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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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リリア・アルベルトへ、祝福と愛の言葉を

 風の月7日目。今日は私の23歳の誕生日、そのせいかは分かりませんが、早朝から屋敷の中を使用人達が忙しく動きまわっており……チラリと部屋の窓から外を見れば、屋敷の門の前には物凄い数の人が押し掛けてきていました。
 殆どは貴族の使者で、一言でも私に祝いの言葉をと集まっているのは自明の理……非常に頭の痛い話です。

 先日王城で行われたパーティーにおいて、私は人界の歴史上初めて最高神様の本祝福を受けました。
 それはもはや一種の権能という程の力であり、現状間違いなくこのシンフォニア王国内において、最も強力な発言力を持つ貴族は私でしょうね。
 勿論、私は無闇にクロノア様の名を使うつもりはありませんが……クロノア様の名前を用いて発言をしなかったとしても、他の貴族達にとって私はクロノア様の使者のように映ると思います。

 そういう訳で、あのパーティー以降私の元には、今までの数倍から数十倍の茶会等への招待状が届くようになりました。
 大半はルナが処分してくれていますが、貴族とは基本的に厚顔なものですから、全然減る事はありません。
 こういう点では、本当にカイトさんの事を羨ましく思います。

 カイトさんの存在は、もはや貴族達にとって周知の事実であり……同時に決して不用意に触れてはいけない対象でもあります。
 以前はカイトさん宛にも多くの貴族から手紙が来ていましたが、現在はほぼゼロ……時折、茶会等への誘いを控え目に送ってくるぐらいですね。
 理由は本当に単純明快で……カイトさんには幻王様が付いているから……

 ルナも外交面ではかなり優秀で、誘い等も上手く断ってくれて非常に助かっていますが……幻王様は全く次元が違います。
 幻王様はそもそも手紙すら送らせない……あの方はカイトさんに害となる存在を許さないので、幻王様がカイトさんについてからピタリと手紙は来なくなりました。
 そしてこれはまことしやかに囁かれている内容ですが……どうもカイトさんに手紙を送ろうとした者の所には、事前に幻王様から警告文が届くらしいです。

 文面は私欲のためにカイトさんと交流を持とうとしているなら、命の保証はしないというもの……ええ、世界最大最高の情報網を持つ幻王様にそんな警告をされれば、逆らおうとする者などいないでしょう。
 本当にカイトさんはとんでもない存在ですよ……

 思い返してみれば、カイトさんは初めて見た時からアオイさんやヒナさんとは様子が違っていました。
 ふふふ、そう言えば初めて交わした言葉は「ちょっと静かにしてもらえませんか」でしたね。アレには驚きました。
 ただ、そういった部分はある物の、あくまでその時の印象では庇護すべき一般人という印象しかありませんでしたね。

 ただ、その考えはカイトさんがこちらに来て一月も経たない内に粉々に粉砕されました。
 なにせあっという間に追い越されてしまいましたからね。
 冥王様に気に入られ、死王様に見初められ、創造神様に祝福を受ける……コレが僅か一ヶ月の間に起こったんですよ? もう、本当にあの人は化け物です。

 その後もカイトさんの快進撃は止まらず、界王様と出会い、運命神様を家に連れ帰ってきて、戦王様に飲み比べで勝ち、竜王様に鱗を下賜され、ついには幻王様を配下にしてしまいました。
 ええ、今改めて考えてももう意味が分かりません……完全に常識の範疇外です。

 お陰でここ半年近く、私は息つく間もなく混乱のただ中に居ました……もうこの半年で、一生分近くの胃薬飲みましたからね。もう少し手加減してほしいものです。
 単純にそれだけなら、もう関わりたくない、こんな人は嫌だと距離を取っていたかもしれませんが……本当に困った事に、カイトさんの事を嫌いになんてなれないです。

 カイトさんは本当に不思議な人です。偉そうに講釈をたれる訳でもなく、詭弁を振りかざす訳でもなく、ただ真っ直ぐで、誠実で、優しくて……その人柄が多くの人を惹きつけ、そして変えていきます。
 ジークもルナも私も、屋敷の使用人達も……カイトさんの影響でどんどん変わっていきます。
 そしてそれは決して悪い意味では無く、以前より笑顔が増え、屋敷全体が暖かな幸せに包まれているようで……本当にカイトさんは凄いんだと実感しました。

 カイトさんは、私に沢山の奇跡を起こしてくれました。ずっとぎくしゃくしていたジークとの関係をアッサリと修復してくれて、ジークの声と笑顔を取り戻してくれて、私にとってもう一つの悲願だった過去との決着にも力を貸してくれました。
 沢山の驚きと共に私を混乱させて、だけどそれと同時に多くの幸せを連れてきてくれる……そんな不思議で優しい男性。
 そんなカイトさんに……こ、恋をするのは……思えば必然だったのかもしれません。

 あのパーティー以降、私は己の中のカイトさんへの気持ちを完全に自覚して、それが原因で上手くカイトさんと話せない日々が続いています。
 23歳にもなってから『初恋』とは……我ながら、本当に情けないです。
 いい加減、逃げてばかりもいられませんよね……そろそろ、ちゃんと覚悟を決めて、勇気を出して……カイトさんに想いを伝えなければ……

 ただ、最近カイトさんの様子が少しおかしくて、それがとても心配です。
 くたくたに疲れている様子だったり、物凄く眠そうにしていたり、かと思えば突然元気になっていたり……理由を尋ねたいと思いつつも、カイトさんが最近朝食を食べたらベルとリンの世話をしてすぐ出かけてしまうのと、戻って来てからもずっと部屋に籠っているのでタイミングが……いえ、それは言い訳ですね。

 聞こうと思えば聞くタイミングはいくらでもあるのに、私が恥ずかしくてカイトさんとしっかり話す事が出来なかっただけ……逃げるのはやめにしましょう。
 今日は私の誕生日であり、私の意向で屋敷内の者だけでささやかなお祝いをしてくれる事になっていますし、当然そこにはカイトさんも来てくれる……と、思います。き、来てくれなかったら……な、泣いちゃうかもしれません。









 誕生日パーティーが開催される予定の食堂に辿り着いた私は、扉の前でウロウロと行ったり来たりしていた。
 頭には以前ルナが言っていた「私に冷たくされているから、カイトさんに元気が無い」という言葉が蘇ります。
 勿論私はそんなつもりはありませんでしたが……カイトさんがどう思うかまで分からないですし……も、もしかして、嫌われてしまったんじゃ……

 そんな考えが頭によぎり、体が震えるのを感じつつ……私は扉に手をかけ、カイトさんに居て欲しいと思いながらゆっくり扉を開く。

「……え? あ、あれ?」

 扉を開いた私の目に飛び込んできたのは、予想とは違う光景……いえ、豪華に飾り付けられた室内等は予想通りでしたが……

「な、な、なんで……カイトさん『一人』で?」
「……ごめんなさい。実は、ルナマリアさんに頼んで、リリアさんに伝える時間を1時間早くしてもらいました」
「え、えぇ!?」

 そう、部屋の中には大勢の使用人やルナ、ジーク、アオイさん、ヒナさんの姿は無く……カイトさんが一人で待っていました。
 驚愕する私に頭を下げてから、カイトさんは自分が頼んでこの状況にしてもらった事を伝えてきました。
 私に伝える時間だけを1時間早く? ど、どうしてそんな事を……

「あ、あの、か、カイトさん?」

 突然の状況に混乱しながら、真剣な表情をしている快人さんの顔を見る。
 ふ、普段の優しげな表情も安心しますが……真剣な顔も凛々しくて……って、私は一体何を考えてるんですか!?

「……リリアさん、話したい事があります」
「え? あ、えと……」

 カイトさんの顔を見ていると体が熱くなって、上手く喋る事が出来ません。
 カイトさんは話したい事があると言っていましたが……そ、それはもしかして、ここ最近の事でしょうか? 私に文句を……
 た、確かに、あからさまにカイトさんを避けてるような感じになってしまいましたし……お、怒っても当然だと思います。

 あ、謝らないと……

「まずは本題から伝えます」
「あっ、そ、それは……も、申し訳ありま……」
「俺は、リリアさんの事が好きです」
「……せん……へ?」

 あ、あれ? わ、私の耳はおかしくなってしまったのでしょうか? なにか今、好きだとか……そんな言葉が聞こえてきた気がします。
 あ、ああ、これはきっと、極度の緊張とストレスで幻聴が聞こえてきたんですね! 全く、本当に我がことながら情けないです……長い事恋も知らず、成長してきたので飛んだ妄想癖が身についてしまったみたいですね。
 本当に駄目ですね私……思えば長い事休みを取ってない気がします。
 この誕生日パーティーが終わったら、三日ほどまとまった休みを……

「……リリアさん?」
「え? あっ、すみません! 上手く聞き取れなくて……」
「えっと、ですから……俺はリリアさんの事が好きです。一人の女性として」
「………………え?」

 その瞬間、私の頭は完全に真っ白になりました。
 そして、この一夜を境に……私とカイトさんの関係が、大きく変わる事になるとは、この時の私には考える余裕すらありませんでした。



まさかのリリア視点。

かいとの せんせいこうげき!

りりあは こんらんした。

りりあは こんらんして じぎゃくをはじめた

りりあは すでに めろめろだ

シリアス先輩「……リリアは誕生日の後で休みを三日取る……快人は誕生日が終わったら最低でも三日は休む……あっ……も、もうだめだぁ……おしまいだぁ……」
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