続・宮間快人生誕記念パーティ㉝
順調にプレゼントを受け取っていき、もうおそらく残り少ない筈というか、誰から受け取ってないかパッと思いつかなくなってきた。ひとりは思い浮かぶのだが、それ以外何人残っているかは正直分からない。
ともかく終わりは近いとそんな風に想いながらガラポンを回すと……。
『シャローヴァナル』
……え? いやいや、おかしい。ここでシロさんが出てくるのはおかしい。まさかの二度目?
すでにプレゼントを渡し終えているはずのシロさんの名前が出てきたことで混乱する俺の前に、シロさんが姿を現した。
「いえ、違います。私の名前が出るのは一種の合図です」
「……合図?」
「はい。プレゼントの受け渡しが次で最後のひとりとなりましたので、ここで快人さんは元の世界に戻って、その後に平行世界の統合を行い。最後のひとりからプレゼントを受け取って、プレゼントの受け渡しの終了として一区切りします。二度目の私が出てきたのはその合図ですね」
「ああ、なるほど……」
考えてみれば当然かもしれない。俺はこれまでのすべてのプレゼントの受け取りを記憶しているが、この後に行われる平行世内の統合で全員にすべての世界の記憶を引き継がせていては、あまりにも情報量が膨大になりすぎる。
となると、引き継ぐのはそれぞれがプレゼントを渡した平行世界の記憶になるだろうし、己がプレゼントを渡した記憶が引き継がれて、プレゼントの引き渡しは全終了で次の余興に……というのは急展開というか、なにか一区切り欲しいところだろう。
なので、このタイミングで平行世界の統合を行って、最後のひとりからのプレゼントの受け取りを持って締めくくり、続けて最後の余興へ~という形で進行するのだろう。
「それでは、もう既に元の世界に戻っていますので、後はアリスに進行を任せます」
シロさんがそう言って姿を消すと、それが合図になったのかアリスが軽く頷いてから口を開く。
『はい。それでは、事前に通達していた通り、これから平行世界の統合を行います。皆さんはそれぞれカイトさんにプレゼントを渡した平行世界の記憶が引き継がれ、用意したプレゼントも渡した状態に更新されます。いきなり記憶が増えますが、神様共が全能パワーで上手いこと引き継いでくれるはずなのでご安心を……そして、記憶の引継ぎ完了後に、最後のひとりのプレゼントの受け渡しを持って、シャローヴァナル様から始まったカイトさんへの誕生日プレゼントの受け渡しは終了という形になります』
『というか、シャルたんとかクロりんとかはよく平気な顔してるよね。この数の平行世界の記憶を一気に引き継ぐと少し気持ち悪いね』
『その辺は上手いこと思考を分割して対応するんですよ。ああ、不安になる必要は無いですよ。フェイトさんは自力で平行世界の記憶を全部引き継いだのでこうなってるだけで、皆さんには自分がプレゼントを渡した世界の記憶だけの引継ぎなので情報量の多さで気持ち悪くなったりはしません』
フェイトさんやアリス、クロといった準全能級レベルになれば、自力で平行世界の記憶を引き継げるようだった。ハイドラ王国の建国記念祭でも似たようなことはやっていたが、フェイトさんはまだ慣れてないのか、若干頭痛を堪えるような表情を浮かべていた。
『はい。それでは5秒後に統合します。5、4、3、2、1……はい。皆さん記憶の引継ぎは完了しましたね。大丈夫だとは思いますが、気持ち悪くなったりした人がいれば申告してください。さて、そして……おひとりだけ、プレゼントを渡した記憶が引き継がれてない方がいますね。はい、貴女が大トリです』
実のところ、俺はもう最後のひとりが誰かは分かっている。というか、回してる途中で、もう終盤なのにまだあの人は出てないなぁって考えたりもしていた。
そして該当の人物に視線を動かすと、完全に青ざめた顔で絶望の表情を浮かべていた。
『まぁ、形式的なものですけど、最後もガラポンは回してもらいましょう。というわけでカイトさん、どうぞ~』
シロさんからスタートしてプレゼントの締めくくり、アリスの言う通り大トリと言っていい人物は、この注目の中でプレゼントを渡すことになるわけで……その、なんというか、可哀そうである。
そんな気持ちを抱きつつ、ガラポン抽選機を回して……締めくくりとなる人物の名前が表示された。
『ルナマリア』
……死んだ魚のような目で引きつった笑みを浮かべるルナさんの肩を、心の底から同情した表情のリリアさんがポンッと叩いているのが見えた。
~今回のあらすじ~
ルナマリア「ば、馬鹿な……ないっ……ぷ、プレゼントを渡した記憶が……ど、どこにも……」
胃痛の悪魔「ハイクを詠め、カイシャクしてやる」
今回の被害者「アイエェェ!? ボデ胃ブロー!? ボデ胃ブローなんで!? ナンデエェェェ!?」
胃スレイヤー「親友と同じ場所(胃痛)に送ってやる……」




