幻の品ランキング⑨
ロズミエルさんは神域の花畑の写真をとても楽しんでおり、いつもより遥かに饒舌な感じでいろいろな話題を振ってきていた。
それはよかった。本当によかったのだが、俺の方は想像以上の密着具合に意識が向きがちで、あんまり会話が頭に入ってこない状態で、しばらくしてロズミエルさんのテンションが落ち着くのを待つしかない状態だった。
しばらくしてロズミエルさんのテンションも最高潮よりは少し落ち着いて来たと感じたので、そのタイミングを見計らって声をかける。
「……あの、ロズミエルさん。喜んでもらえているのはすごく嬉しいんですが、ちょっと近すぎる気がするので、もう少し離れて貰えると……」
「あっ、ご、ごめん!? つい夢中になっちゃって気付かなかった。カイトくん、大丈夫? 苦しかったりしなかった?」
「ええ、大丈夫です。夢中になるぐらい喜んでもらえたなら、こちらとしても嬉しいですしね」
慌てた様子で離れるロズミエルさんではあるのだが、過去にも何度かこれに近いやりとりがあったが……基本的にこういう時のロズミエルさんは、慌てていたり照れたたりはするのだが俺の方は大丈夫だったかと聞いてくることがほとんどであり、ロズミエルさん自身は俺と密着していたことをまったく気にしていない様子だった。
というか、なんとなくではあるが、ロズミエルさんの方は俺に対して距離感が近いのは全然気にしていないというか、そのぐらいの距離感でも自然だと思ってる節があるように感じられる……やはりこの方、気を許した相手にはガードが緩すぎるのでは? 気を許す段階までのガードは激烈に固いのだが、そこを超えると本当に相手への信頼度が凄い気がする。
「でも、ロズミエルさんは本当に花が好きなんですね」
「うん。やっぱり、私の花の精霊だからかな? 綺麗に元気よく花が咲いてるのを見ると、凄く幸せな気持ちになるよ。あとやっぱり花でもいろいろ雰囲気とか、そういうものの違いが感じられるのも好きだね。例えば神域の花畑の花々はどこか神秘的というか、花に対しての表現として適切か分からないけど高貴な雰囲気があるね」
「へぇ、やっぱりシロさんの住む場所に生えてるからですかね。シロさん曰く、割と適当に思い付きで増やしたりするらしいですけどね」
「ふむふむ、最近も新しい花が増えたりしたのかな?」
「三種類ぐらい増やしたらしいですよ。えっと、この写真のここに咲いてる花はごく最近に増えたやつですね。あとはこの場所じゃなくて別のエリアに咲いてる花ですね」
「そういえば、神域も花畑以外にも花がたくさんあるんだよね? その辺りも話も聞きたいなぁ……あっ、ご、ごめんね。お茶も出さずに……ちょっと待ってね」
そういえばお茶の準備をしている途中でこちらに飛びついてきていたんだった。ロズミエルさんは慌てた様子で移動し、すぐに紅茶を用意して俺の前においてくれた。
「ありがとうございます。そういえばロズミエルさん、この神域の花畑の写真ですけど……いりますか?」
「え? も、貰っていいの? 物凄く貴重なものだよ!?」
「ええ、俺は直接見れますし、この写真に関しても許可は取ってきました。というか、シロさん本人はたぶんまったく気にしないんですが、気にするとしたら神族の方々かなぁって」
「う、うん。そうだよね。最高神以外は神域に立ち入れないわけだし、私みたいに見たくても見れないって神族もいっぱいいるよね」
せっかくの神域の花畑の写真ということで、ロズミエルさんが欲しがったらそのままプレゼントしようとは思っていたが、さすがに神域はかなり特別な場所なので気にする方もいるだろうと、事前に確認を取ってきた。
「なので、クロノアさん、フェイトさん、ライフさんにも確認してきたんですが、他の人に見せないようにって釘を刺した上でなら譲渡していいってことだったので、ロズミエルさんが個人で見たりする分には問題ないらしいです」
ちなみにそれぞれに聞いた時の返事だと、クロノアさんは「その写真自体はミヤマの物であるし、どうするかの権利はミヤマにあるが、譲渡した相手の元に見たいと願う者が押しかけんとも限らんし、他の者には見せられないという制限は付けたほうがよいだろう」と言ってくれて、確かにロズミエルさんが神域の写真を持っているとしったら、見たがってロズミエルさんの元を訪れる人も多そうだし、人見知りのロズミエルさんには迷惑が掛かってしまうので、その制限は必須だろう。
フェイトさんに関しては「別にカイちゃんの好きにすればいいんじゃない?」という感じで、ライフさんは「シャローヴァナル様が許可されているのでしたら、私から申し上げることはなにも……混乱を避けるという意味合いでは、制限は付けるべきと思います」って感じだった。
そんな経緯をロズミエルさんに、説明するとロズミエルさんは嬉しそうに微笑む。
「ありがとう。神域の花畑の写真が貰えるのはもちろん嬉しいけど、それ以上にカイトくんが私のためにいろいろ考えてくれたのが凄く嬉しいよ」
そういって笑うロズミエルさんの笑顔は、本当に幸せそうな雰囲気で眩しささえ感じた。
シリアス先輩「え? 待って、なんかこれもうロズミエルルートが始まってるような感じなの? 攻略がガンガン進んでるように思えるんだけど……」
マキナ「いや、その場合はタイトルも専用のになるんじゃないの? だから今回は平常運転って感じじゃないかな?」
シリアス先輩「これが平常とか恐ろしいにもほどがあるんだけど?」