続・宮間快人生誕記念パーティ㉘
引き続きプレゼントを受け取りつつ、ある程度の回数をこなしたところだが、肉体的な疲労は平行世界に移動時に回復しているので精神的疲労のみだが、そちらもまったく問題ない。
というか、プレゼントを受け取るのにそこまで体力も使わないし、ある程度会話しているとはいえそれも別に疲労に繋がるわけでもなく楽しく話しているだけなので問題ない。このまま休憩はせずに最後まで行けそうな気さえしている。
『トーレ』
おっと次はトーレさんか、プレゼントはなんだろう? やっぱ魔水晶とかかなぁ。そんなことを考えているとアインさんに連れられてトーレさんがやってきた。なんかドヤ顔してるので、たぶん「お待ちかねの私の番」的なこと言いそうだ。
「ふっ、待たせたねカイト! ついに、お待ちかねのお姉ちゃんの番だよ!」
「完全に予想通りのセリフでしたね」
「な、なんだって……よ、読まれた!? くっ、腕を上げたねカイト……でも、次も上手くいくとは思わないことだね」
この打てば響く感じがとても楽しいというか、ちゃんとこっちの欲しいリアクションをしてくれるのでとてもありがたい。
「まぁ、改めて……カイト、誕生日おめでと~」
「ありがとうございます」
「ところで、今何回目?」
「あれ? 平行世界を利用してプレゼントを受け取るって知ってるんですか?」
「うん。事前に皆には周知されてるよ。このタイミングでカイトがプレゼントを受け取って、そのあとで平行世界の統合があって、私たちの記憶も受け継がれる感じになるから混乱しない様に~って」
「ああ、言われてみれば最後に世界の統合を行うなら、知って無いと混乱しますよね」
どうやら参加者には、この平行世界を利用したプレゼントの受け取りに関しては事前に周知されているみたいだ。
まぁ、人数的に全員から直接プレゼントを受け取ってたら、時間が本当に長くなるしそもそも方法が超常的すぎて文句も出ないと思う。
「えっといまは……32回目ぐらいですね」
「おぉ、もう結構受け取ってるんだね。大丈夫、疲れてない?」
「いえ、まったく。肉体的な疲労は回復しますし、精神的なのは雑談して受け取ってるだけなので普通に楽しいですね」
「はぇ~タフだね。ちなみに、ウチからもいっぱい来てるけど、他も多いよね……私の気のせいじゃなければ500人ぐらいはいない?」
「それぐらいはいそうですね。クロの家族とリリアさんの屋敷の人がほぼ全員来てるのと、ハーモニックシンフォニーのお茶会とかで挨拶した人とかも来てるので、そのぐらいはいってると思います」
1000人には確実に届いていない。おそらく俺と一言でも言葉を交わしたことがある相手に限定されているのだと思う。そうじゃなければ神族とか全員来ててもおかしくないし……ただし本当に一言でも言葉を交わしてれば対象っぽく、正直何人か名前が思い浮かばないというか……すれ違った際に挨拶とかはしたが、自己紹介まではしてないような気がする相手もいる。
「それをずっとプレゼント受け取るんだよね? 大変じゃない? だってほら、絶対あり得ないけど凄くスムーズに受け渡しが行われたとして、500人仮定だとひとり1分でも8時間はかかるし、雑談とかもして10分平均ぐらいなら80時間だよ?」
「う~ん、俺の誕生日を祝ってくれてるわけですし、むしろ直接受け取れて嬉しいぐらいですよ。別に単調なこと繰り返してるわけでもないですし、景色変わらない空間を100年歩いたりとかに比べれば全然……」
「いや、そんな精神を破壊する拷問と比較されても困るんだけど……カイトは強い子だね。お姉ちゃんびっくりだよ」
いやまぁ実際に500人かどうかは分からないが、仮に500人としても別に……そりゃひとりと1時間話したりとかしてたら疲れるかもしれないが、普通に軽く雑談してプレゼントを受け取るだけなので、疲れる要素は皆無である。
「おっと、話が逸れちゃったね。お待ちかね、私からのプレゼントだよ!」
「ありがとうございます。結構大きい箱ですね」
「ふふふ、それ卓上に置く本棚なんだけど、真ん中がスライドするんだよ。いいでしょ~」
魔法具関連かと思ったら全然関係なかったが、このチョイスは流石と言わざるを得ない。いや、そういえば卓上にちょっとした本棚とかあるといいなぁとは思ってた。
マジックボックスにも収納できるが、読みかけの本とかいちいちマジックボックスを出してその中から取り出して~ってするより卓上に置いてあった方がいい。
「意外なほどに的確にいい物をプレゼントしてくれたのでびっくりしました」
「おかしいなぁ、そのセリフだと受け狙いの物を持ってくる可能性もそこそこ考えてたように聞こえるな~」
「……まぁ、少しはその可能性も考慮してましたね」
「めっちゃくちゃリアルなレインボーフロッグのペン置きとどっちにしようか迷ったんだけどね」
「こっち選んでくれてよかったです。ともあれ、改めてありがとうございました」
「気にしないで~それにアレだよね。異世界の文化だと3倍にして返してくれるんだよね! 楽し……いや、別に卓上本棚3個もいらないな……」
「あはは、いや、貰ったものを3倍にするってわけじゃないんですが……でも、お返しを求めるならトーレさんの誕生日も教えてもらわないと……」
「……いつだったっけ?」
「えぇぇ……」
「いや、これだけ長く生きてるとね……ほら、魔界には誕生日祝う風習とかも無いし……でもお返し欲しいから考えとくね!」
そう言ってグッとサムズアップをしてくるトーレさんを見て、誕生日って考えとくものだっただろうかと、そんなツッコミを飲み込みながら苦笑した。
シリアス先輩「忘れがちになるけど、そういえば快人……明確に作中最強とか言われてるレベルの鬼つよメンタルだったわ……」
???「まぁ、事実として100年景色の変わらない場所を歩き続けて『意外と早かった』みたいなこと言っちゃう人にとって、500人からプレゼント受け取るぐらいは大した精神的負荷じゃないでしょうね」




