約束のお茶会①
いつもの通りアニマが整理して持ってきてくれた手紙を受け取ると、その中にエリスさんからの手紙が入っていた。かなりしっかりした高級感のある封筒に入っており、開けてみると招待状と書かれていた。
ああ、エリスさんと知り合ったばかりの頃に参加してみたいと話して、いつか機会を用意してくれるって言ってたお茶会の招待か……。
招待状と共に同封されていた手紙にはお茶会の詳細などが書かれており、それにも目を通していく……えっと、場所はハミルトン侯爵家の別邸で、基本的に貴族家の当主や役職持ちを除いた貴族の子息を中心としたお茶会になるみたいだ。
たぶんこれは俺に配慮してくれて、貴族家当主とかは省いてくれた感じかな? エリスさんはその辺りの気遣いが凄いし、たぶんいろいろ他にもお茶会素人の俺が困らないようにしてくれているとは思う。
そう思いながら読み進めていると、気になる表記を見つけた。
『なお、同行者は1名までとして今回の茶会において貴族は同行者として認めないものといたしますので、貴族以外の同行者をお連れください』
同行者? 貴族のお茶会って同行者とか連れていくのか? あぁ、もしかすると婚約者を連れて行ったりするような場合があるのだろうか? 貴族と言えば婚約者とかいてもおかしくないし、招待する貴族が両方共通の知り合いとは限らないわけだし、そういう配慮が必要なのかもしれない。
今回は貴族を除くって書いてあるってことは、普段は貴族もOKなんだろうし……。
それかもしかすると、お茶会に慣れてない上に、参加者にエリスさん以外の知り合いがいない状況の俺が、知り合いを連れて行けるように配慮してくれた可能性もある。
じゃあ、俺も誰かを連れて一緒に行こうかな……その方が安心だし……けど貴族は駄目か……貴族がOKなら、リリアさんに付いてきてもらうのが一番いいのだが……。
リリアさんは貴族の茶会にも詳しいだろうし、エリスさんとも前のパーティで交流を持ったと言っていたので、最善なのだが……貴族NGなら無理である。
「う~ん」
「カイトくん! 遊びに来たよ~」
「あっ、クロ、いらっしゃい。今日は珍しく昼に来たな」
「うん。インスタントとかの新商品開発もひと段落して、最近は結構時間に余裕あるからね。あれ? カイトくん、それってもしかして招待状とか?」
遊びに来たクロが、俺が手に持っている豪華な封筒を見て首をかしげる。そういえば、最初にセーディッチ魔法具商会から、バーベキューの招待で貰った封筒に似てる気がするし、招待状の封筒はある程度形式が決まってるのかもしれない。
「ああ、エリスさんからお茶会の招待状を貰ったんだ。前々から一度参加してみたいって思ってて……それで、同行者をひとり連れて行っていいみたいなんだけど、俺に気を遣ってくれたのか貴族は同行者として連れて行けないみたいで、リリアさんは駄目だから誰についてきてもらおうかなぁって」
「へぇ、じゃあ、ボクが一緒に行こうか?」
「え? クロが?」
「うん。エリスちゃんとは、前のカイトくんの誕生日パーティで会って、それなりに仲良くなったからね」
「あ~そうなのか……じゃあ、お願いしようかな」
どうやらクロはエリスさんとパーティで知り合って顔見知りらしい。それなら、エリスさん的にも初対面の相手よりは、顔見知りであるクロを連れて行ったほうが気が楽だろうし、クロが一緒なら俺としても安心できる。
「うん、任せて。ハミルトン侯爵家の世界座標は分かるし、移動もボクが転移魔法で連れていけばいいから簡単だね」
「ちなみにクロって、貴族のお茶会とかには参加したことはあるの?」
「う~ん、ほぼ無いかなぁ……パーティとかに招待されることはあるけど、茶会に呼ばれる機会はほぼ無いね。リリウッドがハーモニックシンフォニーの後に開くお茶会とかぐらいかなぁ? クリスとお茶をすることもあるけど、茶会ってわけじゃないしね」
「へぇ、じゃあクロにとっても結構新鮮な感じかもしれないな」
「そうだね。けど、商会とかでも関わりがあったりするし、結構貴族の顔は知ってるから、知ってる子が来たりするかもしれないね。まぁ、なんにせよカイトくんと一緒なら楽しいだろうし、いまからワクワクするね」
そういって楽し気に笑うクロに俺も笑顔を返す。やっぱりなんだかんだで、恋人であるクロが一緒に茶会に参加してくれるのは気持ち的にありがたいし、楽しく過ごせそうなので今から楽しみである。
~今回のあらすじ~
ベビーカステラの悪魔「やはり、ボデ胃ブローか……いつ出発する? 私も同行する」
胃痛の悪魔「胃痛要院(因)」