幻の品ランキング⑦
転移魔法具で魔界のユグフレシス前に移動して、そこでカード上の許可証をかざすと目の前に入り口が現れるのでそこを通る。
そうすると辿り着くのはロズミエルさんの住む万花の園であり、事前に訪ねる連絡をしていたので入ってすぐのところでロズミエルさんが出迎えてくれた。
「こんにちは、ロズミエルさん。今日は急にすみません」
「こんにちは、カイトくん。気にしないで、カイトくんならいつでも大歓迎だよ」
ちょっとした思い付きだったこともあって、昨日ロズミエルさんの予定を確認して今日訪れたので急な来訪にはなってしまったが、ロズミエルさんは優し気な微笑みで来訪を歓迎してくれた。
そのままロズミエルさんの家に向かって移動しつつ、軽く雑談をする。
「そういえば、ロズミエルさん、誕生日パーティではありがとうございました」
「ううん、知らない人が多いのは怖かったけど楽しかったよ。それにしても、カイトくんは船上パーティに続いてあんな凄い誕生日パーティもあって、忙しいね」
「たしかに船上パーティからそんなに間隔は空いてないですね。まぁ、誕生日パーティの方は俺は祝ってもらった側で、なにか準備したりってわけじゃなかったですけど……短期間に世界のトップクラスの方々が集結するようなパーティが連続してあったのは、我が事ながらとんでもないなぁとは思いますけど」
「ふふふ、そうだね。普通はあんな面子は集まらないよ。それだけカイトくんに人望があるってことだと思うし、凄いのは間違いないけど、当事者としてはいろいろ大変だよね」
言われてみればなんだかんだで、船上パーティにブランド店舗の開店に誕生日パーティにと、最近いろいろあった気がする。
でもまぁ、たしかにバタバタはしたが、なんだかんだでどれも楽しかったので問題は無い。
そんな話をしているうちにロズミエルさんの家に到着し、ロズミエルさんに促されて席に座ると、ロズミエルさんはお茶の用意をしてくれながら声をかけてきた。
「そういえば、今日は結局なんの用事かな? いや、もちろん私は用事なんかなくても、カイトくんが遊びに来てくれたら嬉しいんだけどね」
「ああ、実はロズミエルさんに見せようと思ってるものがあって……えっと、ロズミエルさんは記録魔法具はご存じですよね?」
「うん。結構広まってきて、雑誌とかでも写真を見る機会は増えたね。アレは凄いね。絵とはまた違った感じだけど、景色とかを正確に写せるのは本当に凄いと思う。絵には絵の良さがあるし、写真には写真の良さがあるから、どっちが優れてるってわけじゃないけど、足を運んだことのない場所の景色とかも正確に見えるのはいいなぁって思うね」
ロズミエルさんは極めて人見知りではあるが、気を許した相手にはそれなりに饒舌であり、記録魔法具に関して自身の感想なども交えつつ答えてくれる。
まぁ、記録魔法具自体は革新的な技術として結構世界中で話題になってたりしたから、ロズミエルさんも知っているとは思っていたが、とりあえず話が早そうで安心だ。
「ええ、その記録魔法具ですけど、俺もニフティの小冊子とかを作る関係で最新のものを持ってるんですよ」
「ああ、確かにニフティの冊子にも写真が使われてるね。記事も面白いし、私も毎月楽しみにしてるよ」
正確には有紗との約束で、記録魔法具に関しては常に最新のものを購入するようにしているのだが、別に有紗専用機というわけではなく俺も普通に使ってる。有紗をメモリーズで出現させてる時は、有紗に優先的に渡しているが、それ以外の場面では俺も普通に写真を撮ったりしている。
「そう言って貰えると、冊子を作ってるやつも喜ぶと思います……それで、記録魔法具なら景色がかなり正確に写せるんですよ」
「うん」
「で、ロズミエルさんが前から神域の花畑を見たいって言ってたので、シロさんに許可を貰って写真を取って来たんですが……」
「ッ!?!?」
そう、今回訪れた目的はシロさんにお願いして取らせてもらった神域の花畑の写真を、ロズミエルさんに見せようというものである。
ランキングに永久の花が入っていたのを見て、ロズミエルさんが神域の花畑を見たがってるのを思い出して、実際に足を運ぶのは難しいとしても、写真なら見せてあげられるのではと思ったのがきっかけだ。
俺の言葉を聞いたロズミエルさんは、勢いよくこちらを振り返り興奮した様子で話しかけてきた。
「し、神域の花畑!? み、見たい! 見れるの?」
「あ、はい。神域を全部ってわけじゃなくて、今回は普段シロさんとお茶をしてる場所にある花畑の写真を撮らせてもらって、現像して持ってきました」
「あ、ありがとう! カイトくんっ!!」
「え? ちょっ!?」
ロズミエルさんは感極まった様子で、ガバッと俺に抱き着いてきた。突然のことにビックリしつつも、反射的にロズミエルさんの体を受け止める……うわっ、腰細っ、柔らかっ、それに薔薇のいい匂いが……テンションが上がりまくってるのは理解できたが、あまりの不意打ちにすぐには思考が追い付かなかった。
シリアス先輩「……は? なにタイトルそのままで、シームレスにいちゃいちゃ始めてるの!?」
???「……この場合、シームレスって適切な表現なんすかね?」
シリアス先輩「シャラップ!!」