続・宮間快人生誕記念パーティ㉗
テンポよくプレゼントを受け取れていると、そんな風に感じつつガラポン抽選機を回すと……。
『リュコリシアン』
次に出たのはシアンさんだった。ハーモニックシンフォニーで挨拶して以来だったが、お祝いに来てくれてたのか……ただし、ゲーム大会とかでは姿を見かけなかったので、余興には参加してなさそうな気がする。
少しすると赤みがかった茶のウルフヘアで、パンクっぽい服装のカッコいい系の女性……シアンさんがやってきた。
「よう、カイト。おめでとう」
「ありがとうございます。シアンさん、来てくださったんですね」
「ああ、再会はハーモニックシンフォニー以来だな。悪いな、せっかく家に誘ってもらえたってのに、なかなか踏ん切りがつかなくて訪ねられないままだった。だがまぁ、なんの因果かさっきアイツと会って話してきた」
「あっ、キャラウェイと話せたんですね。どうでした?」
「……まぁ、相変わらず生意気で安心したよ」
そういって苦笑しながら、シアンさんは細い棒状の……つまようじより少し大きいぐらいの木の枝のようなものを取り出してタバコのように咥えた。
ほんのりシナモンの香りがしたので、シナモンスティックかなにかかもしれない。少なくともタバコとかではなさそうだ。
「シアンさん、それはシナモンスティックかなにかですか?」
「え? ああ、悪い。つい癖で咥えちまった。ああ、本来は料理とかに使うもんらしいが、私はコイツの香りが好きで、たまに咥えてんだ」
「へぇ、俺もアップルパイとか好きなので、シナモンの香りは結構好きですね」
「独特の香りだが、いいよな……ああ、悪い、プレゼントを渡すんだったな。魔族にはあんまり誕生日を祝う風習が無くて、いまいちなに贈っていいか分かんなかったからさ、とりあえず無難に食い物を持ってきた。干し肉とか燻製とか、まぁ、ほぼ肉だ。この袋事態に状態保存がかかってて、開けると解けるようになってる」
「ありがとうございます」
シアンさんの渡してくれた袋は結構なサイズであり、この中に肉が入ってるとしたら相当な量になりそうではある。なんとなく狼っぽいイメージの獣人型魔族ということもあって肉が好きなのかもしれない。
「そういえばシアンさんは、どこの陣営にも属さない爵位級高位魔族なんですよね。俺はそこまで詳しく知らないんですが、やっぱり珍しいんですか?」
「どうだろうな? それなりに数はいると思うが、やはり大多数はどこかの陣営に属するとは思うな。私も実際に戦王様の陣営や竜王様の陣営に誘われたこともあったが……苦手なんだよな、そういうのは……」
そういって苦笑してから軽く頭をかくシアンさんは、確かにどことなく一匹狼という雰囲気がある。最初に会った時もいまも配下とかは連れておらず基本的にひとりで行動していたり、どことなく孤高という言葉が合う人のように感じた。
「私は不器用だからな、あんまり余計なものは背負いたくないんだよ。私は爵位級高位魔族だし、どこかの陣営に属したとしたらそれなりの待遇で迎えられるだろう。群れることが悪いとは言わないし、そういった立場を得れば出来ることも広がるだろうさ……だがそういう立場ってのには責任が伴う。私の背中を見て勝手に付いてきたやつらがどうなろうと自己責任で済むが、どこかの陣営に属したら背負わなくちゃいけないものも、抱えなくちゃいけない責任も出てくる……私は背負ったり託されたり、そういうのは遠慮したいんだよ」
「……なるほど」
いわゆるしがらみとかそういうのを嫌っている感じで、ぼっちとかではなく望んでひとりでいるタイプって感じだろう。
でも、その割にはキャラウェイのことを気にかけていたり、キャラウェイが失脚した時に素早く動いて対応していたりしていると、そう思うと……シアンさんは俺の疑問を察したのか苦笑を浮かべる。
「……まっ、私もそれなりに長く生きてきてるさ。生きていく以上なんのしがらみも無く生きるのは無理だし、なにも背負わないってのも不可能だ。極力少なくしたいってだけさ……だからこそ、アレもこれもと無理に抱え込んでたあの馬鹿猫に腹が立ってたのかもな。まぁ、どうでもいいさ、動機や理由をアレコレ語るのは苦手だ。私は他人なんて気にせず、無責任に好きなように生きてるってだけだよ」
「でもなんだかんだでシアンさんは優しい方だと思いますけどね」
「はは、そりゃたぶん、お前がいい奴だからだよ。いい奴の前で、しかめっ面したり苛立ったりする理由もないし、自然と優しくもなるさ……まぁ、長々と話して悪かったな。改めて、おめでとう……また改めて家にも遊びに行くよ」
「はい。楽しみにしてますね」
そういって小さく手を振って去っていくシアンさんは、なんとなく姉御肌というか、なんだかんだでいろいろ気の利く優しい人に思えた。
シリアス先輩「犬(薔薇)→犬(鳥)→犬(桜)→犬(狼)と犬四連できたか……ここにアニマが居たら、犬(熊)も加わったところだけど、他に犬っぽいのはいないから犬連打はここまでかな?」
???「純正の犬というか、イヌ科はそもそもひとりっすけどね」




