表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2315/2391

誕生日パーティの後で⑨



 アルクレシア帝国首都に置いて、最大の大きさでありもっとも重要な建物は皇城……ではなく、豊穣神エルンの神殿である。

 気候や土地環境にあまり恵まれているとは言えないアルクレシア帝国に置いて、豊穣の女神たるエルンの存在は最重要と言えるものであり、祈りを行いに足を運ぶ者も多く、豊穣に関わる行事なども多く行われるため神殿は非常に大きく、人界に存在する神殿の中でも最大であった。


 そんな神殿の奥、エルンが住んでいるエリアの一室でエルンは用意した紅茶をテーブルの上に置く。


「どうぞ」

「ありがとうございます。相変わらずよい腕ですね」

「料理とかは趣味ですからね。でも、生命神様が私の神殿に来るのは珍しいですね」

「ええ、確認と……貴女にいくつか聞きたいことがありましたので」

「聞きたいこと、ですか?」


 現在は快人の誕生日パーティが終わったばかりのタイミングであり、神界に戻る前にライフがエルンの神殿に寄りたいと言ったため、こうしてふたりで神殿の一室に居た。


「運命神や時空神を見倣って、私も人族との交流を増やそうと考え行動したのですが……エリス・ディア・ハミルトンという貴族をご存じですか?」

「ええ、四大貴族の一角であるハミルトン侯爵家の嫡子ですね。才女としても名高く知的な女性ですし、最近ではミヤマさんと懇意にしていることもあって、噂に聞く機会も多いですね。特に裏でなにかしら動いているという情報などもなく、人格的には優れた人物だと思いますよ」

「さすが、よく知っていますね」

「私の神殿に礼拝に来る人は多いですし、私自身もいろんな行事であちこちに足を運ぶ機会もあるので、自然と噂は耳にしますね」


 エルンはライフがかなり信頼する部下であり、アルクレシア帝国で重要な役割を担っているという立場的な問題が無ければ、直属の部下にしたかったと常々口にするぐらいには優秀な存在であり、神族の中でもかなり人界などの情報にも精通している。


「私も実際に話してみて信頼にあたる人物だと判断し、ミヤマさんの推薦も後押しする形で仮祝福を行いました。それで、貴女に聞きたいのですが、今後彼女と円滑に交流を進めていく上で彼女が望むことなどに関して、思い当たるものがあれば聞いておきたいと思いまして……」

「そうですね……最近の噂などを考えると、エリスさんが望んでいるのは強いバック……後ろ盾のような存在ではないかと思いますね。エリスさんは、最近ミヤマさんとの交流をなにかと噂されている方で、ミヤマさんに寵愛されているとも言われています……まぁ、寵愛云々はガセでしょうが、交流が多いのは事実です。ただその交流の凄さに対して、エリスさん個人には圧倒的な力と呼べるものが無く侮られたり、妬みの対象になる可能性は高いですね」

「そういえば、ミヤマさんに関しても最初の方は冥王に気に入られただけの若造だとか、そんなことを言う者も居ましたね」

「ええ、どうしてもそういう妬みなどは生まれてくるかと……ミヤマさんの場合は、最初こそ交流関係だけと侮られていましたが、幻王が付いたり、地球神様のことがあったり、その交流をドンドン突き詰めていった結果、いまとなってはミヤマさん自身もとてつもない権威を持っていると言っていい存在になったので、地球神様の脅し云々を抜きにしても侮ったりする人は居ませんけどね」


 個の力に対して、交流のみが大きく感じられる相手にそう言った侮りや妬みが生まれるのは必然と言えると語りつつ、エルンは自分用に用意した紅茶を一口飲む。


「なので、生命神様の仮祝福はエリスさんにとっても利となりますし、今後の交流自体も大きな得になるので、それで十分だとは思いますよ」

「なるほど、リリア・アルベルトに対する時空神のような関係性が好ましいようですね。参考になります……ああそれと、エリスとの交流に関してなのですが、ある程度定期的に話ができる場を用意するつもりなのですが、私の立場的にはハミルトン侯爵家に頻繁に足を運ぶのも騒ぎになりますね」

「なるほど、だから交流の場として私の神殿を使えるか確認を兼ねて立ち寄られたんですね。ええ、直接侯爵家に足を運ぶよりはこちらで交流したほうがいいと思います。部屋はいくらでも用意できますが……生命神様が使われるなら、内装なども含めて特別に調整したほうがいいかもしれませんね」


 そう、今回ライフがエルンの神殿を訪れた最大の目的は、今後エリスとの交流に関してこの神殿の一室を借りようと思ったからだった。

 そのライフの意図を察して、エルンは頷きつつも最高神であるライフが使用するなら相応に部屋を整えたほうがいいかもしれないと口にした。


「その辺りは貴女に任せます。私は貴女の能力やセンスをとても高く評価しています。貴女であれば、私がエリスと交流を行うのにふさわしく、一目見て私が納得するような素晴らしい部屋を用意してくれることでしょう」

「ひぃん! なんで毎回そうやってプレッシャーを……いや、頑張ります、頑張りますけど! そんなに過度に期待し過ぎないでくださいよ」

「心より期待しています」

「ひぃん……」


 それがライフからの信頼の表れであるとは理解しつつも、容赦のない注文になんとも言えない情けない声を出すエルンの姿があった。




シリアス先輩「エルンって、ある意味では貴重な快人が直接的な原因じゃない胃痛キャラかもしれない……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点]気になったから読み返したら、勇者役だった光永正義の結婚式前の話⑥(Ep1238)の最後で「異世界に着て三年、貴族となってから二年が立ち、以前より遥かに成長した正義…」とあったから、あのE…
 へぇ、エルンさんの神殿がアルクレシア帝国首都の建築物や人界に存在する神殿の中でも最大なんだ。 そっか、ライフさんがエルンさんに会う時は多分呼び出しとかになるから、ライフさんが豊穣神の神殿に訪れるのは…
ライフさん優秀な部下持ったなぁ……まあ間違いなく失敗はしないわ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ