続・宮間快人生誕記念パーティ㊵
明日は出張のため、次の更新は明後日となります。
シロさんの時は直接確認すればよかったのだが、リリアさんとの夢の中での温泉は終わりのタイミングがよく分からないと言えた。
「……これ、どのぐらいのタイミングで目覚めるんでしょうね?」
「分かりませんね。酔いもそうですが、のぼせたりといったことも無いみたいですしね」
そう、もうそれなりに温泉には入っているのだが特にのぼせたりという感じは無いので、その辺りはやっぱりあくまで夢の中というような感じだからだろう。
ただそれはそれとして、いつまで入浴しているのだろうかという思いはある。
するとそのタイミングで俺とリリアさんの疑問に答えるかのように、視線の先に光る文字が浮かび上がった。
『リリアにもイチャイチャを堪能してもらうため、快人さんとリリアがキスをしたら目覚めるようになっています』
「「!?!?」」
なるほど……特定の条件を満たすと元の世界に戻れるわけか……○○しないと出られない部屋みたいな仕掛けにしてきたか……もしかすると、これもシロさんが恋愛知識を幅広く収集した成果なのかもしれない。
もちろんその成果を実際に体感する側は大変であり、リリアさんもせっかく落ち着いたと思ったのに一瞬で爆発するかのように顔を赤くしている。
「……これ、間違いなくシロさん的には気を利かせたつもりなんでしょうね」
「そ、そそ、そうですね。シャローヴァナル様の気遣いをあらば……む、無下にするのも……」
「リリアさん、別に……ああいえ、なんでもないです」
「うん?」
「いや、もの凄く顔が赤いので大丈夫かなぁと……」
「顔はすでに沸騰しそうです」
一瞬、無理はしなくてもいいし、気が乗らないなら俺がシロさんと交渉するので大丈夫だと言いかけたのだが、リリアさんの表情と感応魔法で伝わってくる感情的に、むしろそういった言葉は望まれてないように思えた。
というのも、なんだろう……もちろん恥ずかしがってるのもそうだし、緊張とか焦りみたいな感情も伝わってくるのだが、喜んでいるような感情も伝わってきた。
なんというか、唐突なことに驚きはしているものの、むしろシロさんの厚意を無駄にしないという理由を付けることで、恥ずかしさの中で一歩踏み出す勇気にも繋がるという感じで、若干ではあるが幸いという風に感じているように思えたからだった。
「えっと、じゃあ、リリアさん……ちょっと失礼しますね」
「は、はい。そ、その、勢いでひと思いにお願いします」
この場では俺がリードすべきだろうと考えて、体の向きを変えてそっとリリアさんの両肩に手を置くと、リリアさんは一瞬ビクッとした後で、すぐに覚悟を決めた表情を浮かべて目を閉じた。
湯に浸からないように纏められた髪型が、なんだかいつもとは少し違った雰囲気だし、こうして触れてみると物凄い天才で、人間でありながら伯爵級に匹敵する力を持つリリアさんも可愛らしい女性なのだと再認識できるみたいで、なんか妙にドキドキした。
そのままそっと顔を近づけて、リリアさんの唇に己の唇を重ねる。温泉に入っていたからか、少ししっとりとした唇の感触が心地よく、不思議と少し甘いような感じがした。
するとそのタイミングで、リリアさんが俺の背後に手を回して少しだけ強く唇を押し当ててきた。たぶん頭の中はパニックと言っていいレベルでテンパってそうな気がするが、それでも一生懸命にアプローチをしてくる姿が愛らしくて、自然と俺も肩に置いていた手を背中に回してギュッとリリアさんを抱きしめた。
そのまましばらく時が止まったかのように唇を重ねたままで抱き合い……ほどなくしてどちらからともなく顔を離す。
「……ほ、本当に幸いだったのは、ここだと恥ずかしさの余り気絶したりということが無いので、よかったです。もう頭は沸騰しそうですし、現実であれば確実に気を失っていたと思いますから……」
「それ、目覚めた後で気を失ったりしませんか?」
「……できれば休憩終了前に起こしていただけると助かります」
「気絶すること自体は諦めてるんですね!?」
「それはもう、ちょっと未熟な私には刺激が強すぎるというか、いえ、分かっているのです。こういうことにもこれからもっと慣れていかないとというのは……分かってはいるのですが、今回は気絶しませんし、夢の中でふたりっきりなのだからとその、いつも以上に大胆な行動を取った自覚があるので……許容範囲は余裕で越えています」
「な、なるほど……」
やはりというか、どうもリリアさんは恥ずかしさのあまり気絶しない状態であれば、テンパった際にアクセルベタ踏みになるみたいだ。
今回もとりあえず、いくら恥ずかしくても気絶することはないからと、普段では恥ずかしすぎて無理な行動も全力で実行したということらしい。
「カイトさん」
「え? ――っ!?」
思わず俺が苦笑したタイミングで、リリアさんが少し微笑みを浮かべた後で不意打ち気味に顔を近づけて来て、もう一度俺にキスをしてきた。
「……もう目覚めた後で気絶することは覚悟しましたので、普段は恥ずかしくてできないことをと……」
「あはは、なんというか、変なところで思い切りがいいですね」
「こういう経験が積み重なれば、もう少し慣れることが出来る気がするので……」
そういって真っ赤な顔で苦笑するリリアさんは本当に可愛らしく、背中に回したままの手に少しだけ力が籠った。
シリアス先輩「ぐはっ……こ、こいつを……リリアを気絶できない状態にするのは不味いと、よく分かった。今後気絶防止状態にするのは止めてくれ……」




