続・宮間快人生誕記念パーティ㉖
プレゼントを受け取るテンポというか、受け取り終わって平行世界に移動してガラポンを回すという流れにも慣れてきた。
なんだかんだでこっちのペースで進められるというか、俺がプレゼントを受け取り終わると平行世界に移動するので、プレゼントを渡してくれた相手とある程度のんびり雑談していても問題ないのはありがたい。
なんなら時間的な余裕であれば、余興とかの合間に受け取ってたよりもあるかもしれない。
『ブロッサム』
おっと、次はブロッサムさんである。なんだろうか? 日本にちなんだ品のような気もするが……。
「マスター! 誕生日おめでとうございます!!」
声でっかっ……さすがは歌を得意とする精霊族と言わんばかりの声量かつ、大変によく通る声で元気いっぱいという感じのブロッサムさんの声は非常に大きく、結構な人数がこっちを振り返っていた。
「……ありがとうございます。でも、ブロッサムさん、もう少し声を小さく」
「おっと、これは失礼しました」
言えば普通に聞いてくれるし、性格的にも優しくていい人なのは間違いない。ただ思い込みが激しくアクセルベタ踏みというか、スイッチが入るとイノシシでももうちょっと曲がるだろうってぐらいに猪突猛進になってしまうところが難点ではある。
テンションが上がりすぎてなければ、いまのように普通に聞き入れて改めてくれるので問題はないのだが……。
「今日は尊敬するマスターの誕生日ということもあり、拙者も僭越ながらプレゼントを用意してきました。サムライである拙者が贈るなら、やはり刀などが適切かと思いましたが……マスターがそういった荒事を好まないのは理解していますし、別のものを用意させていただきました」
そうブロッサムさんが差し出してきたのは……確か花菱模様だったかな? 和柄の模様の箱で、祝いの場などでも使われることの多い模様だったような覚えがある。
……ブロッサムさんが間違った日本知識じゃなく、適切そうなやつを持ってきた? ああいや、単に俺がいままで変な日本知識の部分を見てるだけで、普段の服装とかも侍っぽくはないものの剣道小町感はある服装だし、正しい知識の部分もあるのだろう。
「ありがとうございます。綺麗な箱ですね」
「お気づきになられましたか? 実は拙者がよく買い付ける織物製作者が居るのですが、祝い事ならこの箱がいいと勧めてくれたのです。婚礼の席などで贈り物に使われることの多い模様らしいですが、格式ある模様で贈り物には適しているとのことでした」
「それはまたかなり詳しそうな方ですね。じゃあ、ブロッサムさんの普段の異世界知識もその方から?」
「ああいえ、それが、異世界に関して詳しいというのはごく最近知ったのです。以前から異世界風の織物を作っており、拙者は気に入って購入していたので付き合いはありました。しかし、いままでは特に異世界の事柄に詳しいという印象は無かったのですが、先日訪れた際にはいろいろ詳しく教えてくれました……隠れた異世界知識の識者……はっ!? まさか、これはニンジャというものでは!?」
「違います」
花菱模様を知っているというだけならともかく、それが格式ある模様で贈り物に適していると説明できる知識がある人か……しかもこの箱、漆塗りだし、本当にかなり日本に詳しい人が作った気がする。
「異世界人とかってわけでは無いんですか?」
「う~ん、種族はおそらく氷鬼だと思いますね。特徴的な青く鋭い二本角があるので……ただ、他の部分は氷鬼の特徴とは合わないので、似ているだけで別の種族かもしれません」
「なるほど……」
「ちなみに中身は服です。それもその取引相手に教えて貰ったものではありますが、ジンベイという服らしく、拙者が作成しましたが上手くできているとお墨付きをもらっています」
「へぇ、甚平ですか、ゆったりしてて着やすいですし、部屋着とかでも使えそうですね。ありがとうございます、大切にしますね」
「はい。マスターに喜んでもらえたのであれば、拙者も嬉しいです!」
俺がお礼を言うとニカッと眩しい笑顔を浮かべてくれるブロッサムさんからは、人の好さが伝わってくるというか、見た目は大和撫子なんだが性格は明るく優しい陽キャって感じである。
しかし、異世界文化に詳しい織物製作者か……さすがにいま根掘り葉掘り質問するのは失礼だし時間もかかるだろうから、また今度詳しく聞いてみよう。
シリアス先輩「そして桜のゴールデンレトリバーと……犬っぽいのが三人続いたな。という過去の織物製作者って、雅だろ」
???「ですね。以前までは異世界の記憶を失っていたので、ブロッサムさんにとっても特別異世界に詳しいわけではないが、異世界風の柄の織物を作る相手程度の認識だったのでしょうね」




