続・宮間快人生誕記念パーティ㉜
特にこれといったトラブルもなくプレゼントの受け取りは進み、もうたぶん残りは50人を切っていると思うので仮にひとり10分かかると仮定しても500分……8時間ほどで終わる。というか実際のところはひとり5分前後の会話になるだろうから5時間もあれば終わるわけだ。
しかし、こうしてみると結構恋人は前の方に固まった気もする。恋人からのプレゼントは早めに受け取りたいと思っていたので、その気持ちが作用したのかもしれない。
『エリーゼ』
ここでエリーゼさんである。そしてほどなくして、アインさんに連れられて優し気な笑顔……もとい営業スマイルを浮かべたエリーゼさんがやってきた。
ああそうか、いろんな人がいる場所だし、ここに関してもすぐそばにアインさんが居るので猫かぶりモードなわけか……。
「こんにちは、カイトさん! お誕生日、おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます」
なんか背中がゾワッとした。いや、失礼な話ではあるのだが、普段俺相手に話している時と全然違うので、やっぱり違和感が凄い。
とはいえ、これも仕方がないことだと、そう思ったタイミングで……いきなり周囲の景色が変わった。いや変わったというか、パーティの会場で先程までと同じ場所のはずなのに、他の人が全員消えたというべきだろう。
エリーゼさんも驚いた表情を浮かべているということは、エリーゼさんがやったわけでもないと……なんだろうこれ?
そう思っていると、急にカナーリスさんの声だけが空間全体に響くように聞こえてきた。
『はいこちら、お助けゴッドによるサポートです。自分全知全能なゴッドなわけでして、事情なんかもマルッとお見通しなわけです。なのでおふたりだけの空間を作っておきましたので、こちらでプレゼントの受け渡しをどうぞ。たはぁ~事後説明で申し訳ない! なお、プレゼンをの受け渡しが終わりますと自動的に元の世界に戻って、次の平行世界に移動します』
さすがカナーリスさん、凄い的確なサポートだ。他の人がいる状態だとエリーゼさんが素を出せないのを見越して、俺とエリーゼさんだけを別の世界に移動させたというわけだ。
エリーゼさんはなんとも微妙な表情を浮かべた後で、大きくため息を吐いた。
「……はぁ、まぁ、全知全能相手じゃ隠し事なんて通用しないですね。別にサクッとプレゼント渡して終わりですし、元のまんまでも大して影響はなかったですが、この方が気楽って言えば気楽ですね」
「でも俺としては、どうせ話すなら素のエリーゼさんの方がよかったですし、ありがたいですね」
「相変わらずの女たらし発言ですね。素で言ってるので性質が悪いです。まぁ、人間さんがそれでいいなら別にいいです。ほら、というわけでプレゼント持ってきたですから、ありがたく受け取るです」
「ありがとうございます……ちなみにこれ、なにが入ってるか聞いてもいいですか?」
いつもの調子に戻ったエリーゼさんが渡してくれたのは、掌に乗るぐらいのサイズの小さめの箱だった。包装紙などがかなりお洒落で、エリーゼさんのセンスの良さを感じる。
「別に大したものじゃないです。アーティチョークの置物です」
「アーティチョーク?」
「野菜です。野菜ですが、幸運の植物とも言われていて、置物のモチーフになったりするです。魔除けや幸運を呼ぶ効能があると言われてる……まぁ、占い的に縁起のいいインテリアって感じですね。人間さんに運気を上げるインテリアが必要とも思えませんが、とりあえず他と被りにくくて私の得意分野にも関連してるってことで選んだです。どっかテーブルの上とか、棚の上とかにでも置いとけです」
「なるほど、ありがとうございます」
占い師であるエリーゼさんらしい、運気を上げる効果のあるインテリアとのことだ。サイズ的に小さ目でどこにでも置けそうだし、さっそく帰ったら部屋に飾ってみることにしよう。
「それで、人間さんはプレゼントの受け取りは順調なんですか?」
「ええ、もう終盤といった感じで、あと数時間もあれば受け取り切れそうです」
「相変わらず常識外れなことしてますね。まぁ、ぶっ飛んだ図太さの人間さんなら問題はないんでしょうが……」
俺の言葉を聞いて少し呆れたような表情を浮かべた後で、エリーゼさんはマジックボックスを取り出して、その中から一口サイズのクッキーを数枚取り出して俺に渡してきた。
「別に必要ないでしょうが、少し糖分でもとっとけです」
「……ありがとうございます。いただきますね……あっ、優しい甘さで凄く美味しいですね」
「まっ……ほどほどに頑張れです」
そう言って小さく微笑むエリーゼさんは、やっぱりなんだかんだで優しい人だとそんな風に思った。
シリアス先輩「ゴッドのサポートが手厚すぎる……けど、もう終盤ってことは、気になるのは誰が最後のプレゼントを渡すことになるんだろう? もう主だった奴らは出た気もするが……」




