続・宮間快人生誕記念パーティ㉞
プレゼント渡しの大トリとなったルナさんは、絶望と悲しみが混ざったような表情で俺の前にやってきた。基本的にこの手の状況で貧乏くじを引くのはリリアさんだが、今回はリリアさんは早々に終わっている。
まぁ、リリアさんの順番も中々凄まじい位置だったが……ルナさんがそういう状況になるのは珍しい気もする。
「……前回と言い、今回と言い、ミヤマ様は誕生日の席において毎回私を辱めるおつもりなのですか……」
「いや、前回のカラオケの件に関しては別に俺は関与してない気も……今回も偶然ですし……」
そういえば前回もカラオケ大会で恋するらぶり~☆ばんぱいあだったっけ? なんか、そういうキャピキャピした感じのアイドルソングっぽいのを羞恥心にまみれながら歌ってた覚えがある。
そう考えると確かに、俺の誕生日パーティで毎回ひどい目に合ってると言えなくもない……まぁ、まだ二回目ともいえるが……。
カラオケ大会の件に関しては、確かに嫌がるルナさんを勝ち進ませたのは確かだが、アレはもう一組が歌声で体調不良者を量産するとかいう、一種の戦略兵器みたいなことをしてきたので他の人たちを守るためにもやむを得ない犠牲だったし、今回に関しても偶然である。
「……本当に、偶然だと、そう言い切れますか?」
「え? いや、だって、ガラポン抽選でしたし……」
「ええ、確かにミヤマ様が最初から私を大トリにしようとしていたとは、私も思ってはいません。ですが、きっとどこかのタイミングでミヤマ様が普段よく接する相手の中で、私がまだ出てきていないということに気付いたはずです」
「たしかに気付きましたね。俺の家とかリリアさんの屋敷の人がほぼ終わっても、まだルナさんは出てきてないなぁとは……」
そう、確かに付き合いの長い相手の中でルナさんだけガラポンで引いてないというのに気付く機会はあったし、実際気付いた。
でも、別にそれは普通のことでありなんの影響も……。
「……その時に思いませんでしたか? 『ルナさんが最後だったら面白いかも』とか『これ、意外とルナさんが一番最後になったりするんじゃないか?』とか……そういったことを考えませんでしたか」
「………………」
考えたわ……確かに、終盤になってもルナさんが出てきてない状況で「もしかしたらルナさんが一番最後まで残るんじゃないだろうか?」的なことは、確かに考えた覚えがある。
そしてその俺が考えたことが、いろいろ積み重なった幸運補正により後押しされて、ルナさんが大トリという結果を手繰り寄せたと言われれば……そうかもしれないと、思ってしまう部分はある。
「ま、まぁ、きっと偶然ですよ」
「考えましたよね! 絶対考えましたよね!?」
「……ルナさん、原因探しなんてキリが無いですし、実際のところは分からないですから止めておきましょう」
「ぐぬぬ……確かに確たる証拠は……」
ルナさんの話を聞いて、俺ももしかしたらそれが原因なのかもと思いはしたが……本当にそのせいかどうかは分からない。ルナさんとしても憶測にすぎないというのは分かっているのか、それ以上文句は言えないようで悔しそうな表情を浮かべた後、少ししてため息を吐いた。
「……はぁ、しかし、本当に大トリを務めれるほど凄いプレゼントなんて用意してないですよ。普段よく行く雑貨屋で買ったものですし……」
「別に最後だからって凄いプレゼントじゃないといけないなんてことは無いですよ」
そんなやり取りをした後、ルナさんはマジックボックスから細長い箱を取り出して、俺の方に差し出してきた。
「……その……誕生日、おめでとうございます」
「ありがとうございます……これは……マシュマロですか?」
ルナさんが渡してくれた箱は、一部が透明になっており中身が見える形状だったのだが……中には猫や熊といった可愛らしい動物の形をしたマシュマロが入っていた。
「紅茶やコーヒーに入れるマシュマロです。甘さは控えめなのでココアとかにも入れることが出来ますね」
「へぇ、そんなマシュマロが……徐々に溶けていって甘くなっていく感じですかね?」
「ええ、ぷかぷかと水面に浮きますので見た目もそれなりに楽しめるかと……」
少し気恥ずかしそうに話すルナさんだが、これはなんとも可愛らしいというか女子力が高い感じのプレゼントである。
というか、マシュマロをコーヒーとかココアに浮かべて飲むのが可愛くお洒落な感じだし、ちょうどアリアさんにココアを貰ったので組み合わせて飲むのもいいかもしれない。
「見た目にも可愛くて、実際に飲んでみるのが楽しみです。ありがとうございます」
「まぁ、喜んでいただけたのならいいのですが……注目の中でその手のプレゼントを贈った私は、いまにも羞恥で気を失いそうです。お嬢様の気持ちが分かりました。本当にミヤマ様の淑女の胃を痛めつける性癖にも困ったものです」
そういいつつもルナさんの微笑みは柔らかくで、文句のようなことを言いつつも声はどこか優しげだった。
シリアス先輩「……この後休憩入るんだったっけ? でもほら、快人疲れてないっぽいし続行してもいいんじゃないかな……ほ、ほら、恋人とふたりで休憩する必要なんて……」




