専用ブラシの購入⑦
やってきたヴィクター商会で、商会長と魔物学者の方にベルの毛やリンとセラの鱗を見せたが、かなり驚かせてしまったように思う。
まぁ、世界樹の果実を食べていると聞けば無理もない話ではある。かといって、専門家の質問に変に嘘を付いて専用ブラシ作成に影響があっても困るので、聞かれたことは正直に回答していった。
ちなみに世界樹の果実に関しては、いちおうセラも食べているのだが……セラは単にリンの真似がしたいだけなのと、セラがかなり小食なので一日一個ではなく、一日少量だけ食べてる感じである。
セラというか、レインボードラゴンは翼から空気中の魔力を吸収して栄養に変えるため、特殊個体とか関係なく小食という話で、成体のレインボードラゴンでも一日の食事は木の実を二つ三つ食べるだけらしい。
セラもその例に漏れず小食であり、世界樹の果実をまるごと食べるのはほぼ無理なので、世界樹の果実のジュースを改良したスムージーっぽい餌を飲んでいる感じだ。
セラとしてはリンと同じように丸ごとひとつ食べたいみたいなのだが、実際に世界樹の果実をあげても、二口程食べるとお腹いっぱいになってしまうので、なんだかんだでスムージーが餌として適している。
「ど、どれも、大変素晴らしい魔物のようで感嘆しております。制作に問題はなさそうなので、素材や長さ、ブラシの形状などを選んでいただきます。こちらにカタログをご用意していますので、ご確認ください」
「あ、結構ブラシの材質とか硬さとかいろいろ選べる感じですかね?」
「ええ、お客様のご要望を可能な限り再現できる用意がございます。とはいえ、なかなか組み合わせを選ぶのは難しいと思いますので、こういった感じがいいといった漠然としたご要望をいただけたら、我々からご提案させていただきます」
「なるほど……じゃあ、全種類すべての組み合わせをひとつずつお願いします」
「ッ!?」
もちろんベルやリンやセラにある程度適したブラシというのは想像できるが、それ以外のブラシも使ってみたら意外とよかったみたいなパターンもあると思うので、叶うのならすべて試してみたい。
「ぜ、全種類、すべての組み合わせでございますか……」
「はい。あっ、もしかして毛とか鱗が足りなかったりしますか?」
「ああいえ、毛や鱗をご用意いただいたのは、それぞれの魔力波長を読み取るためなので、専用の魔法具に魔力波長さえ記録させていただけたら、素材などはお持ち帰りいただいて問題ありませんし、ブラシを作成できる数にも制限はございません……が、しかし、その、当商会のブラシはある程度裕福な方に向けた商品であり、一本の価格がそれなりでございまして……すべての組み合わせとなりますと、一匹分でも白金貨10枚を超えてしまうかと……」
「なるほど……」
「ええ、ですので、予算のご都合などに合わせていただけると……」
「じゃあ、ベル……ベヒモスは、毛用と角用のブラシを、白竜は鱗用と角用と尻尾の辺りに少し毛もあるので毛用も、レインボードラゴンは鱗用と角用で……全種類全組み合わせでひとつずつお願いします」
「………………か、畏まりました」
俺の言葉を聞いて、唖然としながらも商会長は頷いてくれた。いやまぁ、一種類全パターンで白金貨10枚推定なら、いま言ったものの合計で白金貨70枚……日本円にして7億円なので、驚くのも当然かもしれないが、ベルやリンに関する品にお金を出し惜しむ気は無いので、まったく問題ない。
というかお金はむしろもっと積極的に使わないと、使うペースより増えるペースの方が圧倒的に早いのだ。アニマが優秀で、いろいろな投資や出資を成功させまくって大金を稼いでる上に、最近ではニフティの売上も凄まじいので、大半をアニマに預けてるはずなのに俺の所持金はどんどん増えている。
特にニフティは超高級ブランドでありながら、カナーリスさんによってほぼ売上=利益みたいな反則級の儲けになってるため凄まじい。
カナーリスさんがシロさんの許可を得て店員として創造した人に給料とかを支払ってもらってるが、それでも利益が大きすぎる。
その上、ニフティの代表を務めて三店舗すべての店長として大活躍なカナーリスさんには、その立場に見合うだけの多額の給料を払っているのだが……カナーリスさんはそのほぼ全部を「ではこれ家賃という事で……」と俺に支払ってくるので、給料の9割以上がこっちに戻ってきている。
カナーリスさん曰く「いや、自分は適時に買い食いとかで使う程度の金銭があれば問題ありませんので」と言っており、これが遠慮とかそういうのであれば説得してもっと給料を確保してもらったのだが……困ったことに、事実としてカナーリスさんにお金はほぼ必要ないのだ。
なにせ必要なものがあればいくらでも創造できる全知全能級のカナーリスさんにとって、お金が必要かと言われたら……必要ない。
カナーリスさんが律儀な性格なので、外に出かけて出店とかで買い物するときは創造したお金じゃなくて、自分で稼いだお金で支払いたいと多少金銭を確保しているだけで、それ以外には本当に必要としていないでなんとも難しいものであり、とりあえず家賃という名目で給料の大半は戻ってきてる状態なので……マジでニフティの利益がとんでもないのである。
その上俺にあまりお金を使う趣味が無い……別に高い美術品だとか貴金属を収集する趣味もないし、超高級な食べ物より家庭的な味わいの食べ物のほうが好きだし……間違いなく、ペット関連品が一番お金は使ってる気がするので、そういう意味でも今回の支払いはまったく問題ないのである。
シリアス先輩「う~ん、でもさ、これ……ブラシが快人伝いで広まるのはまだ時間がかかるというか、すぐにブラシもできないだろうし、この後でニーズベルトとエインガナと出会う事は確定してるけど、意外とコーネリアは胃痛は軽傷で済むんじゃない?」
???「そうっすね! シリアス先輩が言うならそうかもしれないですね(フラグ+1)、すでに確定してるふたりはともかくそれ以外と遭遇することなんてないですよね!(フラグ+1) なにせ、アルクレシア帝国の首都とかでもない商業都市なわけですし、そんな場所でこれ以上凄い地位の相手と会う事なんてないですよね!(フラグ+1) ニーズベルトさんもエインガナさんも比較的常識人なのでとんでもないことになるわけが無いですよね!(フラグ+1) コーネリアが一撃必殺されるタイプの胃痛キャラなわりには、六王幹部ふたりぐらいじゃパンチ力が弱い気がしますが問題ないですよね!(フラグ+1)」
シリアス先輩「………………なんかありそう」