の物流に大きな革命をもたらしたこともあって、いまも多くの商人が商売の神のように信仰する存在であり、大きな商会を持つシャロン伯爵家にとっても極めて重要な相手だ。


 竜王陣営に不興を買えば、商売人としてはほぼ死んだも同然といえるほどであり、そんな竜王陣営の幹部がふたりも居るとなっては緊張で身を固くするのも必然だった。

 しかし、悲しいかな彼女から動くことはできないので、この場では快人たちの行動待ちになってしまう。


「こんなところで会うなんて、奇遇ですね」

「うむ。まさか戦友(とも)もこの街に来ていたとは、喜ばしい偶然……む? 失礼、同席者が居たのか、邪魔してしまったならすまない」

「ど、どうぞ、お気になさらず」


 笑顔を浮かべながら近づいてきたニーズベルトは、快人の陰になっていて見えなかったコーネリアを見つけ軽く謝罪の言葉を口にする。

 その謝罪はコーネリアに向けられたものだったので、緊張で背筋を伸ばしつつもコーネリアは簡潔に言葉を返す。


「……誕生日パーティなどでは見た覚えのない方ですね。ミヤマカイトさん、そちらの方は?」


 ニーズベルトとコーネリアのやり取りを見て、エインガナが初めて見るコーネリアが気になった様子で快人に尋ねた瞬間、コーネリアの緊張は最高潮に達した。


(……か、カイト様……お願いします。どうか、どうかご慈悲を……この状況でカイト様の受け答えには、何種類か想定ができます。私のことを『一緒に出掛けている友人』などと言う風に、簡潔に伝えてください! それなら、まだ……どうか……)


 コーネリアはいままさに分水嶺といえる状況にあった。なお、コーネリア自身には選択肢のない分水嶺であり、快人の言葉にすべてがかかっているといっていい。

 ここで快人が、コーネリアを簡潔に友人だとだけ伝えてくれれば、コーネリアはニーズベルトやエインガナに対して軽く会釈を行い、あとは快人との会話を邪魔しないように待つことが出来る。

 だが、快人の回答次第では大きく状況は変わる。どうか、無難な形で済むようにと願うコーネリアであったが、いままでの胃痛被害者がそうであるように、その願いが届くことは無かった。


「ああ、ここで会ったのもなにかの縁ですし『紹介します』ね。こちらは、俺の友人で伯爵令嬢のコーネリアさんです」


 かくして願いは届かず、コーネリアは快人に紹介された。これは非常に重要というか、これはすなわち、快人が間接的に己の立場を保障として、ニーズベルトとエインガナに対してコーネリアが挨拶を行うことを許可したに等しい。

 しかもオマケとばかりにしっかり「伯爵令嬢」と付け加えたので、家名も名乗っていいと言われたに等しい……もちろん快人が、そこまで深く考えて言ったわけではないのだが……。


「偉大なる天竜様、海竜様にご挨拶申し上げます。アルクレシア帝国シャロン伯爵家の長女、コーネリア・シャロンと申します」

「ふむ、戦友(とも)の友人とあっては、我も無礼な対応はできんな。竜王配下幹部四大魔竜の一角、フレアベル・ニーズベルトだ。マグナウェル様にいただいたニーズベルトの名で呼んでもらいたい。今後ともよろしく頼む、コーネリア殿」

「では、私も……同じく竜王配下幹部四大魔竜の一角、アクアリア・エインガナと申します。私もニーズベルトと同じく、エインガナの名でお呼びください。今日の出会いが、よき交流に繋がることを願います」

「こ、光栄です」


 正直、コーネリアは戦慄していた。もちろん、エリスからある程度話は聞いていた……だが、初対面の六王幹部がかなり好意的な自己紹介を返してくれ、さらにどちらも今後の交流を匂わせるような言葉まで口にするという高評価ぶりである。


(エ、エリス様に聞いてはいました……こ、これほどなのですか? カイト様の友人というだけで、これほどまでに……ほ、本当になんて影響力……)


 実際のところ、快人の友人というはかなり信用に値する立場である。快人自身が人を見定める目に優れているというのもあるのだが、それ以上に快人と友人であるという事はある種人柄などが保証されているともいえる状態だ。

 理由は単純で、性格に難があったり快人との交流を悪用しようとしていたりするものであれば……早々にアリスなどによって処理されているため、快人との友人関係を維持できているという事は少なくとも善人であり、ある程度以上に信頼できる相手という証明にも繋がる。


 まぁ、もちろん、初対面の四大魔竜に好意的に接してもらえるという好待遇かつ……カフェで他にもそこそこ人がいるという状態であるコーネリアは、胃の痛みをしっかりと感じていた。


 ……まだこの先に、六王ふたりとの遭遇が待ち構えているとは夢にも思わずに……。




シリアス先輩「ああそうか、悪人や欲深いやつの場合はアリスとかヤベェ神とかが早々に消すから、快人の友人ってだけで善人である証明になるのか……」

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― 新着の感想 ―
逆にこの排除されたヤツらがどうなるのか、こうなると一度みてみたい気がするわー
コーネリアさんの警護のメイドさん…必死になって気配絶っているだろうな…。「私は空気……」っ言い聞かせながら…。それでも…4大魔竜とか六王レベルだとすぐに察知されるけど…。
安心安全のGODセキュリティついてますからね なんなら世界改編できる方々がいっぱい居られる 目に見えてる巨龍は確定としてもうワンポイントありそうな予感はしてる 一体誰と会ってしまうのか
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