続・宮間快人生誕記念パーティ㉛
プレゼントの受け取りは続く、トーレさんや茜さんには心配されたが、本当に精神的な疲れは全然ないと言っていい。
単純に楽しく話してプレゼントを受け取っているだけなので、このまま休憩を挟まずに行けそうではある。
『ティアマト』
……う~ん、やっぱり一回休憩とかは挟むべきかもしれない。いや、シロさん、マキナさん、パンドラさんと厄介というか、精神的に疲労しそうな相手は終わっていたので油断していたが……まだメディアさんとフェニックスさんが居たか……。
「こんにちは、ミヤマカイトさん。よき日ですね。悲しみの多い世界ではありますが、それだけでは無いと実感できるめでたい日……お誕生日、おめでとうございます」
「ありがとうございます。メディアさんは人化した姿なんですね」
ちなみにメディアさんは潜入任務は無いとのことで、こうした大勢の人がいる場所で本名を呼んでも問題ないと本人から聞いているので普通にメディアさんと呼ぶことにしている。
メディアさんはフェニックスさんと一緒にライブに出ており、その時は普段のラミアの姿だったのだが、いまは人化している。
「私の体躯はそれなりに巨大ですから、視界を遮って悲しみを生んでしまう可能性もありますからね。そしてなにより目線を合わせて話すことこそ、親しくなるための一歩とも言います。こうした場から素晴らしき出会いというのは生まれるものですし、私も新しい友人を作れる機会を逃したくはありませんので……」
「そ、そうですか……えっと、ほどほどに……」
普通に聞けば、知らない相手も多くいるパーティで新しい友人を見つけたいという言葉なのだが、メディアさんの場合は例の性癖と恍惚とした表情が合わさって、よからぬことを企んでいるように感じられてしまう。
いやまぁ、そういう風に言いつつも、なんだかんだでメディアさんは新しい友人とかを作ることはなさそうというか、狂気で突っ走ってるように見えてギリギリのところでちゃんとブレーキを踏む方ではあるのだが、なんか今にも涎を垂らしそうな表情を見ていると不安になる。
「ふふふ、ご安心をこの会場で安直に性癖を表に出すことは、ただの自殺であるとは私も理解しています。単に抗いきれぬ想いが内から溢れているだけで、実行したりはしません」
「まぁ、その辺はなんとなく……メディアさんは自制すべきところはしっかりできる方だと思ってますしね」
「ええ、ご安心を……ですが、最近は喜ばしいことではありますが世界的に平和でして、私も新しい友人との出会いと別れの機会が無くて悲しいです。フェニックスがたびたび殺させてくれるので、心は満たされていますがね」
「……仲いいですね」
う~ん、やっぱり基本的にメディアさんって己を客観視はできてる方なんだよなぁ。己の性癖に関しては世間的に間違っていると理解しているからこそ、性癖を満たす機会が減っているのは悲しいが世界が平和なのは喜ばしいと口にしていたり、性癖が異常という点さえ除けばかなり常識的な方ではある。
まぁ、その性癖が唯一にして最大の問題点ではあるのだが……とりあえず性癖が合致してるフェニックスさんとじゃれていれば大丈夫そうな感じはある。
「それでは、誕生日の贈り物ですが……以前ミヤマカイトさんが森を訪れた際に、椅子の座り心地がイマイチだったようでしたので、それ以降何度か椅子を自作しておりまして。今回は特によくできた品をお持ちしました」
「椅子ですか? ありがとうございます……綺麗に包装されてますけど、どんな椅子なんですか?」
前にティアマトさんの住処である黒い森を訪れた際には、ティアマトさんは骸骨で出来た椅子……製作者はラサルさんらしいが、ともかく骨の椅子を出してきてパンドラさんにツッコミを入れられていた。
それをきっかけに椅子作りを始めたらしく、今回はそれをプレゼントに持ってきてくれたらしい。
「蛇皮の椅子です」
「…………」
「ああ、ご安心を……別に私の皮で作ったというわけではなく、一般的に革製品に使われることの多いグレイパイソンという蛇の皮を使用しました」
「あ、ああ、そうなんですね。すみません、変な勘違いをしちゃって……」
蛇皮と言われて、一瞬メディアさんが自分の皮を使って椅子を作って贈ってきたのかと思ったが、どうやら普通に違ったらしい。
「お気になさらず……事実として最初は、私の皮を用いた椅子を贈ろうかと思っていたのですが、突然現れたシャルティア様が『ドン引きされるからやめなさい』と仰られたので、別の物をご用意いたしました」
「な、なるほど……」
アリスは本当にいつも頼りになる。いや、実際にメディアさんの下半身は蛇の物ではあるのだろうが、知り合いから自分の皮を使って作った椅子ですとプレゼントを渡されてもどう反応していいか分からないので、本当に先んじて阻止してくれてよかった。
シリアス先輩「ちなみにこれ、快人は精神的ダメージを……」
???「別に受けてないですね。うちの変態どもとか、アインさんのメイド論とか、クロさんのベビーカステラ論とか聞いてる時は、本当に興味のない話題なので呆れた感じになって、本人としては精神的に疲れた気になってますがSAN値とかはまったく削れてないです。たぶん休憩入れることは無いでしょうね」
シリアス先輩「疲れた気とは、恐れ入った」
???「いやだってカイトさんって、普段週5ぐらいの頻度で尋ねてきたり夢に呼んだりしてくるマキナの相手してケロッとしてるんですから、そりゃ精神力は化け物ですよ」
シリアス先輩「そういえば地の文でサラッと触れられただけだからスルーしてたけど、暴走の予兆を段階ごとに見分けれるぐらいにはマキナの暴走に付き合ってるんだったわこのメンタルお化け……」




