幻の品ランキング⑥
幻の品ランキングはたまたま見ていた雑誌の記事としてはかなり楽しめたし、それでふと思ったことがあった。休憩がてらお茶とか飲みたいところだし、タイミング的にも丁度いいかもしれない。
そんなことを考えつつ、俺は部屋にある門型の魔法具というか神器の前に立ち門に軽く触れる。すると空中に登録している目的地が出現したので、その中から神域を選んで開いた門を通って神域に移動する。
「ふむ、私とランキングになんの関連性が?」
「ああいや、シロさんのところに来たのは、誕生日パーティで貰った紅茶を飲もうかと思って……ほら、一緒に飲むって約束してましたし」
「なるほど」
出迎えてくれた直後は首をかしげていたシロさんだったが、すぐに納得した様子でテーブルと椅子を出現させてくれたので、俺もマジックボックスから誕生日に貰った紅茶の木を取り出す。
採取すると自動で乾燥して茶葉の状態になるという不思議な紅茶を回収……。
「ちなみにこれ、淹れる際の注意とかあります? 俺、あんまり紅茶を入れる腕には自信ないんですが……」
「では、私が淹れましょう。せっかく贈ったプレゼントですし、最高の状態で飲んでもらいたいですからね」
「ありがとうございます、助かります」
神域は立ち入りの制限が厳しいというか、シロさん自身はそこまで気にしなくても神族の方々が滅茶苦茶気にするので、イルネスさんを呼んで紅茶を淹れてもらったりもできな……立場的にシロさんとある程度同格扱いのカナーリスさんならワンチャン行けそうな気もするが、シロさんが淹れてくれるならその辺はまったく問題ない。
淹れてもらってポットに入れた状態でマジックボックスに入れておくという手もあったが、本当にふと思いついて神域に来たので、その辺の事前準備はできていなかったしシロさんの提案は渡りに船だ。
シロさんが軽く指を振ると、俺の手から茶葉が浮かび上がり、ポットなどの道具が出現してあっと言う間に紅茶の準備ができた。
「では、どうぞ」
「ありがとうございます。いただきますね」
パッと見た感じでは色合いとかは普通の紅茶と変わらない。香りは……少しスッキリした感じかな? ハーブティーとかってほどじゃないけど、清涼感がある気がする。
そう思いながらさっそく紅茶を飲んでみると……。
「お、おぉ、凄い、なんか滅茶苦茶爽やかな味わいですね。スッキリした感じで、温かい紅茶なのにアイスティーでも飲んでるような後味というか、俺こういう感じのかなり好きかもしれないです」
なんと表現するべきか、もの凄く爽やかな飲み口なのだ。メントールとかミントみたいなスーッとする感じではないのだが、口当たりが凄くスッキリしていて心地よい。
味も凄くいいし、個人的にもこの味わいはかなり好きだ。いくらでも飲めそうな感じで、朝の起き掛けの一杯とか、濃い目の味わいの食事をした後とかに飲むと最高だと思う。
「快人さんが気に入ってくれたのならなによりです。他の紅茶にはない味わいをという考えの元作ったもので、ネピュラにもいろいろアドバイスを貰ったので私のみの力でというわけではありませんが……」
「でも、ネピュラの性格上全部の答えを教えたりとかせずに、アドバイスに留めると思うので、そこからいろいろ考えてこれを作ってくれたのはシロさんですし、単純にすごく嬉しいです」
「ふふ、その言葉を聞けただけでも作ったかいはありますね」
もちろんネピュラのアドバイスもあったのだろうが、なによりシロさんが俺の好みとかを色々考えて作ってくれたわけだし……クロから聞いた話だと、結構前からいろいろ試作したりと試行錯誤していた様子なので、俺のためにいろいろ頑張ってくれた部分も含め本当に嬉しい。
その気持ちを素直に伝えると、シロさんはフッと笑みをこぼし、直後に柔らかなそよ風が俺の頬を撫でた「ドヤァ」という音と共に……なるほど、立体文字じゃなくて音で伝達してくる新たなるドヤりパターンとは恐れ入った。
まぁ、シロさんらしいと言えばシロさんらしいか……そんな風に考えて笑みをこぼしつつ、シロさんと楽しくお茶を飲んだ。
「……ああ、そういえばメインの目的は紅茶を一緒に飲むことだったんですが、ついでというとなんですがシロさんにちょっとお願いが……実は……」
「……構いませんよ。全てですか?」
「ああいや、とりあえず今回はここだけで大丈夫です。なんだかんだでかなり広いですからね」
シリアス先輩「ドヤァウィンドウ……まぁ、それはともかくとして、シロにお願い?」